【第6回目】標準治療と最先端の治療、どっちがおすすめ?

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 標準治療という言葉について、正しい意味をご存知でしょうか。標準治療とは、大規模な臨床試験によって、治療効果や安全性が確認され、医学的に最も推奨される治療のことです。基本的に、健康保険が適用されます。例えば、若くて体力がある患者さんががんにかかった際には、標準治療が主治医の先生から提示されます。

 「標準」という言葉だけを見ると、「並の治療」や、「上中下」の「中」の治療、「平均的な治療」といった意味にも聞こえてしまいますよね。そのため、標準治療よりも、もっと良い治療があるのではないかと考えてしまう患者さんもいます。例えば、ある芸能人が「標準治療ではなく、最先端の治療や民間療法を受けた」と報道されているのを見ると、お金をかければ、もっと良い治療ができるのではないか?と勘違いしてしまう人も少なくないでしょう。しかし、それは間違いなのです。

 標準治療は、科学的根拠に基づいた最も推奨される治療法です。「上中下」でいえば「上」の治療です。一方で、最先端の治療は、開発中の試験的な治療のことを指します。そのため、治療効果や副作用はまだ証明されていないということになります。もちろん、その最先端の治療が臨床試験で評価され、それまでの標準治療より優れていることが証明されると、その治療が新たな「標準治療」となります。しかし、現在、標準治療でないということは、その効果や安全性はまだわからないという段階なのです。そして、いわゆる標準治療への挑戦者となる治療法は、臨床試験によって9割方敗れて標準治療にはなれないという現実もあります。

 こうした最先端の治療は、がんセンターなどで無償の臨床試験として、条件に合う患者さんを募ります。逆に、巷に出回っている「最先端もどき・・・」 の治療は高額であることがほとんどです。「がんが治る」などと言って、高額かつ効果も疑わしいような治療を行っているクリニックもあります。むしろ保険が適応されないような高額な治療は、むやみに飛びつかず一旦立ち止まって考える必要があることを忘れないで欲しいです。つまり、「お金が高い=良い治療」というわけではありません。

 ではどのように治療法を選んだらよいのでしょうか。たとえばがんの治療であれば、手術、抗がん剤、放射線があります。どんな治療が勧められるかは、その患者さんのがんの進行度や大きさ、悪性度、患者さんの全身状態や年齢に患者さんの希望をあわせて決められます。がんの種類も大きさも同じという場合でも、年齢や体質、臓器の状態などによって、その治療法を変えることもあります。例えば高齢者の患者さんの場合、手術を行うのが標準治療であっても、「手術に対応できる体力がない」と判断されれば、手術をできない患者さんに対する標準治療として、手術以外の方法を勧めることもあります。標準治療は、科学的に証明されている最も推奨される治療法ではありますが、全員にとって絶対に推奨されるというわけではないのです。また標準治療に準ずる治療法として、さほど治療成績が変わらないですがむしろ体に優しい治療法があることもあります。それぞれの治療には、長所も短所もあります。どの治療法が適しているかは、患者さんの体力や病状によって変わりますし、価値観によっても変わります。

 最後に、治療について悩み、主治医の先生に相談したいと思ったときのおすすめの聞き方をご紹介します。それは、「先生が同じ状況だったらどうしますか?」、「先生の親が同じ状況だったらどうしますか?」と聞いてみることです。自分自身や自分の大事な人であっても同じ治療を勧めるのならば、その方法を信用してもいいという判断ができるからです。また、主治医の先生以外にも、かかりつけの先生がいる場合は、その先生に相談してみるのもいいと思います。その際に、同じ質問を投げかけてみても良いでしょう。

大船中央病院放射線治療センター長 武田篤也(たけだあつや)先生

武田篤也先生

1994年 慶應義塾大学 医学部卒業
1994~2004年 慶應義塾大学、防衛医科大学、都立広尾病院勤務
2005年 大船中央病院放射線治療センターを開設、現在センター長
慶應義塾大学客員講師、東海大学客員教授、東京医科歯科大学非常勤講師を兼務。肺がん、肝臓がんの体幹部定位放射線治療患者2000例を治療。 70以上の英文論文、2016年に専門書「The SBRT book」、2018年に「世界一やさしいがん治療」を刊行。

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