転移性非小細胞肺がん・ALK陽性全身性未分化大細胞型リンパ腫 米FDAが画期的治療薬を指定
2018/06/25
文:がん+編集部
米国のFDAが、白金製剤を含む化学療法以降に病勢進行が認められた、METエクソン14変異がある転移性非小細胞肺がんと、再発または難治性のALK陽性全身性未分化大細胞型リンパ腫を適応症としてザーコリを画期的治療薬に指定しました。薬剤の開発と審査の迅速化が期待されます。
薬剤の開発と審査が迅速化される制度
米ファイザー社は5月29日、クリゾチニブ(製品名:ザーコリ)について、2つの新たな適応症に対し、米国食品医薬品局(FDA)がブレークスルー・セラピー(画期的治療薬)に指定したことを発表しました。1つは、白金製剤を含む化学療法以降に病勢進行が認められた、METエクソン14変異がある転移性非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬として、もう1つは、再発または難治性のALK陽性全身性未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)治療薬としての指定です。
METエクソン14変異は、NSCLC患者さんの約3%に発現すると言われています。一方でALCLは、悪性リンパ腫の中でも非ホジキンリンパ腫に分類される希少なタイプです。ALK陽性とALK陰性の腫瘍に分けられます。がんの増殖スピードが速く、治療を受けても多くの患者さんが再発してしまう特徴があり、別の治療アプローチが必要になります。ALK陽性ALCLは通常、小児または若年成人に発症します。
METエクソン14変異が転移性NSCLCに対する指定は、第1相臨床試験PROFILE 1001試験の観察的拡大研究の結果に基づくものです。試験の結果、クリゾチニブの抗腫瘍効果が示されたそうです。一方で、再発または難治性の全身性ALK陽性ALCLに対する指定は、第1/2相試験ADVL0912試験と第1相臨床試験A8081013試験の結果に基づくものです。A8081013試験では、ALK陽性のNSCLC以外の進行悪性腫瘍(再発または難治性ALCLを含む)がある小児・成人患者さんに対してクリゾチニブの評価が行われました。どちらの試験においても、クリゾチニブの抗腫瘍効果が認められたとしています。
FDAのブレークスルー・セラピー指定は、重篤または生命を脅かす疾患や症状に対する治療を目的とした薬剤に対して、暫定的な臨床エビデンスから判断し、既存薬よりも大幅な改善が見込める場合に認定されるものです。認定された場合、その薬剤の開発と審査が迅速化されます。
クリゾチニブは日本において、「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」と「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の効能・効果で承認されています。白金製剤を含む化学療法以降に病勢進行が認められた、METエクソン14変異がある転移性NSCLCと、再発または難治性のALK陽性全身性ALCLの適応は、現在、日本を含めた全ての国・地域で承認されていません。