筋層浸潤性膀胱がんに対するペムブロリズマブ+化学放射線療法の治験

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治験

KEYNOTE-992

筋層浸潤性膀胱がん患者さんを対象に、MK-3475と化学放射線療法の併用療法と化学放射線療法単独療法の有効性および安全性を比較する無作為化プラセボ対照二重盲検第3相試験

治験概要:

筋層浸潤性膀胱がんに対する治験。転移がなく化学放射線療法が適応となる患者さんが対象です。
ペムブロリズマブ+化学放射線療法とプラセボ+化学放射線療を比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、636人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、並行群間、多施設共同、二重盲検(社内盲検を含む)。
試験群:ペムブロリズマブ+化学放射線療法
対照群:プラセボ+化学放射線療
無イベント期間、有害事象発現数、全生存期間、無転移生存期間などで評価します。

疾患解説:膀胱がん

疾患の詳細は、「膀胱がんを知る」を参照ください。

治験薬:ペムブロリズマブ

ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:シスプラチン

シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。

治験薬:フルオロウラシル

フルオロウラシルは、DNAの合成阻害、RNAの機能障害によるがん細胞を細胞死に誘導する代謝拮抗薬です。
DNAを構成する主な成分はピリミジン塩基といわれ、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルなどです。フルオロウラシルは、このピリミジン塩基と似たような構造で、DNAが合成されるときにピリミジン塩基の代わりに取り込まれることで、DNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。

治験薬:マイトマイシンC

マイトマイシンCは、抗腫瘍性抗生物質に分類される抗悪性腫瘍薬です。
様々な酵素により還元され複数の活性代謝となることで、DNAの分裂阻止やDNA鎖切断などによってDNAの複製を阻害し、抗腫瘍効果を発揮します。

