第4回日本がんサポーティブケア学会 ポスターセッションより「味覚障害」

抗がん薬治療による「味覚障害」――実態の解明や対策についての研究が進む

2019.10 取材・文●「がんサポート」編集部

 がん薬物療法に伴う副作用の1つに「味覚障害」がある。治療を受けている患者の半数以上にみられ、QOL(生活の質)を低下させる一因となる。多くは抗がん薬投与の終了とともに軽減するが、なかには長期にわたって症状が続くケースもある。味覚障害のメカニズム(発症機序)は不明で、治療法もまだ確立していないが、実態の解明や対処法についての検討は着実に進んでいる。ここでは、第4回日本がんサポーティブケア学会での発表のうち、味覚障害に関する研究のいくつかを紹介する。

がん薬物療法開始後約50%の患者で味覚に変化

 味覚障害は、がん薬物療法を受けている患者に高頻度に認められるが、薬物療法開始後の経過には不明な点が多い。虎の門病院臨床腫瘍科の研究チームは、その実態を探るため、がん薬物療法を受けている患者を対象に、治療開始前後にアンケート調査し、味覚やQOLの変化、食事内容、栄養療法への期待などを調べた。

 調査の対象は、同科でがん薬物療法を実施した患者(2018年6月~2019年5月)。治療開始前のアンケートでは、味覚の自己評価、QOL、食事や栄養療法への期待、治療開始3、6か月後には、味覚の変化、QOL、治療内容の理解、食事内容について、選択および記述式で回答してもらい、集計した。

 最終的に回答を得たのは20例(男16例、女4例、平均66歳)で、がんの原発臓器は、消化管(9例)、膵(5例)、前立腺(2例)、乳房(1例)、尿路(1例)、他(2例)。化学療法のレジメンは、重複を含めてタキサン系11例、プラチナ系8例、フッ化ピリミジン系5例という内訳だった。また、20例中9例ががんによる症状を有していた。

 集計の結果、治療開始前、「栄養療法に興味がある」と答えたのは20例中18例(90%)に上った。具体的には「がんの進行が遅くなる食事」、「副作用を軽くする食事」がともに16例と最も高い関心を示した。次いで「がん以外の持病を悪化させない食事」(10例)、「幸せに感じる食事」(8例)、「効率よくカロリーや栄養成分が摂取できる食事」(8例)、「味覚変化を克服する食事」(8例)が多かった。

 3、6か月後のアンケートではそれぞれ9例、6例から回答が得られた。開始前と比較すると、QOLは中央値80(範囲50~100)から治療後70(範囲40~95)へと低下した。味覚に関しては、甘味、塩味、酸味、苦みについて自己評価してもらったところ、治療開始3か月後、約50%の患者で低下を認めた。味覚別にみると、甘味が低下したのが4例、塩味が5例、酸味が6例、苦味が3例だった。一方、味覚が強まったと感じた患者も6例いた。

 また、美味しいと感じる食事が減ったのは3例(33%)、回避している食事があるのは8例(89%)で、避けているものとしては、「塩辛いもの」(3例)、「熱いもの」(3例)、「辛いもの」、「甘いもの」(それぞれ2例)だった。

 今回のアンケートから、がん薬物療法を受けている患者では、約50%に味覚の変化が起こっていることが裏づけられた。また、栄養療法への関心が非常に高く、多くのケースで薬物療法開始3か月後には食事内容を工夫していることもわかった。同グループでは「味覚障害・栄養に関する実情の把握をさらに進め、患者のサポートにつなげていきたい」としている。

(発表演題PS14-19:「がん薬物療法における味覚障害と栄養の実態調査」、虎の門病院臨床腫瘍科)

術後化学療法に伴う味覚障害――5-FUの投与量と相関

 味覚障害の実態調査については、青森県立中央病院緩和ケアセンター、外科、栄養管理部、消化器内科、外来治療センターの共同研究グループも報告。術後化学療法を受けた消化器がん患者の調査から、①化学療法開始後、2人に1人が味覚障害を呈していた、②5-FU(フルオロウラシル)の投与量と味覚障害の間に強い相関を認めた――ことなどを明らかにした。

 対象は、2019年1月8日~1月23日に同院外科外来を受診し、術後化学療法を受けている消化器がん患者33例。外来受診時(1回)に、味覚変化をCiTAS(Chemotherpy-induced Taste Alteration Scale)というアセスメント(評価)ツールでチェックした。

 ちなみにCiTASは、化学療法に特徴的な味覚変化の症状を評価する目的で開発されたもの。「基本味の低下」、「不快な症状」、「自発性異常味覚・錯味」、「全般的味覚変化」の4下位尺度(全18項目)で構成され、1~5点の5件法で点数化する。点数が高いほど、味覚障害の程度が進んでいることになる。また、対象のうち大腸がん患者については、CiTASで評価された味覚変化と抗がん薬の投与量(1次治療から2次治療の現在に至る総量)との相関を調べた。

 その結果、33例すべてから調査票を回収し、有効回答は31例(93.9%)だった。内訳は、男性20例、女性11例、平均64.4歳。がん種別では、大腸がんが22例と全体の70.9%を占め、次いで胃がん7例、その他2例だった。

 31例の中で味覚障害を認めたのは14例で有症率は45.2%。サンプル数がもっとも多い大腸がんについてみると、有症率は54.5%(22例中12例)で、約2人に1人が味覚障害を訴えていた。

 一方、大腸がん22例中15例について、CiTASによる味覚変化と、治療に用いられた5-FU、オキサリプラチン(L-OHP)、イリノテカン(CPT-11)の関係を調べたところ、5-FUの投与量と「不快な症状」との間に有意な相関を認めた。オキサリプラチン、イリノテカンでは相関はみられなかった。

 以上の検討から、抗がん薬治療を受けている患者では約半数に味覚障害が発現すること、そして5-FUの投与量が多いほど「(苦味を感じる)不快な症状」などの味覚障害が起こりやすいことが明らかになった。同グループでは「5-FUは大腸がんの治療において長期投与する中心的な薬剤であり、広く使用されている。しかし一方で、食事は患者のQOLを維持するために重要であり、5-FUによる味覚障害が生じたときには、専門スタッフの早期介入が重要である」と強調した。

(発表演題PS14-20:「術後化学療法を受ける消化器癌患者の味覚障害に関する実態調査」、青森県立中央病院緩和ケアセンター、外科、栄養管理部、消化器内科、外来治療センターの共同研究)