「自分にとってベストな治療法は何か?」という問いを整理する一助に
患者支援団体の立場から、早期肺がんと診断された患者さんへ向けて
今日、医療は「科学的根拠に基づいた医療(EBM:Evidence-based Medicine)」という理念が重視されています。EBMは、医師の知識や経験だけでなく、最新の臨床研究によって有効性が示されているといった科学的根拠や、患者さんの価値観をもとに治療方針を選択するという考え方です。EBMの考え方に基づき、臨床試験によって治療効果や安全性が示された標準治療は、より多くの患者さんに推奨される治療法です。しかし、EBMの考えが、全ての患者さんに当てはまるわけではありません。
そこで出てきたのが、「物語と対話に基づいた医療(NBM:Narrative-based Medicine)」という考え方です。NBMでは、患者さんの病気の状態を見極めることに加え、対話を通じて、患者さんが病気になった理由や経緯、病気についての考え方などの背景(物語)を理解することで、患者さんの考え方や意向を理解することを大切にします。このような対話を経て治療方針を決めることが望ましい、という考えのもと提唱されました。
現在、早期肺がんの標準治療では手術が一般的です。そのため、時に「手術できてよかったですね」、「手術できなくて残念でしたね」と影で囁かれることもあります。この本は、早期肺がん患者さんの中でも手術が難しい高齢者の患者さんや、持病などがあり体力がない患者さんに対して、ピンポイントの放射線治療である体幹部定位放射線治療という選択肢があるということ、また、その効果について、手術と比較しながらわかりやすく解説しています。
特筆すべきは、自らが放射線治療医である著者が、患者さんを体幹部定位放射線治療へと誘導するものではないとして、「どう解釈したらいいかわからない点など、主治医に質問してもいいでしょう」と断り書きをしている、その真摯な姿勢です。
早期肺がんと診断されたとき、高齢であったり、持病を持っていたりすることで体力に自信がなく、手術に対して不安な気持ちを抱くことがあるかもしれません。そんなとき、この本は「自分にとってベストな治療法は何か?」という問いを整理する一助となるでしょう。患者支援団体の立場として、この本は、早期肺がんと診断された患者さんに、またそのご家族に手に取ってもらいたい一冊です。
がん+編集部より
早期肺がん患者さんへ 手術と放射線治療を分かりやすく解説
この本は、「早期肺がん」と診断された患者さんが、自分の意思で自身の治療法を選択する際の手助けをしてくれる本です。現在、早期肺がんの標準治療では、手術が一般的です。しかし、高齢であったり持病があったりすることで体力に自信のない患者さんにとっては、必ずしも手術という手段が望ましいとは言えません。
そこでこの本では、早期肺がんの治療において、手術の他にピンポイントの放射線治療である体幹部定位放射線治療という選択肢があるということや、この2つの選択肢を比較しながら早期肺がん治療について分かりやすく解説しています。