食道がんの再発・転移

食道がんの経過観察、再発や転移に対する治療法、支持療法(緩和ケア)を紹介します。

食道がんの経過観察

食道がんでは、リンパ節再発や他臓器への遠隔転移が2~3年後に起こる可能性があるため、定期的に長期間の経過観察が行われます。経過観察期間は、最初の1~2年は3~6か月ごとに行われ、その後は検査間隔を延ばしていきます。

内視鏡的切除術後の経過観察

内視鏡的食道粘膜切除術(EMR)や内視鏡的食道粘膜下層剥離術(ESD)の治療後の経過観察は、深達度によって異なります。粘膜固有層にとどまる場合は、リンパ節転移はほぼありません。そのため、リンパ節転移の再発検査は基本的に必要ありませんが、局所再発や遠隔転移を調べるための検査は行われます。また、頭頸部がん、胃がん、大腸がんなどが、食道がんと合併して起こることが多くあるため、1年に1回は内視鏡検査が行われます。

粘膜下層(0.2mm以上)まで浸潤していた場合は、約半数の患者さんにリンパ節転移が見つかります。そのため、内視鏡検査とは別に定期的なCT検査やPET検査などリンパ節再発に対する検査が行われます。

手術後の経過観察

手術後の経過観察は、リンパ節転移や遠隔転移の早期発見を目的に定期的なCT検査やPET検査が行われます。頸部や腹部の超音波検査、骨シンチグラフィーなどの検査が行われることもあります。最初の1~2年は、3~6か月ごとに行い、その後は検査期間の間隔を延ばしていきます。

根治的化学放射線治療後の経過観察

根治的化学放射線治療では、治療後にがんが消失したかどうかについて確認されます。治療終了3~4週間後に内視鏡による生検組織検査、CTもしくはPET検査で評価されます。完全にがんが消失していれば、局所再発、リンパ節転移、他臓器への遠隔転移などを早期発見するために、定期的な経過観察が行われます。

内視鏡検査は局所再発の発見、CTやPET検査はリンパ節や他臓器への転移を見つけるために行われます。最初の1~2年は、3~6か月ごとに行い、その後は検査期間の間隔を延ばしていきます。

食道がんの再発に対する治療

食道がんの再発に対する治療は、初回治療の種類によって個別に検討されます。また、リンパ節再発、局所再発、他臓器への遠隔転移、これらの複合再発などによって、治療法が異なります。再発時の患者さんの健康状態も、治療選択に影響があります。

内視鏡的切除術後の再発

内視鏡的食道粘膜切除術(EMR)後の局所再発は、多くが初回治療後1年以内に起こりますが、2~3年後に再発することもあります。内視鏡的切除術後の追加治療の適応や治療法は、治療後の組織学的評価のよって異なります。

粘膜上皮や軟膜固有層までの浸潤の場合は経過観察となりますが、粘膜筋板まで浸潤しており脈管侵襲(がん細胞が血管またはリンパ管に移動すること)があった場合は、手術または化学放射線治療が追加されます。

粘膜下層以上まで浸潤していた場合は、ステージ1と同様に手術に耐えられるかどうかを判断し治療が選択されます。手術可能な場合は手術または化学放射線治療、手術に耐えられない場合は、化学放射線治療または放射線治療が選択されます。

根治的手術後の再発

根治切除後の再発の治療法は、再発部位、形式、範囲に応じて選択されます。再発時の全身状態や手術した範囲内の再発かどうか、術前または術後に放射線治療を行ったかどうかなどの状況により治療法が異なります。

限局した再発の場合は、根治を目指した手術または化学放射線治療、放射線治療のいずれから選択されます。

根治的化学放射線治療後の再発

根治的化学放射線治療後の再発に対する治療法は、病態や全身状態によりさまざまで一定した治療法はありませんが、再発が限局している場合は、手術や内視鏡的切除などの救済治療が行われることがあります。病変が粘膜内にとどまる場合は、内視鏡治療が選択されます。粘膜下層や固有筋層まで浸潤が疑われる場合は、光線力学療法が治療選択の1つとして考慮されます。

※病巣部分に光増感剤を集積させ、そこに光を照射することにより発生する活性酸素でがんを死滅させる治療法。

食道がんの支持療法(緩和ケア)

食道がんでは、嚥下障害、栄養障害、瘻孔(ろうこう:炎症などで起こった管上の穴)による咳などによりQOLが低下することがあります。そのため、治療初期から症状緩和やQOL改善を目的に緩和ケアが行われます。

食道がんの終末期では、食道狭窄による嚥下障害とそれに伴う栄養障害、気道狭窄や気道との瘻孔による咳などの症状、遠隔転移による悪液質、高カルシウム血症などが問題となります。特に食道狭窄や気道狭窄に対しては、一時的な症状緩和を目的とした治療として放射線治療、化学放射線治療、食道ステント挿入、気道ステント挿入、食道バイパス手術などが行われることがあります。

参考文献
日本食道学会編 食道癌診療ガイドライン2017年版.金原出版

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