孤立性形質細胞腫

孤立性形質細胞腫とは

 孤立性形質細胞腫は、多発性骨髄腫の類縁疾患の1つです。軟部組織で発生するタイプと骨に発生するタイプがあります。

 軟部組織の孤立性形質細胞腫は、鼻腔、副鼻腔、消化管、肺、甲状腺、眼窩、リンパ節などに発生し、原発巣の80%以上は、上部気道や上部消化管で、上部気道では副鼻腔に多く発生します。

 骨の孤立性形質細胞腫と診断された患者さんの5年生存率は70%、無病生存率は46%という報告があります。その内、5年で約半数の患者さんが多発性骨髄腫へ移行しており、移行した時期は診断から平均21か月でした。多発性骨髄腫へ進展するとその予後は、多発性骨髄腫の予後と同等に悪くなるとされています。

 米国で1992~2004年の間に孤立性形質細胞腫と診断された患者さん1,543人の予後を解析した報告では、5年生存割合は骨の孤立性形質細胞腫:76.8%(60歳未満)/53.3%(60歳以上)、骨髄以外に発生する髄外性形質細胞腫瘍:78.9%(60歳未満)/70.5%(60歳以上)で、いずれも60歳以上の患者さんで予後不良という傾向でした。

孤立性形質細胞腫の症状

 孤立性形質細胞腫の症状は、腫瘍の発生部位で異なります。軟部組織の孤立性形質細胞腫の経過は一般に緩慢で、多発性骨髄腫への進展はまれですが、骨の孤立性形質細胞腫は多発性骨髄腫に進展しやすいとされています。

孤立性形質細胞腫の診断

 以下4つの項目を全て満たす場合は、骨や軟部組織の孤立性形質細胞腫と診断されます。

  • 生検でクローナルな形質細胞(1つの細胞に由来する形質細胞)からなる骨あるいは軟部組織の形質細胞腫が存在
  • 骨髄中にクローナルな形質細胞を認めない
  • 孤立性形質細胞腫病変以外には骨X線、椎体および骨盤MRI(またはCT)で異常を認めない
  • 臓器障害(高カルシウム血症、腎不全、貧血、骨病変)を認めない

 また、以下3つの項目を全て満たす場合は、骨または軟部組織の微小骨髄浸潤を有する孤立性形質細胞腫と診断されます。

  • 生検でクローナルな形質細胞からなる骨あるいは軟部組織の形質細胞腫の存在を認める
  • 骨髄中のクローナルな形質細胞<10%
  • 孤立性形質細胞腫病変以外には骨X線、椎体および骨盤MRI(またはCT)で異常を認めない

孤立性形質細胞腫の治療

 孤立性形質細胞腫に対する局所療法では、主に放射線療法と外科的切除が行われます。病変の部位や治療効果により化学療法も検討されます。孤立性形質細胞腫は、放射線感受性が高い腫瘍と考えられていますが,放射線療法の至適照射量などの十分な検討例が少ないため、標準治療は確立されていません。

 髄外性形質細胞腫瘍に対する治療は、腫瘍とその周辺のリンパ節に対する放射線治療が行われます。手術を行った場合は、術後に放射線治療が行われます。初回治療後は、経過観察となりますが、腫瘍の増殖や症状が現れた場合は、放射線治療、手術、化学療法が患者さんの病態に応じて選択されます。

 骨や軟部組織の孤立性形質細胞腫に対しては、40〜50Gy(20〜25回に分割)の局所放射線照射を行った後に無治療経過観察となります。

 多発性骨髄腫に移行した場合は、全身化学療法が考慮されますが、アジュバント療法(補助療法)としての化学療法は推奨されていません。多発性孤立性形質細胞腫に対しては、多発性骨髄腫と同様の治療方針が選択されます。

参考文献:一般社団法人日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版.金原出版

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