第4回日本がんサポーティブケア学会 ポスターセッションより「栄養障害の評価、栄養サポート」

がん患者の栄養障害の評価、栄養サポートをめぐって議論が白熱

2019.10 取材・文●「がんサポート」編集部

 がんが進行すると、食欲不振、栄養不良、体重減少などが起こりやすい。そしてこうした症状は、患者を苦しめ、QOL(生活の質)を低下させるだけでなく、抗がん薬の効果の減弱、副作用の増加、治療の中断などを招く大きなリスクとなる。第4回日本がんサポーティブケア学会では、栄養障害の評価法や栄養支援の具体的な対策などに関する多くの研究成果が発表され、議論が白熱した。ここでは、その報告のいくつかをピックアップして紹介する。

自問式問診票(PG-SGA・SF)で低栄養リスク患者を抽出

 がん患者の低栄養は、化学療法の完遂率や結果に影響する。そこでカギとなるのが、低栄養状態をどう見出していくかだ。愛知医科大学病院栄養部、緩和ケアセンター、看護部、薬剤部などの共同研究グループは、患者自記式による主観的包括的評価である「PG-SGA(Patient-Generated Subjective. Global Assessment)」の短縮版(SF)を日本語化した自問式問診票を作成。これを用いてがん患者の栄養状態を評価し、低栄養患者のスクリーニングに役立てていると報告した。

 PG-SGA・SFは、がん患者の栄養アセスメントツールとして開発された質問票。①身体測定データと体重変化(0~1点)、②食事摂取量の変化と内容(0~5点)、③食事摂取に関する身体症状(0~24点)、④身体活動と機能(0~3点)、の4項目からなる。

 例えば体重については、現在、1カ月前、6カ月前の体重と、最近2週間の変化をチェックする。また、食事摂取量に関しては、普段と比べ過去1カ月間の食事量が「変わらない」、「普段より多い」、「普段より少ない」か、さらに食事の形態(固形物を少し、流動食のみ、栄養剤のみなど)を聞く。そして、それぞれの項目を点数化して、合計点から低栄養のリスクを判定する。PG-SGA・SFのカットオフ値(低栄養か否かの分岐点)は3点以上が妥当と報告があるところから、同研究でも3.0以上を「低栄養リスクあり」とした。

 調査対象としたのは、2018年9月~2019年3月の間に、同院外来化学療法を受け、初診時に。PG-SGA・SFの回答をした315例(男性122例、女性193例、平均64.3歳)。消化器がん94例、乳がん77例、血液がん57例、婦人科がん28例、その他59例という内訳だった。

 その結果、PG-SGA・SFの合計点数の平均は2.5点で、低栄養リスクありと評価される3点以上が112例(35.6%)に上った。個々の項目をみると、「食事摂取に関する身体症状」では、315例中104例(33.0%)が「何らかの身体症状がある」と回答し、症状としては「食欲がない」、「味がおかしい」、「すぐ満腹になる」、「むかつきがある」などが多かった。

 また、同院で開設している栄養サポート外来の受診や栄養指導を希望するかどうかを尋ねたところ、「希望する」と答えた患者は6例(1.9%)に留まった。

 この調査から、外来化学療法を受けている患者の3割以上が低栄養リスクを抱えていることが浮き彫りになった。ただ、低栄養のリスクがあっても、栄養指導を希望する患者は少なかった。

 同グループでは、栄養アセスメントツールとしてのPG-SGA・SFの有用性は認めつつも「そこから得られる臨床情報をもとに、患者個々の状態に応じた栄養サポートにつなげることが課題」としている。

(発表演題PS14-12:「外来化学療法患者におけるPG-SGA・SFを用いた低栄養リスク者抽出と課題」、愛知医科大学病院栄養部、緩和ケアセンター、愛知医科大学大学院緩和・支持医療学、愛知医科大学病院看護部、薬剤部の共同研究)

術前の体組成データ測定が入院期間を予測する手がかりに

 がん患者は手術前から栄養障害を来していることが多い。藤田医科大学病院看護部、緩和医療科、総合消化器外科の研究グループは、そうした栄養不良が、手術後の入院日数の延長に関係することを、消化器がん患者の検討から突き止めた。

 手術後の体重や筋肉量の低下は、合併症を増加させたり化学療法の効果を弱めたりして、予後不良の一因となる。しかし、手術前の栄養状態を客観的に評価し、入院期間との関連を追跡した報告は少ない。同グループの研究は、この点を明らかにしようとしたもの。術前の栄養状態(体組成データ)から術後の入院日数の予測が可能かどうかを検討した。

