食道がんの再発・転移
食道がんの経過観察、再発や転移に対する治療法、支持療法(緩和ケア)を紹介します。
食道がんの根治治療後の経過観察
食道がんの手術後の再発は、約40〜60%で認められ、再発患者さんのうち約80〜90%は術後2年以内という報告があります。経過観察は、「再発の早期発見・早期治療」「治療後の短期から中長期に及ぶ全身管理・QOLの評価と改善」「多発がん・重複がんの早期発見・早期治療」を目的に、高頻度の画像診断が行われます。
日本食道学会の食道癌診療ガイドライン検討委員会が2020年に行った食道外科専門医認定施設を対象とした食道がん根治治療後のフォローアップに関する全国調査の結果、ステージ2、3、4の根治切除後の経過観察状況は、以下の通りです。
食道がん根治治療後のフォローアップに関する全国調査の結果概要
1年目 | 5年目 | 10年目 | |
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問診と理学所見※ | 5回以上が64% | 3回以上が61% | 1回以上が59% |
頸部〜骨盤CT検査 | 3回以上が61% | 1回以上が96% | 1回以上が59% |
上部消化管内視鏡検査 | ― | 1回以上がほぼ100% | 1回以上が74% |
また、米国のNCCNガイドライン2021年版では、進行度に合わせて画像診断の頻度を変える方針が記載されています。T1bでは手術後3年目までの12か月ごとの胸腹部CT検査、T2〜T4では、2年目まで6か月ごと、および症状がみられた時の胸腹部CT検査が推奨されています。
食道がんの再発に対する治療
食道がんの再発に対する治療は、初回治療の種類によって個別に検討されます。また、リンパ節再発、局所再発、他臓器への遠隔転移、これらの複合再発などによって、治療法が異なります。再発時の患者さんの健康状態も、治療選択に影響があります。
根治的手術後の再発
根治手術後の再発の治療法は、再発部位、形式、範囲に応じて選択されます。再発時の全身状態や手術した範囲内の再発かどうか、術前または術後に放射線治療を行ったかどうかなどの状況により治療法が異なります。
限局した再発の場合は、根治を目指した手術または化学放射線治療、放射線治療のいずれから選択されます。
根治的化学放射線治療後の再発
根治的化学放射線治療後の再発に対する治療法は、病態や全身状態によりさまざまで一定した治療法はありませんが、再発が限局している場合は、手術や内視鏡的切除などの救済治療が行われることがあります。病変が粘膜内にとどまる場合は、内視鏡治療が選択されます。粘膜下層や固有筋層まで浸潤が疑われる場合は、光線力学療法※が治療選択の1つとして考慮されます。
※病巣部分に光増感剤を集積させ、そこに光を照射することにより発生する活性酸素でがんを死滅させる治療法。
食道がんの支持療法(緩和ケア)
食道がんでは、嚥下障害、栄養障害、瘻孔(ろうこう:炎症などで起こった管上の穴)による咳などによりQOLが低下することがあります。そのため、治療初期から症状緩和やQOL改善を目的に緩和ケアが行われます。
食道がんの終末期では、食道狭窄による嚥下障害とそれに伴う栄養障害、気道狭窄や気道との瘻孔による咳などの症状、遠隔転移による悪液質、高カルシウム血症などが問題となります。特に食道狭窄や気道狭窄に対しては、一時的な症状緩和を目的とした治療として放射線治療、化学放射線治療、食道ステント挿入、気道ステント挿入、食道バイパス手術などが行われることがあります。
参考文献
日本食道学会編 食道癌診療ガイドライン2022年版.金原出版