トリプルネガティブ乳がん、「テセントリク」併用療法の治験の中間解析を発表
2018/10/25
文:がん+編集部
進行・転移性のトリプルネガティブ乳がんを対象とした、免疫チェックポイント阻害薬のアテゾリズマブ(製品名:テセントリク)とパクリタキセルの併用療法を検討した治験の結果が発表されました。 PD-L1発現が認められる患者さんで病勢進行と死亡リスクが低下したそうです。
ITT解析集団とPD-L1陽性集団で病勢進行と死亡リスクが低下
中外製薬株式会社は10月22日、第3相臨床試験IMpassion130試験の成績を発表しました。この発表は、同社と戦略的アライアンスを締結しているスイスのエフ・ ホフマン・ラ・ロシュ社が10月20日に発表したプレスリリースに基づくものです。
IMpassion130試験は、未治療の進行・転移性のトリプルネガティブ乳がんを対象に、アテゾリズマブとパクリタキセルの併用療法とパクリタキセル単独療法を比較した治験です。当中間解析の結果、当初の割付通りのグループ(ITT解析集団※1)とPD-L1発現が認められる患者さんのサブグループともに、病勢進行と死亡リスクが低下したそうです。ITT解析集団では、全生存期間※2の延長について、統計学的な有意差は認められなかった一方で、PD-L1の発現が認められる患者さんでは、臨床的に意義のある全生存期間の延長を示しました。安全性に関しては、これまでの各薬剤で認められているものと一致しており、新たな安全性のシグナルはなかったそうです。
アテゾリズマブは、抗PD-L1抗体薬という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。2018年1月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能・効果として承認を取得し、同年3月には一次治療の非小細胞肺癌に対する一変申請が行われています。今後トリプルネガティブ乳がんの新たな治療選択となることが期待されます。
IMpassion130試験
対象:切除不能な局所進行または転移性トリプルネガティブ乳がん
条件:全身薬物治療を受けていない患者
登録数:902人(1対1で割付)
被験薬:アテゾリズマブ
対照薬:パクリタキセル
実験群:アテゾリズマブ+パクリタキセル併用療法
対照群:プラセボ+パクリタキセル併用療法
主要評価項目:無増悪生存期間※3、全生存期間
副次的評価項目:奏効率※4、奏功期間、患者さんの全体的な健康状態/Health-Related QoLの悪化までの期間
中間解析成績
無増悪生存期間(併用療法vs単独療法)
ITT解析集団:7.2か月vs5.5か月(中央値)
PD-L1陽性集団:7.5か月 vs5.0か月(中央値)
※1:ITT解析とはIntention-to-treat analysis(「治療の意図」による分析、治療企図解析)の略です。治験などで当初割付けられたままで解析された集団のことです。
※2:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。
※3:奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※4:完全奏効(CR)(腫瘍が完全に消失)と、部分奏効(PR)(腫瘍が30%以上小さくなる)を足して、治療患者の総数で割ったものです。