がん光免疫療法

がん光免疫療法とはどんな治療法なのか、開発状況を紹介します。

がん光免疫療法とは

 がん光免疫療法は、がん細胞と結合する抗体に光感受性物質を付加した薬剤を注射し、病変に非熱性赤色光を照射して光感受性物質を反応させることで、がん細胞を破壊する治療法です。

 現在、日本で承認されているがん光免疫療法で使用されるセツキシマブ サロタロカンナトリウム(製品名:アキャルックス)は、がん細胞に発現しているEGFRと結合する抗体セツキシマブに光感受性物質IR700DXを付加した薬剤です。セツキシマブ サロタロカンナトリウムを点滴で静注したのち、病変に非熱性赤色光を照射するとIR700DXが化学反応を起こし、急激に変化することでがん細胞を破壊します。

光感受性物質を、がん細胞と選択的に結合する抗体に付加する

光感受性物質を、がん細胞と選択的に結合する抗体に付加する

光感受性物質が付加された抗体を点滴で静脈に注射する

光感受性物質が付加された抗体を点滴で静脈に注射する

光感受性物質が付加された抗体が、がん細胞に結合する

光感受性物質が付加された抗体が、がん細胞に結合する

がん細胞に非熱性赤色光を照射する

がん細胞に非熱性赤色光を照射する

光感受性物質が非熱性赤色光と化学反応を起こしエネルギーを吸収し、急激に変化することでがん細胞を破壊する

光感受性物質が非熱性赤色光と化学反応を起こしエネルギーを吸収し、急激に変化することでがん細胞を破壊する

がん光免疫療法の開発状況

 現在、国内で承認されているがん光免疫療法で使用される薬剤は、セツキシマブ サロタロカンナトリウム(製品名:アキャルックス)だけです。同剤とともに使用される非熱性赤色光を光ファイバーで照射する70632000PDT半導体レーザ(製品名:BioBladeレーザシステム)も医療機器として承認されました。

 光感受性物質は、非熱性赤色光に反応するように設計されており、薬剤と結合していない細胞や非熱性赤色光が当たらない細胞は破壊されません。手術ではがん細胞を取り巻いて攻撃していた免疫細胞も切除した組織とともに除かれます。また、放射線治療はがん細胞に集まった免疫細胞にも影響します。がん光免疫療法は、がん細胞に集まってきている免疫細胞への影響が少ないと考えられています。さらに、破壊されたがん細胞の破片が免疫細胞に対する抗原となり、免疫細胞が残ったがん細胞を追撃する効果が期待されると考えられています。

 しかし、がん光免疫療法により、がん細胞を攻撃する免疫細胞が体内で作られても、免疫チェックポイント分子による免疫抑制が起こっていると、攻撃が効果的に働かなくなる可能性もあります。そのため、がん光免疫療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が検討されていますが、まだ効果や安全性は確認されていません。

がん光免疫療法の承認状況

一般名(製品名)適応
セツキシマブ サロタロカンナトリウム
(アキャルックス)
切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん
70632000PDT半導体レーザ
(BioBladeレーザシステム)
切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん

参考文献:日本臨床腫瘍学会編. がん免疫療法ガイドライン 第3版.金原出版