リンパ浮腫の予防とセルフケア
がん治療を受けた患者さんに対する、リンパ浮腫の予防とセルフケアに関してご紹介します。
リンパ浮腫の予防とセルフケア
リンパ浮腫は、一度発症すると完治は困難ですが、適切なリスク管理や予防をすることで発症を抑制することができます。
リンパ浮腫のセルフケアで最も重要なのは感染症予防と体重管理です。細菌の感染により炎症が起こると、リンパ浮腫を発症する可能性が高くなります。そのため、皮膚を清潔に保つ、保湿をする、日焼けをしないなどのスキンケアをすることが大切です。また、外傷、火傷、虫刺されなどによる皮膚障害にも注意が必要です。
太りすぎにより皮下脂肪が増えるとリンパ管を圧迫するため、リンパ浮腫を発症する可能性が高くなります。そのため、適度な運動を行い、適正な体重を維持することが大切です。
その他、日常生活で注意したいポイントは、以下の通りです。
疲労やストレス
長時間の立ち仕事や同じ姿勢をとること、重い荷物を持つこと、過度の運動などは、リンパ浮腫を発症するリスクが高くなります。こまめに休憩をとったり、重い荷物を持つときは介助を頼んだりするなど、頑張りすぎないようにすることが大切です。
リンパの流れを妨げるような服装
締め付けが強すぎる衣類やアクセサリーなどは、リンパの流れを妨げるため、リンパ浮腫を発症するリスクが高くなります。なるべく体を締め付けないような服装を心がけることが大切です。
むくみは、リンパ節を切除した部位に近い場所で起こります。乳がん治療で腋窩リンパ節郭清を行った場合は切除した側の腕、卵巣がんなどで骨盤内のリンパ節を切除した場合は下肢で起こる可能性があります。
そのため、重症化する前に早期発見し適切な対応をするために、セルフチェックとして、むくみが起きやすい部位の手足の太さを測っておくことが大切です。
リンパ浮腫の予防的治療
2024年7月現在、上肢に対する弾性着衣による治療は、治療目的のみ保険適用で、予防目的では保険適用外となっています。
リンパ浮腫の発症予防を目的とした上肢に対する弾性着衣の有効性を示す論文が、複数報告され、上肢リンパ浮腫に対する弾性着衣のエビデンスは蓄積されつつありますが、まだ十分ではないとされています。そのため、治療を行うかどうかは有効性と安全性を十分に考慮することが重要とされています。また、下肢に対する弾性着衣による予防は、十分なエビデンスがないため、推奨されていません。
リンパ浮腫の発症予防を目的とした用手的リンパドレナージ(専門家が行う)やシンプルリンパドレナージ(患者さんご自身や介護者が行う)の効果は、エビデンスがないため推奨されていません。
乳がん治療に伴う上肢リンパ浮腫の発症リスクが高い患者さんに対する運動療法は、発症予防として推奨されています。また、婦人科がんの治療に伴う下肢リンパ浮腫に対する発症予防では、圧迫療法と運動療法を併用して行うことを条件に考慮してもいいとされています。
参考文献:日本リンパ浮腫学会編.リンパ浮腫診療ガイドライン2024年版.金原出版