子宮体がんの基礎知識
子宮体がんとはどんな病気なのか、症状、罹患率、生存率など基礎知識を紹介します。
子宮体がんとは
子宮は、袋状の「子宮体部」と子宮体部の下につながる管状の「子宮頸部」にわけられます。子宮体がんは、子宮体部から発生したがんで、子宮の内側を覆っている粘膜から発生した「子宮内膜がん」と筋肉組織が悪性化した「子宮肉腫」があります。一般的に子宮体がんと言う場合は、子宮内膜がんを指し、子宮肉腫は別の悪性腫瘍として扱われます。その理由は、子宮体がんのほとんどが子宮内膜がんで、子宮肉腫の発生頻度は低いからです。子宮にできた肉腫のうち、良性のものを子宮筋腫、悪性のものを子宮肉腫といいます。
子宮体がんの症状
子宮体がんで最も多くみられる症状は出血です。出血により、おりものに血が混ざったり、褐色になったりします。月経時以外や閉経後にこうした出血があった場合は、子宮体がんの可能性があるため検査を受けましょう。特に、閉経後の出血は子宮体がんが強く疑われる症状の1つです。妊娠や出産の経験のない女性、肥満、高血圧、糖尿病は、子宮体がんのリスク因子です。また、排尿痛や排尿障害、性交時の痛み、下腹部の痛みなどが起こることがあります。腫瘍が進行して大きくなるとおなかが圧迫され、腹部膨満感が起こることもあります。
子宮体がんの罹患率と生存率
国立がん研究センターのがん統計2018年によると、新たに子宮体がんと診断される人は1万7,089人でした。30代後半から徐々に増え始め、50代をピークにその後は減少していく傾向がありました。
2009年~2011年にがんと診断された人の5年相対生存率は、64.1%です。子宮体がんの5年相対生存率は81.3%で、全てのがんを含めた割合より高くなっています。2002年~2006年に子宮体がんと診断された人の10年相対生存率は、75.6%でした。
進行度による5年相対生存率(2002~2006年診断)は、以下の通りです。
- 限局:97.4%
- 領域:92.1%
- 遠隔:78.1%
進行度による10年相対生存率(2002~2006年診断)は、以下の通りです。
- 限局:91.5%
- 領域:55.1%
- 遠隔:17.4%
限局:原発臓器に限局している
領域:所属リンパ節転移(原発臓器の所属リンパ節への転移を伴うが、隣接臓器への浸潤なし)または隣接臓器浸潤(隣接する臓器に直接浸潤しているが、遠隔転移なし)がある
遠隔:遠隔臓器、遠隔リンパ節などに転移・浸潤がある
子宮体がんの種類
子宮体がんでは、女性ホルモンのエストロゲンが関わるタイプと関わらないタイプがあります。閉経前に発症するタイプはエストロゲンが関わっていることが多く、閉経後に発症するタイプの多くはエストロゲンの関わりはあまりありません。
子宮体がんは子宮の内側を覆っている内膜から発生しますが、がんの組織の状態により「類内膜がん」「漿液性がん」「明細胞がん」などがあります。このうち子宮体がんで最も多いのが類内膜がんで、漿液性がんと明細胞がんは悪性度が高いとされています。
参考文献:
日本婦人科学会編.子宮体がん治療ガイドライン2018年版.金原出版
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
全国がん罹患モニタリング集計 2009-2011年生存率報告(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター, 2020)
独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書