 同院消化器外科病棟に、手術目的で入院した患者で、周術期体組成の測定する観察研究に同意した25例(胃がん12例、大腸がん13例)を対象とした。

 体成分の分析にはIn Body770※1という装置を用い、体細胞量、体脂肪量、骨格筋量、そして骨格筋量の指標であるSMI(骨格筋量指数)※2を、入院後手術前に1回測定し、SMIと入院日数の間に有意の相関を認めるか否かを検討した。

 その結果、次のような点が判明した。①手術前の体細胞量、骨格筋量が多い患者ほど、入院期間が短かった、②体脂肪率が高いほど、入院期間が長引く傾向が認められた、③SMIではp=0.0487で有意差が認められ、手術前のSMIが高値であるほど入院日数が短くなっていた。

 同グループでは、このデータから「術前に体組成を計測すれば、潜在的な入院期間の延長危険因子を予め知ることができる」とした上で、「それが、栄養管理やリハビリテーション介入が必要かどうかを判断する目安となる可能性がある」とまとめた。

※1 In Body770=生体電気インピーダンス分析法(BIA法)という原理を応用して、体内の水分や筋肉、脂肪など様々な体成分を測定する装置。体成分に関する詳細なデータを得ることができる

※2 SMI(Skeletal Muscle Mass Index)=四肢骨格筋量(kg)を合計し身長(m)の2乗で割ったもの(kg/m2)

(発表演題PS14-14:「胃がん、大腸がんにおける術前体組成計測データが、術後入院日数に及ぼす影響についての観察研究」藤田医科大学病院看護部、緩和医療科、総合消化器外科の共同研究)

化学療法施行中の切除不能胆道・膵がん患者にω-3系脂肪酸による栄養サポートが有効

 がん患者の低栄養を是正するには、栄養状態を正しく評価した上で、適切な栄誉管理を行う必要がある。その方法は個々の患者によって異なるが、東京慈恵会医科大学付属病院肝胆膵外科と消化器外科の共同研究グループは、化学療法を施行中の切除不能胆道・膵がん患者についてこの点を検討。前向き試験から「ω(オメガ)-3系脂肪酸による栄養サポートが有用」とするデータを報告した。

 切除不能胆道・膵がん患者では、サルコペニア(加齢に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下)を呈するケースが多い。その要因の1つと考えられるのががん悪液質だ。一方、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、α-リノレン酸などのω-3系脂肪酸は、悪液質の引き金となる炎症性サイトカイン(IL(インターロイキン)-1、IL-6、TNF(腫瘍壊死因子)-αなど)の産生を抑制する。そこで同グループでは、ω-3系脂肪酸の投与が、がん悪液質の改善に寄与する可能性があると考えた。

 対象は、化学療法を行った切除不能胆道・膵がん患者37例(平均66歳、男性23例、女性14例)。胆道がん患者には、ω-3系脂肪酸含有経腸剤(商品名ラコール)2パック(400ml/400kcalキロカロリー)以上を連日投与し、膵がん患者には、それに加えて4週後から膵消化酵素補充剤も処方した。そして、いずれの群についても、4週後、8週後に、主要評価項目として体重、骨格筋量、副次評価項目として血液生化学所見(EPA、EPA/AA(アラキドン酸)比、好中球、IL-6、NK(ナチュラルキラー)細胞活性など)を測定した。

 その結果、すべての症例で、ω-3系脂肪酸による栄養介入によって、投与4週後、8週後に骨格筋量が有意に増加した。また、胆道がん患者では、化学療法の継続率も改善された。

 すでに、肺がん、結腸がん、直腸がん、頭頸部がんなどでは、ω-3系脂肪酸の投与が体重の維持、血液検査データの改善、QOL(生活の質)スコアの向上に有用なことが明らかにされている。しかし、化学療法中の切除不能胆道・膵がんで、それが実証されたのは初めて。同グループでは、「ω-3系脂肪酸による栄養サポートは、骨格筋量の増加を認め、がん悪液質を改善する可能性がある」としている。

(発表演題PS14-17:「切除不能切除不能胆道・膵がんに対する化学療法施行患者におけるω-3系脂肪酸での栄養サポートの有用性の検討」、東京慈恵会医科大学付属病院肝胆膵外科と消化器外科の共同研究)