「東京肝臓友の会」肝臓病の患者さんと医師を結び、「正しく」「新しい」情報を届ける

米澤敦子さん
日本肝臓病患者団体協議会 代表幹事NPO法人東京肝臓友の会 事務局長 米澤敦子さん

2018.2 取材・文 星野美穂

 肝臓病の患者さんを支援するNPO法人東京肝臓友の会。C型肝炎、B型肝炎、肝臓がん、難病の患者さんなど、支援する患者さんは多岐にわたります。患者さんに正しく新しい情報を届けるために、電話相談や医師による講演会の運営などさまざまな活動を行っています。全国の肝臓病患者さんを支援する団体が集まる日本肝臓病患者団体協議会の代表幹事を務めながら、NPO法人東京肝臓友の会の事務局長としても活動する米澤さんにお話をうかがいました。

少しでも不安なことがある人は電話相談を

 東京肝臓友の会は、設立から40年以上の歴史のある、肝臓病の患者さんを支援するNPO法人です。C型肝炎、B型肝炎、肝臓がんの患者さんや、難病に指定されている原発性胆汁性胆管炎(PBC)・自己免疫性肝炎(AIH)・原発性硬化性胆管炎(PSC)などの患者さんへの支援を行うことを目的としています。主に、電話相談(火~金曜日10~16時)や医師による講演会や相談会、疾患ごとの患者さんの交流会、最新の肝臓病情報を掲載した会報誌「東京 肝臓のひろば」の発行などを行っています。

 今は、多くの情報をインターネットで検索できるようになりましたが、正しい情報もあれば誤った情報もあります。私もC型肝炎の患者だった頃、インターネットの情報を見て不安になった経験がありました。インターネットの情報を見て不安になり、電話をしてくる患者さんも多くいらっしゃいます。私以外の相談員も、患者として治療を乗り越えてきた人たちなので、安心して電話してもらえればと思います。実際に電話してきた患者さんからは、「話せて良かった」「安心した」という声をいただいています。治療や薬に関する最新の情報もお伝えできるので、少しでも不安なことがある人は、ぜひ電話してほしいと思います。

難病PBC・AIH・PSCの患者会はここだけ

 定期的に開催している講演会では、専門医を招き、肝臓病の治療の現状やこれからの新しい薬の可能性などについてお話しいただいています。講演内容は、「東京 肝臓のひろば」に掲載しており、講演会に参加できなかった患者さんにも最新の情報をお届けしています。

 また、患者さんの交流会は、年に10回ほど実施しています。交流会は、疾患ごとに分かれており、それぞれの悩みを相談・共有することができます。とくに、難病であるPBC・AIH・PSCは、公式に活動している患者会は全国的に見ても他にありません。そのため、東京以外にも、全国から患者さんが参加しています。

患者さんが減る一方で、まだまだ支援が必要な患者さんも

 医療の進歩により肝臓病の患者さんが減っていることから、多いときは約4000人いた会員が、今では1500人ほどになりました。とくに、C型肝炎の新薬の登場でウイルスを体内から排除することが可能となり、C型肝炎が治るようになったことは大きいです。C型肝炎が治癒したことで、退会する会員が増えました。非常に喜ばしいことだと感じています。

 一方で、会員が減ったことで活動費となる会費も減っています。運営側の人材も、高齢化などでどんどん減っています。C型肝炎は治る病気となりましたが、B型肝炎やPBC・AIH・PSC、重篤な肝硬変、肝臓がんの患者さんなど、支援を必要としている患者さんはまだまだいます。そういった意味では、会として“過渡期”を迎えていると感じています。

C型肝炎潜在患者への啓発活動が新たな課題に

 また、C型肝炎は治る病気となりましたが、ウイルスに感染していることに気付いていない潜在患者さんも、まだいるといわれています。C型肝炎は、ウイルスに感染しただけでは症状はほとんど出ず、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんになっていく過程で気づくことも多い病気です。平成16年度の厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服緊急対策研究事業報告書によれば、C型肝炎の患者さんは約190~230万人とされ、そのうち治療を受けている患者さんは約37万人(平成20年患者調査より)ともいわれています。1992年以前に輸血の経験がある方などは、一度検査を受けてほしいと思います。このように、潜在患者さんへ向けた、ウイルス検査の必要性を伝える啓発活動も今後の課題です。

 日本の肝臓がんの原因の8割はウイルス感染によるもので、C型やB型の肝炎ウイルスの感染により、慢性肝炎になりさらに肝硬変、肝臓がんへと進行していくと考えられています。肝硬変、肝臓がんなど重症化する前に治療を開始することも重要で、そのためにはかかりつけ医と専門医との連携、いわゆる病診連携の促進も課題と考えています。

 肝臓病患者さんが減る一方で、まだまだ支援を必要とする患者さんたちもいます。これからも患者さんと医師を結び、正しい情報を伝える活動を続けていくことはもちろん、C型肝炎の潜在患者さんに対しての啓発活動も行っていきたいと考えています。

NPO法人 東京肝臓友の会 外部リンク

がん種
肝臓がん
地域
東京(一部、全国)
ラジオ
米澤さんが出演されている「大人のラヂオ」では肝臓病について専門医にお話しいただいています。 詳しくはコチラ
連絡先
TEL 03-5982-2150(火~金 10:00~16:00)
活動内容
C型肝炎、B型肝炎、肝臓がんの患者さんや、難病に指定されている原発性胆汁性胆管炎(PBC)・自己免疫性肝炎(AIH)・原発性硬化性胆管炎(PSC)などの患者さんへの支援を行うことを目的とし、医師による講演会や相談会、疾患ごとの患者さんの交流会、最新の肝臓病情報をお届けする会報誌「東京 肝臓のひろば」の発行などを行っています。
関連リンク
日本肝臓病患者団体協議会