「若年性がん患者団体 STAND UP!!」-若年性がん患者ならではの悩みを共有

 若井亮治さん
若年性がん患者団体 STAND UP!!事務局長 若井亮治さん

2023.8 取材・文 がんプラス編集部

 若年性がん患者団体 STAND UP!!(以下、STAND UP!!)は、39歳までにがんに罹患した若年性がん患者さんによる、若年性がん患者さんのための団体です。近年、15歳から39歳の患者さんを「AYA世代」(Adolescent&Young Adult、思春期・若年成人)と呼ぶようになりましたが、AYA世代の方々は進学・就職・結婚・妊娠・出産など、大きなライフイベントに直面することもあり、「ならでは」の悩みを多く抱えています。事務局長の若井亮治さんに活動についてお話をうかがいました。

39歳以下でがんに罹患した経験がある方のために

 STAND UP!!は、松井基浩さん(東京都立小児総合医療センター血液・腫瘍科医師、悪性リンパ腫に16歳で罹患)と、鈴木美穂さん(マギーズ東京共同代表、乳がんに24歳で罹患)が立ち上げた団体です。

STAND UP表紙

 おふたりとも若くしてがんに罹患した経験から、若年性のがん患者さんならではの悩みやエピソードを共有し合う場が必要だということを考えておられました。患者さんの体験談を集めてフリーペーパーを作り、発信することで、悩みを共有できるようにしよう、そのためには、多くの若年性がん患者さんのエピソードを集める必要がある、という流れから、2009年にSTAND UP!!が創設されました。

 STAND UP!!は、「39歳以下でがんに罹患した経験のある方、または闘病中の方」が会員で、現在約500人、女性が約6割です。がん種は、乳がんや血液がん、希少がんの方が多く、また、30代で罹患した方が入会されることが多いです。現在、治療中の方だけでなく、がん治療を終え、日常に戻られている方も入会されています。

フリーペーパー製作、オンライン交流会など

 主な活動は、1年ごとに発行するフリーペーパーの製作、交流イベントの開催、がん啓蒙イベントへの参加などです。

 フリーペーパー「STAND UP!!」は、全国のがん診療連携拠点病院を中心に配布しており、毎回10人以上の若年性がん患者さんの体験談を掲載しています。これまでに14冊発行しました。デザインは外部に依頼していますが、各ページの企画や構成、取材や執筆、製作の進行管理などメインの部分は運営スタッフを中心に行っています。私は第9号の編集長を担当させていただきました。フリーペーパーが完成した際には、会員向けにお披露目会も行っています。

 また、啓蒙イベントとしては、「ゴールドリボンウォーキング」や「リレー・フォー・ライフ」に参加しています。リレー・フォー・ライフは全国各地で開催されていますが、STAND UP!!では、東京の上野恩賜公園のリレー・フォー・ライフに参加しています。チームフラッグを掲げて、24時間夜通し歩き続けるのですが(コロナ禍以前、現在は1日の開催)、いろいろな話をしたりするのは楽しいです。

 このほか、年4回の交流会(オンライン)、12月には総会を開催しています。

就職活動で苦戦、世の中を変えたい思いから事務局長に

 私は、2009年、中学3年生でユーイング肉腫に罹患し、闘病。治療が順調に進み、約1年で治療が終了しました。治療しながら高校受験し、その後、高校に復学、大学へ進学したのですが、大学では容姿(毛髪の後遺症)についていじられて、つらい思いをしました。ちょうどその頃、定期検査のために受診した病院でSTAND UP!!のフリーペーパーを見つけました。読んでみると、私と同じように、治療終了後も困難に直面している方が、この活動に関わっていることを知りました。そこでSTAND UP!!に入会しました。

 入会して、自分の体験記を寄稿することはあったものの、最初の数年は活動に積極的にかかわったわけではありませんでした。ところが、大学4年生の時に就職活動が始まり、自分の病気体験を話すのか、話さないのか、非常に悩んだことがありました。正直に話すと企業の面接官には少し嫌な顔をされ…。そこで、STAND UP!!のイベントに参加したところ、同じように就職活動で苦労した方と話をすることができました。今は公務員として働いていています。

 若くしてがんを経験したことが、就職活動以外にも、ライフステージに沿って、何かとハンデになっている今の世の中を、何か少しでも自分の経験を通して良い方向に変えていきたい。そんな思いからこの活動に積極的に参加するようになり、2019年からは事務局長を務めています。

日常生活の話題は多い、深くカミングアウトせずともわかりあえる

 会員同士での話題は、がん闘病そのものよりも、仕事や恋愛、結婚など日常生活に関することが多いです。退院している人の方が参加しやすいということはあるかと思いますが、共通の趣味の話や、最近行ったショップの話で盛り上がることもあります。

 これから闘病が始まるタイミングで不安を抱えた方が、闘病を終えて10年ほど経つ、病気を乗り越えた会員さんの話を聞いて、「勇気をもらえた、励まされた」とおっしゃっていました。今治療中の方にとって、経験者の存在や言葉はどのように捉えられるのだろうかと、私自身も活動参加に対して躊躇する気持ちが以前あったのですが、このような交流の場は他になく、貴重な時間になっているようです。深く病気のことをカミングアウトしなくても理解し合えたりすることもあるのがいいところだと思います。

これまでの活動をこれからも変わらず継続

 活動開始から15年になるのですが、これからも、これまでの活動を大切に、継続していきたいと思っています。また、現状は、会員に対しての活動が中心になっているので、外部との関わり、例えば、他の患者会とのコラボレーションや、情報交換にも力を入れていけたらと思っています。

 「がん患者には夢がある」。これは、私たちの掲げるスローガンです。このスローガンを胸に、若年性がん患者さんの輪を広げ、若年性がん患者さんが一人で孤独に闘病することのない環境を目指していきたいと思います。

若年性がん患者団体 STAND UP!! 外部リンク

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地域
全国(オンライン)
連絡先
ホームページの 「お問い合わせフォーム」よりご連絡ください
活動内容
39歳までにがんを患った若年性がん患者による団体で、フリーペーパーの発行や交流イベントの開催等を通じて、闘病中の若年性がん患者が前向きに闘病生活を送れるようにすることを目的に活動しています。