治験薬:ゲムシタビン

ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。
ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称筋層浸潤性膀胱癌(MIBC)患者を対象に、MK-3475と化学放射線療法(CRT)の併用療法と化学放射線療法単独療法の有効性及び安全性を比較する無作為化プラセボ対照二重盲検第III相試験(KEYNOTE-992)
試験の概要本治験は、筋層浸潤性膀胱癌(MIBC)患者を対象に、MK-3475の併用化学放射線療法を化学放射線療法単独と比較する
主な仮説は、MK-3475+CRTはプラセボ+CRTと比較して、BI-EFSにおいて優越性を示す
疾患名筋層浸潤性膀胱癌
試験薬剤名ペムブロリズマブ+CRT
用法・用量MK-3475
400mgを6週間間隔で投与
化学療法は、以下の3つのレジメンのうちいずれか1つを選択する(放射線療法中に投与)
シスプラチン(35mg/m2週1回)
5-FU(500mg/m2)+MMC(12mg/m2)
5-FU:放射線療法の1~5日目及び22~26日目に静脈内投与
MMC:放射線療法の1日目に静脈内投与
ゲムシタビン(27mg/m2週2回)
放射線療法は、以下の3つのレジメンのうちいずれか1つを選択する
通常分割照射(膀胱のみ)64Gy
通常分割照射(膀胱及び骨盤リンパ節)64Gy
寡分割照射55Gy
対照薬剤名プラセボ+CRT
用法・用量プラセボ
6週間間隔で投与
化学療法は、以下の3つのレジメンのうちいずれか1つを選択する(放射線療法中に投与)
シスプラチン(35mg/m2週1回)
5-FU(500mg/m2)+MMC(12mg/m2)
5-FU:放射線療法の1~5日目及び22~26日目に静脈内投与
MMC:放射線療法の1日目に静脈内投与
ゲムシタビン(27mg/m2週2回)
放射線療法は、以下の3つのレジメンのうちいずれか1つを選択する
通常分割照射(膀胱のみ)64Gy
通常分割照射(膀胱及び骨盤リンパ節)64Gy
寡分割照射55Gy
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン無作為化、並行群間、多施設共同、二重盲検(社内盲検を含む)
目標症例数636
適格基準
  • TURBT又は最大限のTURBTにより、主な組織型が尿路上皮のMIBCであると組織学的に確定診断(BICRによる組織型及び筋層浸潤の確認)された患者
  • 画像検査により臨床的に非転移性膀胱癌(N0M0)と診断され、BICRにより確認された患者
  • CRT及び治験実施計画書に規定する放射線増感化学療法レジメンのいずれか1つを予定し、かつ適格である患者
  • ECOGPSが0、1又は2の患者
  • 適切な臓器機能を有する患者
  • 治療期間中及び最終治療後少なくとも180日間、治験実施計画書に詳述する避妊法を使用することに同意した男性患者
  • 妊娠しておらず、授乳中でなく、治療期間中及び最終治療後少なくとも180日間、治験実施計画書に詳述する避妊法を使用することに同意した、卵子の提供や凍結保存をしないことに同意した患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 膀胱全体に広範なCIS(多発性CIS)が認められる患者
  • 過去2年以内に膀胱以外の部位に尿路上皮癌が認められた患者
  • 過去3年以内に進行性又は治療が必要な他の悪性腫瘍を有する患者
    注:根治的治療を受けた皮膚の基底細胞癌、皮膚の扁平上皮癌、表在性膀胱癌又は他の上皮内がん(例:上皮内乳癌及び子宮頸部CIS)の患者は組入れ可能である
  • スクリーニング期間中に両側水腎症が認められた患者
  • 少量尿(30mL未満)の頻尿、尿失禁を伴い、膀胱機能が制限されている患者、又は自己導尿法若しくは永久留置カテーテルを要する患者
  • 過去にMIBCに対する骨盤/局所放射線療法又は何らかの抗腫瘍治療を受けた患者
  • 抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2の薬剤又は他の補助刺激性若しくは共抑制性T細胞受容体(CTLA-4、OX-40、CD137等)を標的とした薬剤の治療歴を有する患者
  • 本治験の初回治療前30日以内に生ワクチンの接種を受けた患者
  • 現在他の治験薬の治験に参加している、又は本治験の初回治療前4週間以内に他の治験薬の治験に参加した若しくは治験用の医療機器を用いた患者
  • MK-3475若しくは選択した化学療法薬、及び/又はこれらの治験薬の添加剤に対する重度(Grade3以上)の過敏症を有する患者
  • 免疫不全状態と診断された患者、又は本治験の初回治療前7日以内に長期全身性ステロイド療法(プレドニゾロン換算で10mg/日超)や他の免疫抑制療法による治療を受けた患者
  • 過去2年以内に全身性の治療(疾患修飾薬、コルチコステロイド又は免疫抑制剤)を要した活動性の自己免疫疾患を有する患者
  • 間質性肺疾患/肺臓炎を合併、若しくはステロイド投与が必要な(非感染性の)間質性肺疾患/肺臓炎の既往を有する患者
  • 全身性の治療を必要とする活動性の感染症を有する患者
  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の既往を有する患者
  • B型肝炎(B型肝炎表面抗原陽性)又は活動性のC型肝炎[C型肝炎ウイルスRNA(定性)陽性]を有する患者
  • 活動性の結核の既往を有する患者(結核菌、Bacillus tuberculosis)
  • 治験の実施に影響を与える可能性があると判断された精神疾患又は薬物乱用障害を有する患者
  • 同種組織/臓器の移植歴を有する患者
主要な評価項目有効性/efficacy
主要な評価方法BI-EFS:無作為割付けから特定のイベントの発現が最初に記録されるまでの期間
副次的な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
副次的な評価方法有害事象を発現した患者数
有害事象により治験治療を中止した患者数
OS:無作為割付けからあらゆる原因による死亡までの期間
MFS:無作為割付けからリンパ節転移又は遠隔転移の所見が最初に記録されるまでの期間など
予定試験期間2020年8月31日~2027年2月10日

出典:臨床研究等提出・公開システムより