「紡ぎ」告知1年未満の乳がん患者さんへ寄り添う

紡ぎ
乳がんセルフヘルプグループ 紡ぎ小林治香さん 青柳千晶さん 大田原りなさん

2018.4 取材・文 がん+編集部

 乳がん患者さんを支援するセルフヘルプグループ「紡ぎ」は、乳がん経験者のスタッフによって、患者さん同士が語り合う場「シェアルーム」の運営を行っています。現在は、「乳がんと告知されて1年未満の方へ」というテーマで活動しています。告知後間もない患者さんの不安をしっかりと受け止め、寄り添う活動についてお話をうかがいました。

乳がんと告知されて1年未満の患者さん同士が語り合う「シェアルーム」

 紡ぎは、乳がん患者さんを支援するセルフヘルプグループです。患者さん同士が集まり、思いを語り合う「シェアルーム」の運営を中心に、2017年から活動しています。「言葉を紡ぐ」、「心を紡ぐ」、「未来を紡ぐ」といった思いから、「紡ぎ」という名前にしました。現在は、まず「乳がんと告知されて1年未満の方へ」とテーマを絞って、シェアルームを運営しています。なぜ告知1年未満の患者さんのサポートから始めたかというと、自分たちが乳がんに関する情報を最も必要だと感じたのが、告知後間もないときだったからです。情報が必要だと感じただけでなく、乳がん経験者のお話を聞きたいとも感じていました。

 乳がん患者さんは告知された直後、これから行う治療に関する情報と不安な気持ちの渦に巻かれ、今まで経験したことのないような逆風の中を突き進むことになります。紡ぎという場は、患者さんが逆風の中を進む際に、気持ちと情報の整理をする場として気軽に立ち寄ることができ、相談できる友人の家のような感覚で利用していただければと思っています。次の治療に向けて歩き出す力を患者さん自身で見つけていただきたいです。再び患者さん自身の力で歩き出すことができたら、今まで通りの生活に戻り、新しい生活を紡いでもらいたいと思っています。「乳がん患者の未来への希望を紡ぐ」、紡ぎはそのような場を目指しています。

 運営は、スタッフ5名で行っています。全員が乳がん経験者で、それぞれブログやSNSなどを通じて知り合い、患者さんを支援したいという思いから活動を始めました。活動の動機は、スタッフによってさまざまです。乳がんの治療中に患者さんと気持ちを共有できたことで治療に前向きに取り組むことができたという経験が動機のスタッフもいれば、逆にそういった場を見つけられなかったという後悔から1人でも多くの患者さんに場を提供したいというスタッフもいます。他にも、外国人の患者さんへのサポート経験がきっかけで、日本人だけでなく外国人患者さんも含めた幅広い支援の必要性を感じているスタッフもいます。私たちは医療従事者ではないので、医学的なサポートはできません。しかし、乳がん経験者として、患者さんと一緒に治療に関する情報を整理することができますし、悩んでいることがあれば、近くで寄り添うことができます。このように、私たちだからできる支援を行うことを心がけています。

シェアルームに参加後は「一歩前に進めそう」という声も

 シェアルームでは、「相手の考えを否定しない」ということを大切に運営しています。私たちは、患者さんの話を聞き、「そうだね」と共感するように心がけています。告知後間もないときで、とても不安なときだからこそ、患者さんの話を聞いて共感し、寄り添うことが大切だと思います。また、そのような会話の中で参加した患者さんが自分の問題に向き合い、自ら自立する心を持っていただければと思っています。

 シェアルームには、毎回10~20名ほどの患者さんが参加します。スタッフが全員40代なこともあり、参加される患者さんも同世代の方が多いと思います。参加する理由は、「同じ病気の友達がほしかった」、「病気について知りたかった」など、さまざまです。スタッフ1人に対して患者さん5名ほどの体制で、お互いの思いを共有したり、情報を交換し合ったりしています。参加後のアンケートでは、「みんな同じことを悩んだり感じたりしていたと知り、一人ではないんだと感じた」、「一歩前に進めそう」といった声が寄せられています。

 告知を受けた直後は、乳がんへの恐怖や不安から、いっぱいいっぱいになってしまう患者さんも多いと思いますが、ぜひ一歩を踏み出して同じ病気と闘う患者さんと話して欲しいと思います。仕事の有無や住んでいる場所などによって、通える会は人それぞれだと思いますので、「紡ぎ」というセルフヘルプグループもあるということを少しでも多くの乳がん患者さんに知って欲しいです。

今後は、要望の多い「乳房の再建」に関する情報提供も

 シェアルームの運営を通じて感じているのは、告知1年未満の患者さんは、私たちが思っていた以上に自分の欲しい情報にたどり着けず困っているということです。私たちも、情報収集にはとても労力を使いました。とくに多く寄せられるのは、「乳房の再建に関する情報を知りたい」という意見です。そのため、今後は、乳房の再建をはじめ、病院選び、仕事復帰、家族との関わりなど、患者さんから要望の多いテーマに関するシェアルームも開催していきたいと考えています。

 また、活動を続けていくことで「告知1年未満」から卒業する患者さんもいます。今後は、そういった患者さんを対象にしたシェアルームも運営していきたいです。また、乳房の再建に関する情報、抗がん剤の副作用などで生じる脱毛などアピアランスに関する情報について、専門家による勉強会を行うことも検討しています。シェアルームの活動を基盤として、今後もさまざまな活動へ紡いでいきたいです。

乳がんセルフヘルプグループ 紡ぎ 外部リンク

がん種
乳がん
地域
東京都
シェアルーム
月に一度、主に飯田橋の東京ボランティア市民活動センターで開催。詳しくは公式ウェブサイトをご覧ください。    
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活動内容
紡ぎは、乳がん患者さんを支援するセルフヘルプグループです。現在は、「乳がんと告知されて1年未満の方へ」というテーマで、患者さん同士が語り合う場「シェアルーム」の運営を行っています。