分子標的治療薬に対するがんの新しい薬剤耐性メカニズムを発見

2018/02/21

文:がん+編集部

バンデタニブの治療を受けたRET融合遺伝子陽性の肺がん患者さんのがん試料の機能ゲノム解析より

GGN病変
画像はリリースより

 国立がん研究センターは2月14日、分子標的治療薬バンデタニブ(製品名:カプレルサ)の治療を受けた、RET融合遺伝子陽性の肺がん患者さんのがん試料の機能ゲノム解析から、新しい薬剤耐性メカニズムを発見したと発表しました。

 日本では、現在、年間に約11万人が肺がんを発症し、約7万人が肺がんで亡くなっています。肺がんの8割以上を占める非小細胞肺がんでは、約2/3の患者さんが手術不能の進行がんとして発見され、遺伝子異常にもとづく分子標的治療が有力な治療手段のひとつとされています。しかし、がん細胞の分子標的治療薬への耐性の獲得が、治療を困難にしています。

 薬剤耐性は、EGFR遺伝子変異陽性の肺がんでのT790Mなどの二次変異、薬剤や酵素の基質であるアデノシン3リン酸の結合部位に生じる変異が主な原因として知られています。今回の研究では、バンデタニブ治療の耐性となる前と後の患者さんのDNAについて、次世代シークエンサーを用いた遺伝子パネル検査を行いました。その結果、RET融合タンパク質の薬剤の結合部位から離れた位置に耐性化をもたらす二次変異を発見。薬剤耐性は、遺伝子変異を引き金としたタンパク質構造を協調的に変化させる効果によって引き起こされ、酵素活性の上昇と薬剤結合の低下をもたらすとしています。

 がんのゲノム医療やゲノム研究が進むことで、がん細胞には多くの遺伝子変異が生じていることが明らかになっています。しかし、それらの多くは、がん化や治療に関する意義がわからない変異です。「今回の研究に用いた手法は、意義がわからない変異を解明し、治療の方針決定の手助けになると期待されます」と研究グループは述べています。

 この研究は、京都大学、東京大学、理化学研究所、英国クリック研究所と共同で行われ、研究結果は米国学術雑誌「Nature Communications」で発表されました。

※試料:血液や組織などの検体とそれに付随する診療情報など