「膵臓がん患者と家族の集い」-患者・家族・遺族の“情報交換とおしゃべりの会“

 和田さん
膵臓がん患者と家族の集い 和田さん

2023.12 取材・文 がんプラス編集部

 「膵臓がん患者と家族の集い」は、膵臓がんの患者さんや家族、遺族が参加して情報交換したり、愚痴を話して聞いてもらったりできる場として、オフ会のような形で2016年から活動しています。会員制の組織ではなく、その都度、自由に参加して交流することが可能です。運営サポーターの一人として活動を支える和田さんにお話しを伺いました。

発見されたときは「ステージ4」も多い膵臓がん、ならではの悩みも

202304講演会
2023年4月、佐藤典宏先生を迎えての講演会

 年に数回、対面形式として東京で、膵臓がんに関わる方が集まる会を開いていているほか、オンラインでの少人数交流会も開催してきたところです。以前は専門医など外部講師を招いての講演会を行うこともありましたが、最近は膵臓がん患者さん本人・家族・遺族による講演と、交流会という形が多くなっています。コロナ禍以前は100人以上が会場に集結していたのですが、コロナ禍には完全オンライン形式となり、2021年からハイブリッド開催を始め、2023年9月以降は会場での開催となっています。現在、40~50人ほどが参加されています。

 膵臓がんは、年間約4万3,000人(全国がん罹患データ、2019年)が診断されるがんですが、症状が現れにくいことから早期発見が難しく、発見された時はステージ4という方も多くいらっしゃいます。集いの参加者でも、ステージ4で手術不可という方が半数近くいらっしゃいます。「もう治療法はない」と医師に言われ、代替治療を含めて他に治療法はないのか探して悩まれている方もいます。すごく悩んでいるのに医療機関では話しにくい、先生が忙しそうで言い出せない…、そうした方々が、情報交換や話をする場として、この集いを活用していただけたらとの考えから開催しています。

 この集いは、膵臓がんサバイバーの木下義高さんを中心に2016年から始められました。私自身は2019年に膵臓がんが見つかったことがきっかけで参加するようになりました。今も抗がん剤治療を受けながら仕事を続けているのですが、私自身が“ベテラン患者”となったことから、何か役に立てることはないかと、2021年頃から運営にも関わるようになりました。現在は木下さんが一線を退かれることになったため、患者本人と遺族から構成される10人ほどの運営サポーターが引き継いで企画・運営を行っています。運営サポーター一同、膵臓がん患者さんのためにという強い思いを持って活動しています。

中立性を大切に、交流会は事前の登録情報に基づいてグループ分け

 集いは、実体験に基づいた情報を交換する場であり、愚痴を含めたおしゃべりを楽しむ会です。参加希望者には、「いかなる治療法、代替療法に対しても、否定も肯定もしない」「標準治療であれ、免疫療法その他の代替療法であれ、特定の治療法を推薦することはない」「組織ではないので、組織としての意思そのものは存在しない」ということをご理解いただいた上での参加をお願いしています。中立性を大事にということですね。

202307交流会
2023年7月、オンラインでの交流会

 交流会は2部制で、最初の30分は、事前の登録情報(病状や話をしたいこと)に基づいて、患者さんの場合はステージごとに、遺族は遺族同士で、のように分かれて交流します。後半はフリータイムとして、いろいろな方とお話ができるようになっています。話の内容はさまざまで、治療に関することでは、重粒子線治療(手術による根治的な治療法が困難な局所進行性膵臓がんは保険診療の対象)や補完・代替治療、抗がん剤治療のことなど、生活のことから、これら以外のことまで、話題は尽きません。

 また、講演の動画は、誰でもいつでも見られるように、ホームページにアップロードしています。

「同じ膵臓がんの人に会えたことがうれしい」、一気に話が盛り上がることも

 コロナ禍では、病院内外での交流が難しくなったことで、膵臓がんの患者さんに出会う機会が減り、孤独を感じられていた方も多くいらっしゃいました。ですので、参加者からは「(集いに参加して)一人ではないことがわかって、涙が出そうなほどうれしかった」といった声も寄せられています。遺族の方でグリーフケアを兼ねて参加されることもありますが、「やっとこういう場に参加できる心境になりました。いろいろな方とお話をして、私の経験が誰かの役に立てばと思いました」といった感想をお聞きすることもあります。

 全てのがん種を対象とした会では、ステージ4での参加者はなかなか見つからず、話が合わずに、かえって孤立感を深めてしまったという経験をお持ちの方もいらっしゃいます。同じ膵臓がんの患者さん同士だからこそ、一気に打ち解けて、話が盛り上がることもしばしばあります。

現状の「自由さ」を保ちながら、集いを持続させること

 今後、参加者、運営サポーターともに入れ替わっていくことが見込まれますが、この集いが、現状のような自由さを保ちながらも、その都度コミュニティ内でディスカッションして、さまざまな協力を得ながら、持続的に運営されていくことが望ましいと思っています。

 私自身も、先輩患者さんから教えてもらったことにとても勇気づけられ、参考にさせてもらったので、その恩返しのつもりで、できる限り運営を支えていけたらと思っています。

膵臓がん患者と家族の集い 外部リンク

主ながん種
膵臓がん
地域
全国(オンライン)
連絡先
https://tsudoi.cancer-survivor.jp/contact/
活動内容
膵臓がん患者さんやご家族が治療の情報を交換したり、愚痴を聞いてもらったりできる「おしゃべりとくつろぎの場」です。現在は、東京都内の会場で、講演と交流会という形式を基本として開催しています。