オラパリブ、BRCA遺伝子変異陽性HER2陰性転移乳がんでの申請をEMAが受理
2018/04/10
文:がん+編集部
病勢進行または死亡のリスクを42%低減
英アストラゼネカ社と米メルク社は4月3日、オラパリブ(製品名:リムパーザ)について、術前補助療法、術後補助療法または転移がんに対する化学療法による前治療歴のある病的変異もしくは病的変異疑いのBRCA遺伝子変異陽性ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性転移乳がんでの薬事承認申請を欧州医薬品庁(EMA)が受理したと発表しました。
今回の申請は、オラパリブと化学療法(医師の選択によりカペシタビン、エリブリンまたはビノレルビンのいずれかを使用)を比較検討した無作為化、非盲検第3相OlympiAD試験結果を受けてのものです。
OlympiAD試験では、生殖細胞系BRCA遺伝子変異陽性HER2陰性乳がん(ホルモン受容体陽性またはトリプルネガティブ乳がん)患者さんを対象に、オラパリブが投与されました。その結果、オラパリブは、化学療法との比較で無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、病勢進行または死亡のリスクを42%低減したとしています(ハザード比:0.58;95%信頼区間0.43-0.80;P=0.0009,PFS7.0か月対4.2か月)。
DNAは2本の鎖が2重のらせん状態で構成されており、なんらかの原因でこの2つの鎖のうち1つが損傷してもPARPという酵素の働きで修復されます。PARPが機能しなくても、2重鎖を修復するBRCA1/2遺伝子が修復する2重構えになっています。そのため、BRCA1/2の遺伝子に異常がある人は、遺伝子異常のない人に比べてがんの発症リスクが高くなります。
オラパリブは、PARPを選択的に阻害する薬です。BRCA1/2が働かないがん化した細胞に対してPARPの働きも阻害することで、2重構えの修復機能が働かず、がん化した細胞の細胞死を誘導します。
転移乳がんは、乳がんの中で最も進行したステージであるステージIVであり、がん細胞が、リンパ節など乳房から離れた臓器に転移した状態です。治療選択肢は増加しましたが、転移乳がんと診断された患者さんを治癒する方法は現在なく、診断後の5年生存率は26.9%とされています。今回の申請は、こうした転移乳がん患者さんの新しい治療選択肢として期待されています。