相談:乳がんの自家組織を用いた乳房の一次再建は、痛みなどで術後が大変なのでしょうか?

手術(外科治療) QOL

乳がんと診断され、全摘手術を受けることになりました。自家組織を用いた乳がんの切除術と同時に行う一次再建を希望していますが、「術後が予想以上に大変です」と言われ、正直迷っています。個人差はあるかと思いますが、苦痛はかなりのものなのでしょうか?

(本人、女性)

回答:一次再建では、「使用する部位」「術式」などにより、メリット・デメリットが異なる

日本乳癌学会の「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版」によると、乳がんの乳房再建に関する情報は次の通りです。

乳房再建に関して
・乳房再建には、自家組織を用いた再建法と人工乳房で行う再建法があります
・乳がんの切除術と同時に行う一次再建と切除術後期間をおいて行う二次再建があります
・乳房を再建することで再発が増えたり、再発の診断に影響したりすることはありません

自家組織による再建
・自家組織による再建は、患者さんの体の一部の組織を胸に移植する方法で、主に「お腹の組織を移植する方法」と「背中の組織を移植する方法(広背筋皮弁法)」の2つがあります

〇お腹の組織を移植する方法
・お腹の組織を移植する方法には、お腹の皮膚、脂肪、筋肉に血管を付けたまま胸に移植して乳房をつくる方法(腹直筋皮弁法)と、お腹の脂肪とそこに栄養を送る血管だけを移植して乳房をつくる方法(穿通枝皮弁法)があります
・腹直筋皮弁法は、お腹の手術を受けたことのある方や、将来妊娠・出産を予定されている方には適していません
・穿通枝皮弁法は、腹直筋は犠牲にならないので腹筋が弱くなることはありませんが、血管が詰まると脂肪全体が死んでしまうため、実施できる施設や形成外科医は限られています
・どちらの方法も下腹部に傷が残ることは同じです

〇背中の組織を移植する方法
・広背筋皮弁法は、背中の皮膚、脂肪、筋肉に血管を付けたまま胸に移植して乳房をつくる方法です
・背中の組織を切り取る際に、背中に傷が残ります
・背中の筋肉を切り取っても他の筋肉が補うため、日常生活に支障はほとんどありません
・この方法は乳房のボリュームが比較的小さい方やお腹の手術を受けたことのある方、将来妊娠や出産を予定されている方に適した方法です
・この方法は移植した乳房の主体が筋肉であるため、しばらく使われなくなった筋肉が時間とともに萎縮し、再建した乳房が小さくなります

NPO法人E-BeCに関して
「乳房再建手術」への正しい理解の普及と患者さんのQOL向上をめざす「E-BeC」というNPO法人があります。...

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