ALアミロイドーシス
ALアミロイドーシスとは
AL(全身性免疫グロブリン軽鎖)アミロイドーシスは、多発性骨髄腫の類縁疾患の1つで、異常な形質細胞から産生されるMタンパク質の軽鎖※に由来するアミロイドタンパク質が全身の臓器に沈着することで、臓器障害を起こす疾患です。また、重鎖に由来するものをAHアミロイドーシスといい、この2つを併せて免疫グロブリン性アミロイドーシスといいます。病変の広がりにより、全身性と限局性に大別されます。
2014年に実施された全国疫学調査では、2012年~2014年のALアミロイドーシス推定患者数は、3,200人でした。
※抗体は、「Y」字の形をしており、2本の重鎖と2本の軽鎖で構成されており、異物と結合する部分(Y字の上半分の「V」部分)と免疫細胞と結合する部分(Y字の下半分の「I」部分)でできています。軽鎖は、V字部分のみ、重鎖はV字とI字がつながっています(図参照)。
ALアミロイドーシスの症状
アミロイドタンパク質は、心臓、腎臓、肝臓、消化管、末梢神経などさまざまな臓器に沈着するため、特徴的な症状は少なく、体重減少、疲労、息切れ、起立性めまい、手足のむくみやしびれなどが起こることがあります。
アミロイドタンパク質が沈着した臓器によっては、心症状(心臓に沈着)、消化器障害(消化管に沈着)、ネフローゼなどの腎症状(腎臓に沈着)、手足のしびれや麻痺などの末梢神経障害(末梢神経に沈着)などの症状が起こることがあります。
ALアミロイドーシスの診断
ALアミロイドーシスの確定診断では、体の一部から採取した組織を検査液で染色し、顕微鏡による観察でアミロイドが存在するかが確認されます。さらに、抗免疫グロブリン軽鎖抗体を用いた免疫染色により、アミロイドの病型を確定します。病型が確定できない場合は、アミロイドが沈着した部位から組織を採取して検査が行われます。
ALアミロイドーシスの治療
ALアミロイドーシスと診断された場合は、自家造血幹細胞移植の適応があるかどうかが判定されます。適応は、トロポニンT※が0.06ng/mL未満、収縮期血圧が90mmHgを超える、腎機能(50mL/min/1.73m2)、年齢(70歳未満)、PS2以内などを基準に適応が判断されます。
移植の適応ありと判定された場合は、移植前治療としてD-BCD療法(ダラツムマブ、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾン)が寛解導入療法として推奨されています。ダラツムマブが投与できない場合は、BCD療法(ボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾン)が推奨されています。移植前治療後は、大量メルファラン併用自家末梢血幹細胞移植が行われます。
移植の適応なしと判定された場合は、D-BCD療法が推奨されています。
初回治療後に、再発または最良部分奏効(VGPR)が得られなかった場合は、救援療法としてボルテゾミブまたはレナリドミドによる治療が患者さんの病態に応じて選択されます。
※トロポニンは、筋肉を構成するタンパク質の1つで、トロポニンTは心筋の特異性が高いため、心筋の壊死を伴う心筋障害のマーカーとして用いられています。
参考文献:一般社団法人日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版.金原出版