間質性肺炎を合併した肺がん、遺伝子変異の特徴を解明

2018/08/30

文:がん+編集部

 間質性肺炎を合併した肺がんの遺伝子変異の特徴が明らかになりました。予後が悪いとされるこのタイプの肺がんの新たな治療法開発へつながることが期待されます。

間質性肺炎合併肺腺がんの多くで、サーファクタントシステム遺伝子群に変異

 国立がん研究センターは8月21日、間質性肺炎を合併した肺腺がん(間質性肺炎合併肺腺がん)の遺伝子変異の特徴を明らかにし、この遺伝子変異がある人は予後が悪いことをつきとめたと発表しました。この研究は、東京医科歯科大学関西医科大学慶應義塾大学医学部らと共同で行われました。

 間質性肺炎は、肺胞構造の破壊や、肺胞の壁が厚く硬くなる線維化によって、酸素を取り込みにくくなる病気です。肺がんのリスクを高める重要な因子として知られています。一般的な肺がんでは、がんの原因となるドライバー遺伝子として、EGFR遺伝子変異ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子BRAF遺伝子変異などが知られており、ドライバー遺伝子に対する分子標的薬が開発されています。しかし、間質性肺炎合併肺がんの特徴的ながん遺伝子異常や発がん機構についてはよくわかっていませんでした。

 そこで研究グループは、ゲノム網羅的な遺伝子変異の検出を行い、間質性肺炎合併肺腺がんに特徴的な遺伝子変異の解析を試みました。その結果、ドライバー遺伝子の分布は間質性肺炎の有無によって大きく異なることがわかったそうです。一般的な肺腺がんでは、約70%にEGFRなどのドライバー遺伝子異常がみられましたが、間質性肺炎合併肺腺がんでは約25%にしかドライバー遺伝子異常がみられず、これまでの研究では解明されていない発がん経路をたどっていることが明らかになりました。

間質性肺炎合併肺がん

画像はリリースより

 さらに解析を進めると、間質性肺炎合併肺腺がんでは、肺の働きを担う「サーファクタントシステム遺伝子群」の機能を失わせるような変異が高頻度に見られることがわかったそうです。また、サーファクタントシステム遺伝子群に異常がある人は、予後が悪いことも明らかになりました。

 間質性肺炎合併肺腺がんは予後が悪く、治療や予後予測を可能とするバイオマーカーの解明が望まれています。今回の研究結果より、間質性肺炎合併肺腺がんの病態解明と新規治療法開発への応用が期待されます。