「がん患者団体支援機構」がん体験者だからできる、患者さんに寄り添う活動

がん患者団体支援機構
NPO法人 がん患者団体支援機構副理事長/事務局長 山田陽子さん

2018.4 取材・文 大場真代

 がん患者団体支援機構は、「がん患者大集会」開催や、患者サロン・ピアサポーター養成講座の運営や、ネットテレビ「Canps Station」を通じて患者さんの声を発信するなど、さまざまな活動を通じて患者さん支援を行うNPO法人です。今回は、副理事長で事務局長の山田陽子さんに、活動について詳しくお話をうかがいました。

※ピアとは、同じ体験をした仲間という意味で、ピアサポーターはその活動をする人のことです。

がん患者さんが自分らしく生きるための環境の整備を

 がん患者団体支援機構は、2005年に行われた「第一回がん患者大集会」が開催された年に、この大集会の支持母体として設立しました。がん患者大集会とは、「変えよう日本のがん医療、手をつなごう患者と家族たち」をメインテーマに、全国のがん患者さん、家族が抱えている様々な声を集め、それに対しての要望を集約して、行政や医師会等へ提言をする集会です。毎年各地で開催し、2017年で13回を迎えました。

 がん患者団体支援機構には、現在、30ほどの患者団体が所属しています。全国の患者団体の方々とコミュニケーションを取り、がん患者さんと、患者団体とが問題を解決して、がんを患っても自分らしく生きていける環境の整備を目指して活動を行っています。そのために行っているのが、がんに関心を持つ人や団体に意見交換の場、提案、集約の場を作ること、がんの予防、検診、治療などの情報収集・調査・研究をすること、がんに関心を持つ人や団体への情報提供・相談・支援をすること、患者の立場から国や自治体、医療関係者へ提言をすることです。

患者サロンに来て「やっと、前向きになれた」という声も

 2005年に大集会を開催した後、2006年にがん対策基本法が制定されるなど、がん医療を取り巻く環境は大きく変化しました。現在、各都道府県のがん拠点病院には、相談支援センターとがん患者サロンの設置が義務付けられるようになっており、患者会が主催するサロンも各地で多く運営されています。私たちは、患者体験者や家族(ピア=仲間)による対面相談や電話相談を武蔵野赤十字病院と都立駒込病院、世田谷保健センター(電話相談のみ)で行っているほか、武蔵野赤十字病院、都立駒込病院、東京医科歯科大学医学部附属病院で、患者サロンの運営も行っています。患者サロンは、がん患者さんやそのご家族の交流の場です。「誰にも話せなかったことをここで話すことができた」と涙ながらに話される患者さんもいます。「がんだとわかって頭が真っ白になった」「先が見えないと感じた」といっていた患者さんも、患者サロンに来ることで、「やっと、前向きになれた」「気持ちが楽になった」といいます。同じがん患者である仲間と話すことで元気をもらったり、不安がやわらいだりするのだと思います。

 私自身も、2001年に乳がんを患いました。当時は、抗がん剤治療によって髪や眉が抜けてしまったことで外見の変化に戸惑ったり、眉の描き方が分からないと悩んだり、毎日不安な日々を過ごしていました。そんなときに、患者サロンで多くの仲間たちと出会います。同じがん患者さんと話すことで、「私は一人ではない」と気付き、そのことが治療を続けるうえで大きな励みになりました。この経験をきっかけに、自分と同じように悩む患者さんを支援したいという思いで患者会を立ち上げました。医療者や家族には話せないことでも、患者さん同士だから話せることも多いのだと感じています。

ピアサポーター養成講座の運営など多岐にわたる活動

 ピア相談や患者サロンを運営するうえで、ピアサポーターの存在は欠かせません。そのため、私たちは2013年からピアサポーター養成講座を開催しています。講座では、がん体験者に対して、患者さんやその家族を支援するための、がんの基礎知識や相談を受ける際に大切なことなどをお伝えしています。

 ピアサポーターは、患者さんのお話を聞きながら悩みを整理するお手伝いをすることが大切な役割だと思います。お話をして、患者さんが笑顔で帰ってくれたときが1番やりがいを感じますね。また、ピアサポート活動を通じて、自身の辛かった経験を患者さんと共有することができるため、サポーター自身も前向きになるきっかけになると感じています。「自身の体験が誰かのためになる」ということが、活動の原動力にもつながっているのだと思います。

 その他にも、がん患者さんへの情報の共有を目的とした、ネットテレビ「Canps Station」を配信しています。毎回、患者会や個人の活動の紹介など、がんを取り巻くさまざまな情報を発信しています。これまでに40回ほど放送しており、がん患者さんの声を発信しています。パーソナリティを務めているムーランさんは、20年ほど前に鼻中隔がんという鼻の奥のがんを患い、大きな手術も経験されています。また、歌手でもあるムーランさんは、乳がんのリハビリや自己検診のための「のの字の歌」体操を作り、発信しています。

 がんだと知ったとき、治療のことやこれからの生活のことなど、きっと不安な気持ちになると思います。そんなときは、勇気を出して相談に来て欲しいと思います。今後も、ピアサポーターの養成や患者サロンの運営などさまざまな活動を通じて、1人でも多くの患者さんが笑顔になるお手伝いをしていきます。

NPO法人 がん患者団体支援機構 外部リンク

がん種
全般
地域
全国
患者サロン
「都立駒込病院」毎月第2金曜日 13:00~15:00
「武蔵野赤十字病院」毎月第3水曜日 13:00~15:00
「東京医科歯科大学医学部附属病院」毎月第4火曜日 13:30~15:30
連絡先
TEL  03-5787-6411
Mail  info@canps.jp
活動内容
がん患者団体支援機構は、「がん患者大集会」開催や、患者サロン・ピアサポーター養成講座の運営や、ネットテレビ「Canps Station」を通じて患者さんの声を発信するなど、さまざまな活動を通じて患者さん支援を行うNPO法人です。