「ピンクバルーン」、乳がん罹患経験から伝えたいこと-がん検診啓発から当事者支援まで

麻倉未稀さん
一般社団法人ピンクバルーン 共同代表 麻倉未稀さん

2024.8 取材・文 がん+編集部

 一般社団法人ピンクバルーンの共同代表の一人である歌手の麻倉未稀さんは、ご自身が乳がんに罹患した経験から、地元・神奈川県藤沢市で2018年にピンクリボンふじさわ(現:ピンクリボンふじさわ/あいおぷらす)を立ち上げ、乳がん検診の受診率向上のための啓発活動を始められました。2023年には近くの厚木市にピンクバルーンを設立。がん検診の啓発とがん種を問わず患者さんやご家族の支援を行う活動も開始しました。活動にかける思いや、今後の活動についてお話を伺いました。

2017年に乳がん発覚、がん患者さんの現実を知る

 私は、2017年に番組の企画でがん検診を受け、そこで乳がんが見つかり、左乳房全摘手術と同時再建手術を行いました。7年が経過した現在、元気で過ごすことができていますが、ブレストクリニックでのフォローアップと、ホルモン療法を継続しています。

 告知は本当にショックでした。と同時に、告知間もないのに患者自身が考え、調べなければいけないことがこんなに多いのかという現実に驚きました。今でこそ、国立がん研究センターが、一般の患者さん向けに、がんに関するさまざまな正しい情報を発信されていますが、当時はありませんでしたし。また、手術までに何をそろえたらいいのか、手術後のステージ衣装はどうしたらいいのか、そんなちょっとした疑問を誰に相談したらいいのかと悩むこともありました。

 術後、主治医の誘いを受け、藤沢市で開催された乳がん検診の啓発イベントに参加しました。何度か伺うと、毎回同じ方が参加されていることに気が付きました。これでは広まらない、「がんにほとんど関心がない人」に早期発見のためのがん検診の大切さを広めるため、自分に何かできないかと考えるようになりました。また、手術前後で「マギーズ東京」を訪れたことがあったのですが、こんなふうに、気軽に話をできる場所が湘南エリアにもあってほしいなと率直に思いました。このようなさまざまな経験が、現在の活動を始めるきっかけになりました。

当事者・家族の交流会、運営スタッフのミニ講座も

 私たちは、厚木市内でがん患者さんとご家族を対象とした交流会(ラベンダーバルーン)を2か月に1度開催しています。参加者は女性が多めで、厚木市外の周辺の市町村から来られる方もいます。交流会自体はアットホームな雰囲気で、もともと決めていた話題について話をすることもあれば、その日の参加者の体調やお気持ちを伺って、違うお話をしたりすることもあります。運営メンバーの中には看護師や臨床心理士などが在籍しておりますので、お話をしながらミニ講座をすることもありますよ。

 参加を躊躇していたけど、気分を変えたいからと来られて、元気やエネルギーをもらえた、と明るくお帰りになる方もいらっしゃいます。そういう方々と接することで私たち運営側が励まされることの方が多いですね。本業の歌手活動との兼ね合いで、私自身が参加できる日は限られていますが、今後も継続していく予定です。

乳がん検診啓発、「ピンクリボンかながわ」をはじめ、親子が集う場所でも

「あつぎ鮎まつり」でのブース出展の様子
「あつぎ鮎まつり」でのブース出展の様子

 ピンクバルーンでは乳がんの啓発活動にも力をいれています。10月のピンクリボン月間には、神奈川県全域で展開される「ピンクリボンかながわ」(プロジェクションマッピング等)のPRに協力するなどしています。

 このほか、地域のサッカークラブや親子が集まるイベントにブース出展しての啓発活動も行っています。これは「ピンクリボンふじさわ」としての活動のお話ですが、乳がんの触診モデルを展示し、参加者に触ってもらう機会を設けています。お子さんは、しこりがある胸に触れると、「はっ」と表情が変わります。「これがママの胸にあるとどう思う?」と質問すると、「いやだ」と答えます。そして、お子さんは「パパと留守番しているから、ママはちゃんと検診に行ってね」とその場でママに伝えるんです。お子さんからママへの発信力は大きいですね。1年後、そのやりとりをしたママさんからこう言われました。「行きました。(検診を受診したことで)安心して生活できるっていいですね」と。

 乳がんが好発する年齢は45歳~65歳くらいといわれていますが、AYA世代(15歳~39歳)で乳がんが見つかる方もいらっしゃいます。がんに対する意識があまりない年代の方を含め、今後もがん検診の受診啓発活動を続けていきたいと思っています。

がん種を問わず、患者支援団体同士が連携した活動へ

「がん治療中でも辛くなく生活できるお助けポイント 安心でいられるための虎の巻」での様子
「がん治療中でも辛くなく生活できるお助けポイント
 安心でいられるための虎の巻」での様子

 2024年3月、食道がんの患者支援団体「食道がんサバイバーズシェアリングス」と、血液がんの患者支援団体「TeamCML@Japan」とともに、東京で合同イベントを初開催しました。がん種を問わず、がん治療中の体と心のつらさを軽減するためにケアについて専門医がレクチャーするというものでした。参加された方からは大変好評をいただきました。

 今後は、このようにがん種横断で、団体同士が協働で取り組んでいけるようになっていくと、運営側も新しい視点で企画ができたり、一方、参加される患者さんやご家族にも新たな発見があったりするのではないかと考えています。

 また、これまで湘南エリア中心に活動をしてきましたが、歌手活動と並行して会の活動を今後も積極的に行うために、東京都内にも拠点をつくることを計画中です。一緒にワークショップをしながら、おしゃべりを楽しんでいただく。日頃の思いを、堰を切ったように話していただく、そういう時間を増やせたらと思っています。

一般社団法人ピンクバルーン 外部リンク

がん種 全般
地域 主に神奈川県厚木市(がん検診の啓発活動は神奈川県全域)
連絡先 https://www.pinkballoon.jp/contact
活動内容 がん領域のピアサポート、神奈川県の「ピンクリボンライトアップ」を中心とした乳がん啓発活動、がん種や地域を越えての啓発活動、がんに罹患された方やご家族の支援など。偶数月に「がんサロン ラベンダーバルーン」(交流会)を開催。