局所進行または転移性尿路上皮がんに対するデュルバルマブとトレメリムマブの治験
治験の募集状況は、「jRCT 臨床研究等提出・公開システム」ページでご確認ください。
治験名
NILE
切除不能な局所進行または転移性尿路上皮がん患者を対象に、一次治療としてのデュルバルマブ+標準化学療法およびデュルバルマブ+トレメリムマブ+標準化学療法と標準化学療法単独とを比較する第3相国際多施設共同無作為化非盲検比較対照試験
治験概要:
局所進行または転移性尿路上皮がんに対する治験。一次化学療法による前治療がない患者さんが対象です。
一次化学療法としてデュルバルマブ+トレメリムマブ+標準化学療法の併用後にデュルバルマブを単剤投与した場合、標準化学療法と比較して有効性と安全性を評価する臨床試験です。
登録予定数は885人。
試験デザインは、無作為化、非盲検比較対照。
フェーズは、第3相臨床試験。
比較する対象は
試験群1:デュルバルマブ+トレメリムマブ+標準化学療法
試験群2:デュルバルマブ+標準化学療法
対照群:標準化学療法
で主要評価項目は無増悪生存期間、全生存期間、副次的な評価項目は、24か月の無増悪生存期間、24か月の全生存期間、全奏効率などで評価します。
疾患解説:尿路がん
尿路がんは、膀胱、尿管、腎盂、尿道にできたがんの総称です。このうち最も発生頻度の高いのが、膀胱がんです。尿路がんの約95%は尿路上皮と呼ばれる粘膜から発生し、尿路上に多発したり、再発を繰り返すのが特徴です。尿路上皮組織から発生するがんを尿路上皮がんといいます。
厚生労働省大臣官房統計情報部の人口動態統計によると、膀胱がんによる死亡数は、2002年に5138人、2006年に6126人、2010年に6804人、腎盂がんによる死亡数は2002年に781人、2006年に1200に人、2010年に1558人、尿管がんの死亡数も2002年に852人、2006年に1105人、2010年に1593人と増加傾向にあります。
膀胱がんの主な自覚症状は、血尿と頻尿、排尿時の痛みなどがありますが、早期にはこうした症状がないこともあります。
腎盂・尿管がんで最も多い症状も血尿です。尿管がふさがったり、がんが周囲へ浸潤したばあいは、腰、背中、脇腹などに痛みがおこることがあり、尿管結石に似た症状が起こることがあります。
治験薬:デュルバルマブ
デュルバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:トレメリムマブ
トレメリムマブは、抗CTLA-4抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
がん細胞を攻撃するT細胞の表面に発現するCTLA-4とT細胞を抑制するCD80/86が結合しないようにするのが抗CTLA-4抗体です。これにより、T細胞は活性化したままがん細胞に誘導されます。また、過剰な免疫応答にブレーキをかける制御性T細胞を誘導し、攻撃を抑制します。制御性T細胞に発現しているCTLA-4と抗CTLA-4抗体が結合することで排除することで、免疫抑制を解除します。
抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体との併用療法薬として効果が期待されています。

治験薬:シスプラチン
シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。
治験薬:カルボプラチン
カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。
治験薬:ゲムシタビン
ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。
ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 切除不能な局所進行又は転移性尿路上皮癌患者を対象に、一次治療としてのデュルバルマブ+標準化学療法及びデュルバルマブ+tremelimumab+標準化学療法と標準化学療法単独とを比較する第III相国際多施設共同無作為化非盲検比較対照試験 |
試験の概要 | 本治験は、組織学的又は細胞学的に診断された切除不能な局所進行又は転移性の尿路上皮(腎盂、尿管、膀胱、及び尿道を含む)の移行上皮癌を有する患者を対象に、一次化学療法としてのデュルバルマブ+-tremelimumabと標準化学療法(シスプラチン+ゲムシタビン又はカルボプラチン+ゲムシタビンの2剤併用化学療法)との併用後にデュルバルマブを単剤投与した場合の有効性及び安全性について、標準治療単独と比較して評価する第III相国際多施設共同無作為化非盲検比較対照試験である |
疾患名 | 切除不能な局所進行尿路上皮癌、転移性尿路上皮癌 |
試験薬剤名 | デュルバルマブ、Tremelimumab、シスプラチン+ゲムシタビン、カルボプラチン+ゲムシタビン |
用法・用量 | デュルバルマブ+標準治療の併用療法:3週間を1サイクルとして、デュルバルマブを標準治療と併用した後、4週間を1サイクルとしてデュルバルマブ単剤を投与する 標準治療としてシスプラチン+ゲムシタビン(シスプラチン不適格の場合はカルボプラチン+ゲムシタビン)、3週間を1サイクルとして6サイクルまで併用する。 デュルバルマブ+tremelimumab+標準治療の併用療法:3週間を1サイクルとしてデュルバルマブとtremelimumabを標準治療と併用した後、4週間を1サイクルとしてデュルバルマブ単剤を投与する。 Tremelimumabは4サイクルまで投与する。 標準治療としてシスプラチン+ゲムシタビン(シスプラチン不適格の場合はカルボプラチン+ゲムシタビン)を、3週間を1サイクルとして6サイクルまで併用する |
対照薬剤名 | シスプラチン+ゲムシタビン、カルボプラチン+ゲムシタビン |
用法・用量 | 標準治療:標準治療としてシスプラチン+ゲムシタビン(シスプラチン不適格の場合はカルボプラチン+ゲムシタビン)を、3週間を1サイクルとして6サイクルまで投与する |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 無作為化、非盲検比較対照 |
目標症例数 | |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 | |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 |