iPS細胞由来の他家CAR-T細胞治療薬の開発提携

文:がん+編集部

 小野薬品工業株式会社と米Fate Therapeutics社は、がんを対象とした人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の他家CAR-T細胞治療薬の開発を目的に提携することを発表しました。血液がんと固形がんを対象に開発が進められます。

血液がんと固形がんを対象に

 小野薬品工業株式会社は9月18日、米Fate Therapeutics社と、がんを対象とした人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の他家CAR-T細胞治療薬の開発を目的とする創薬提携契約を締結したと発表しました。

 iPS細胞は、患者さんの体細胞からつくられる、さまざまな組織や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性の幹細胞です。再生医療や新しい薬の開発に役立つことが期待され研究されています。

 CAR-T療法は、患者さん自身の血液から採取したT細胞を、がん細胞を攻撃するように遺伝子を導入したあと、患者さんに戻す免疫細胞療法です。米国で承認され、日本でも承認申請中のCTL019(製品名:キムリア)は、患者さん自身のT細胞を使用する自家CAR-T療法薬です。

 今回、創製するCAR-T療法薬は、患者さん自身のT細胞を使わない他家CAR-T療法薬です。自家移植では、「高額」「培養に時間がかかる」などの課題がありますが、他家移植は、こうした課題をクリアできる可能性があり期待されます。

 Fate社は研究資金の提供を受け、小野薬品が選択した2つの創薬標的に対するiPS 細胞由来他家CAR-T 細胞治療薬を創製します。対象は、血液がんと固形がんとしています。

 Fate社は、がんと免疫疾患における細胞療法の開発を行うバイオベンチャー企業です。現在、ドナー由来のNK(ナチュラルキラー)細胞※1のがん免疫療法(FATE-NK100)で3つの第1相臨床試験を実施しています。また、急性移植片対宿主病※2を対象に第2相臨床試験を実施中の次世代型ドナー細胞移植ProTmuneなども開発中です。

※1 がん細胞などを単独で攻撃する免疫細胞の1種です。「生まれながら(ナチュラル)の殺し屋(キラー)」という意味があります。
※2 臓器移植に伴う合併症のことを移植片対宿主病といいます。いわゆる拒絶反応は、移植された臓器を拒絶しますが、移植片対宿主病はその逆で、移植された臓器の免疫反応で、患者自身を攻撃するときに起こる症状です。急性移植片対宿主病は、移植後早期に起こり、発熱、下痢などを発症します。