【セミナー】最新のプレシジョン・メディシンによる個別化医療

文:がん+編集部

がんサポートコミュニティー主催「ペイシェント・アクティブ・フォーラム」

 認定NPO法人がんサポートコミュニティーは9月2日、第16回ペイシェント・アクティブ・フォーラム「がんの治る日は近いか?-個別化医療の現実」(共催:NPO法人パンキャンジャパン核医学診療推進国民会議)を開催しました。

 今回のペイシェント・アクティブ・フォーラムのテーマは「個別化医療」。近年、患者さんがもつ遺伝子変異を調べることで最適な治療を行うプレシジョン・メディシン(精密医療)による個別化医療の確立に期待が寄せられています。当日は、公益財団法人がん研究会 がんプレシジョン医療研究センター所長の中村祐輔先生が「プレシジョン医療:がん患者の人生の質向上に向けて」、金沢大学医薬保健研究域医学系核医学教授/核医学診療推進国民会議会長の絹谷清剛先生が「核医学ってなに?がん診療における役割」と題して、それぞれ講演されました。

がんの超早期再発診断と免疫治療の可能性

中村先生
公益財団法人がん研究会
がんプレシジョン医療研究センター所長
中村祐輔先生

 中村先生は、「がんの超早期再発診断」、「患者さんごとのがんの特徴にあわせた治療を行うこと」の必要性について解説しました。まず、近年のゲノム解析技術の進歩によって現実的になってきた技術が「リキッドバイオプシー」です。リキッドバイオプシーとは、患者さんの血液・唾液・尿などを用いた検査のことで、従来の検査方法よりも患者さんの負担が少ないといわれています。リキッドバイオプシーは、切除可能ながんの70~80%を検出できるとも報告されているそうです。卵巣がん膵臓がんなどでも検出率が高く、早期発見につながると期待されています。また、画像診断より6~9か月早い再発診断ができるという報告もあります。

 さらに、中村先生は治療を行ううえで、「患者さんの免疫力をあげることが大切」と解説します。本来、私たちヒトのからだには、がん細胞を攻撃する機能があります。しかし、がん細胞はその機能を抑制することで増殖してしまいます。そのため、がん細胞を攻撃する機能を復活させるか、人工的に増やすことが求められます。

 そこで、遺伝子変異を利用した新しいタイプの免疫治療の「ネオアンチゲン療法」や「T細胞受容体導入T細胞療法」の研究が進められています。ネオアンチゲンとは、がん細胞の表面にある目印のことで、患者さんごとに種類や数が異なります。これを利用したワクチンを体内に投与すると、がんを攻撃する機能が活性化されると考えられています。また、がんの目印を認識するT細胞受容体を体内に入れることでがんを攻撃するT細胞受容体導入T細胞療法は、マウスを用いた研究では効果が確認されたそうです。今後、ヒトへの応用が期待されています。

甲状腺がん・悪性リンパ腫などを対象に実施されている核医学治療

絹谷先生
金沢大学医薬保健研究域医学系核医学教授
核医学診療推進国民会議会長
絹谷清剛先生

 次に、絹谷先生からは、「核医学治療」の現状についてのお話がありました。核医学とは、ごく微量の放射線をだしている薬を目印に、病気の診断や治療を行うことです。PET検査も、核医学の診断法のひとつです。PET検査では、診断のために光る放射能を使用しますが、核医学治療では、体の中でがん細胞を攻撃する放射線を出す薬を使用します。現在、国内では、甲状腺がん悪性リンパ腫去勢抵抗性前立腺がんの骨転移を対象に承認されています。その他、悪性神経内分泌腫瘍などのがん種に対する臨床試験が行われています。また、欧米では、免疫治療との併用なども検討されているそうです。

 その一方で、日本では複雑な法律の規制などが原因で、開発が遅れています。そこで、絹谷先生は、日本の患者さんに適切な治療を提供できる環境を整えるため、国へ要望をあげる組織として「核医学診療推進国民会議」を立ち上げました。これらからも、患者さんの声を集約して、ひとつでも多くの要望を国へ届けたいと意気込みを語りました。

がん関連情報を配信するがん患者支援アプリ「CAN.」をリリース

CAN

がんサポートコミュニティー公式Facebookより

 最後に、がんサポートコミュニティーから、がん関連情報を配信するがん患者支援アプリ「CAN.(アンドロイド版)」をリリースしたことが発表されました。「CAN.」には、がんになっても自分らしく生きることが「できる。(CAN.)」の意味が込められています。会員登録をすることで登録情報に基づいたがん関連情報が配信されること、がん体験者の声やがん専門医からのメッセージが定期的に配信されること、などの特徴があります。また、がんに関するアンケートも配信していく予定です。アンケート結果をもとに患者さんやご家族の声を集約していくことで、がん医療の未来へ役立てていく、としています。

 次回のペイシェント・アクティブ・フォーラムは、「がんのない社会をめざして~減りつつある肝臓がん、ねらうは肺がん~(仮)」をテーマに、2019年9月28日(土)に開催します。当日は、大阪国際がんセンター副院長の片山和宏先生が講演されます。

このイベントの詳細
がんの治る日は近いか?-個別化医療の現実

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