「ブーケ」若い女性オストメイトのライフイベントにあわせた支援
2018.10 取材・文 大場真代
若い女性オストメイト(ストーマ(人工肛門・人工膀胱)をつくった患者さん)が恋愛や結婚、妊娠・出産、社会生活などの悩みを相談しあえる場所を提供するオストメイトの会「ブーケ」。対象年齢は、現役世代を含む10~60代となっていますが、とくに若い世代を中心に、年代ごとにそれぞれのオストメイトが必要とする支援を行っています。ご自身も23歳のときに直腸がんによりストーマをつくった、会長の工藤裕美子さんにお話をうかがいました。
恋愛や結婚など、若い世代の女性ならではの悩みを相談できる場所を
ストーマとは、がんや炎症性腸疾患などの病気などによって、おなかにつくられた便や尿の出口のことです。このストーマを持つ人たちのことをオストメイトといい、身体障害者手帳を持っている人だけで全国に20万人、一時的なストーマの人もあわせるとそれ以上になります。ブーケは、若い女性のオストメイト同士が、気軽に悩みを相談したり、話し合ったりできる場がほしいという思いから立ち上げました。
私自身、23歳のときに直腸がんによってストーマをつくりました。ストーマをつくると、専用の袋(パウチ)をつけて排泄物を溜めておき、トイレで処理します。最初の頃は、装具が剥がれてしまったり、排泄物が漏れてしまったりという失敗が何度もありました。このように、ストーマのある生活に戸惑う日々を送っていた頃、私はオストメイトを支援する兵庫県内のオストメイトの会に入りました。この会では、「ストーマがあっても大丈夫、何でもできる」という勇気をもらい、今でも感謝しています。ただ、会員は平均年齢が70代と高齢で、男性の方が多く、ストーマに関する悩みや問題は解決できても、恋愛や結婚といった20代の女性ならではの悩みを相談できる機会はほとんどありませんでした。
それから10年。「もっと同世代のオストメイトと話がしたい」と思っていたとき、その会で女性会員だけの集まりがあり、大阪の支部から来ていた同世代の女性オストメイトと出会うことができました。彼女の他にも同世代のオストメイトがいるとのことで、話をするうちに、恋愛や結婚や出産、仕事のことなど、みんな自分と同じような悩みを持っていることがわかりました。このことがきっかけで1999年にスタートさせたのが、ブーケです。
会員からは「ひとりじゃないと思えた」の声
ブーケは現在、10~60代までの女性オストメイトが約400人登録しています。座談会・食事会などのイベント運営や、会報などを通じて情報を届ける活動を行っています。若い女性オストメイトの多くが抱える悩みは、やはり結婚や妊娠・出産、仕事のこと。「排泄の障害は汚いと思われるのではないか?」と心配になり、パートナーや周囲の人に自分がオストメイトであることを伝えるのが難しいという人も少なくありません。でも、オストメイトならではの悩みは、1人で抱えないでほしいと思っています。私自身、ストーマをつくってから離婚、再婚、そして転職など、さまざまな経験をしてきました。ブーケには私以外にもさまざまなことを経験している会員がたくさんいて、その経験を会報等で伝えることにより、たくさんの会員から「ひとりじゃないと思えた」「勇気をもらえた」という声をいただいています。
また、ブーケの活動趣旨に賛同してくださり、サポートをしてくださっている皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)の方もたくさんいらっしゃいます。うち、2名は運営スタッフとして協力をしてくれています。そのため、オストメイトだけでは解決できない悩みに対しても解決の手助けを行うことができます。
この他にも、2年に1回、会員対象のアンケートを実施し、若い女性オストメイトの困っていることや悩み、不安などを調査して冊子にまとめ、会員にフィードバックするとともに、医療従事者や装具メーカー等に配布し、オストメイトの悩みや問題を知ってもらうために活用しています。
一般向けに「オストメイトを知ってもらおうプロジェクト」を開始
2014年からは、「オストメイトを知ってもらおうプロジェクト」を始動しました。オストメイトは、外見だけでは一般の人にはわかりません。最近ではオストメイト対応のトイレも増えていますが、使用後トイレから出てきたときに「あなたが使うところではない」と注意されたり、トイレの使用時間が長くなってしまうことを指摘されたりと、周囲の誤解によって辛い思いをすることがあります。その他にも、温泉や公衆浴場の利用を拒否されるということもあります。
見た目だけではオストメイトだとわからないからこそ、もっと理解が進んでほしいという思いで、オストメイトマークのストラップや、冊子「オストメイトってなに?」の作成、オストメイトを知ってもらうためのイベントなど、一般の方への認知度向上のための活動も行っています。
私もストーマをつくったばかりの頃は、「今までの服は着られるのか?」「仕事に復帰はできるのか?」「妊娠・出産はできるのか?」など、さまざまな不安を抱える日々を過ごしていました。若い女性のオストメイトがいるということは、同じオストメイトでも知っている人は多くなく、一般の方であればなおのことです。そのため、周囲の理解を得ることは簡単ではないと感じています。
最近は会員数が増えたことで、年代間や病気ごとのギャップも生まれてきており、10~20代はコスモス会員、30~40代はブーケ会員、50代はカトレア会員、60代はカトレアプレミアム会員と年代分けをしています。それぞれの年代でのイベントや、1つのイベントのなかでグループ分けをして年齢の近い人同士が交流しやすい環境を整える工夫もしています。また、疾患ごとのギャップについても同様のことを心がけています。
これからも、より近い年代のオストメイト同士の交流の場をつくることで、少しでも悩みを解消し、皆さんが元気になるお手伝いができればと考えています。今後も、若い女性オストメイトたちが自信を持って楽しい毎日が送れるよう、お手伝いしていけるとうれしいです。