神経内分泌腫瘍の基礎知識

神経内分泌腫瘍とはどんな病気なのか、症状、罹患率など基礎知識を紹介します。

神経内分泌腫瘍とは

 神経内分泌腫瘍は、神経内分泌細胞から発生する腫瘍です。神経内分泌細胞は、ホルモンやペプチド(アミノ酸が2個以上つながったもの)を分泌する細胞で、膵臓や消化管、肺などのさまざまな臓器に存在します。神経内分泌腫瘍は、英語ではNeuroendocrine Neoplasmといい、略してNEN(ネン)といいます。

 NENのうち、消化器にできるものが約60%、肺や気管支にできるものが約30%とされており、消化器の中では、膵臓や直腸に多く発生します。

神経内分泌腫瘍の種類

 NENは、細胞の分化の程度により「NET(ネット):Neuroendocrine Tumor」と「NEC(ネック):Neuroendocrine Carcinoma」に分類されます。NETは、細胞の形が正常な細胞に近い高分化型で、NECは正常な細胞とは異なる未熟な形をした低分化型です。NETは、「Ki-67指数」「核分裂像数」の2つの因子により、「G1」「G2」「G3」の3つに分類されます。

神経内分泌腫瘍の悪性度

ホルモン症状による分類

 NETは、「機能性NET」と「非機能性NET」に分類されます。ホルモンの作用による機能性症状があるものを機能性NETといい、ホルモンによる症状がないものを非機能性NETといいます。

 機能性NETは、ホルモンの症状により「インスリノーマ」「ガストリノーマ」「グルカゴノーマ」「VIPオーマ」「スマトスタチノーマ」「カルチノイド」の6つに分類されます。

神経内分泌腫瘍(NEN)
NET(ネット):
Neuroendocrine Tumor
NEC(ネック):
Neuroendocrine Carcinoma
機能性NET非機能性NET

発生部位による分類

 また、NETは発生部位と発生学的な特徴により、「前腸」「中腸」「後腸」の3つに分類されます。前腸は、肺・気管支、胃・十二指腸、膵臓です。中腸は、小腸、虫垂、結腸(右半分)です。後腸は、結腸(左半分)と直腸です。

遺伝性疾患による分類

 膵・消化管NETでは、親から子へ遺伝する可能性がある「遺伝性疾患」が、全体の5~10%で認められます。

主なNETを合併する遺伝性疾患

※上記疾患の詳しい解説は、QLife遺伝性疾患プラスの記事もご参照ください。

神経内分泌腫瘍の症状

 機能性NETの症状は、腫瘍が発生した神経内分泌細胞が分泌するホルモンにより症状が異なります。

 インスリンが過剰分泌される「インスリノーマ」では、低血糖による「冷や汗」「動悸」「意識障害」などの症状が起こります。

 ガストリンが過剰分泌される「ガストリノーマ」では、胃液が過剰となることで「胃・十二指腸潰瘍」「慢性の下痢」「腹痛」「胸やけ」「体重減少」などの症状が起こります。

 ソマトスタチンが過剰に分泌される「ソマトスタチノーマ」では、ソマトスタチンが他のホルモンを抑制する働きがあるため、抑制されたホルモンによりさまざまな症状が起こります。

 グルカゴンが過剰分泌される「グルカゴノーマ」では、「発疹」「体重減少」「高血糖」などが起こり、血管作動性腸管ペプチド(VIP)が過剰分泌される「VIPオーマ」では、「下痢」「低カリウム血症」「胃酸分泌の低下」などが起こります。

 非機能性NETは、ホルモンの作用による症状はなく、腫瘍が大きくなることで起こる「腹痛」や「腹部膨満感」などの症状が起こることがあります。

機能性NETのタイプ別症状

タイプホルモン症状
インスリノーマインスリン冷や汗、動悸、意識障害など
ガストリノーマガストリン胃・十二指腸潰瘍、慢性下痢、腹痛、胸焼け、体重減少など
グルカゴノーマグルカゴン皮膚の発赤を伴った発疹、体重減少、高血糖など
VIPオーマVIP下痢、低カリウム血症、胃酸分泌の低下など
ソマトスタチノーマソマトスタチン腹痛、体重減少、高血糖、胆石症、脂肪便、下痢など
カルチノイドセロトニン
プロスタグランジン
ヒスタミン
ブラジキニンなど
皮膚の紅潮、下痢、むくみ、喘息、心不全など

出典:膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン2019年【第2版】.診断より作成

神経内分泌腫瘍の罹患率

 2016年の全国がん登録調査によると、膵・神経内分泌腫瘍の罹患数は1,336人(男性707人、女性629人)、消化管・神経内分泌腫瘍の罹患数は5,399人(男性3,427人、1,972人)でした。

 原発部位は、直腸が53%と最も多く、膵臓20%、胃13%、十二指腸5%、結腸3%、食道3%、虫垂2%、空腸・回腸1%でした。全部位で、女性より男性に多い傾向でした。

神経内分泌腫瘍の原発部位別罹患数

原発部位男性女性合計
膵臓7076291,336
食道20062262
7752671,042
十二指腸264178442
空腸・回腸653297
虫垂5550105
結腸157121278
直腸1,9111,2623,173
全部位4,1342,6016,735

出典:Masui T, Ito T, et al. BMC Cancer. 2020; 20: 1104より作成

参考文献:
日本神経内分泌腫瘍研究会 膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン第2版作成委員会編.膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン2019【第2版】.金原出版
Masui T, Ito T, et al. BMC Cancer. 2020; 20: 1104

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