「1・3・5の会」全てのがん患者さんへ、節目にあわせた支援
2018.10 取材・文 大場真代
1・3・5の会は、がん種を問わず、全てのがん患者さんへの支援を目的とした患者会です。舌がんの経験から「口腔・咽頭がん患者会」も運営されている会長の三木祥男さんに、活動についてうかがいました。
告知後1・3・5年の節目を一緒に乗り越えるための支援
私は、2005年から頭頸部がん患者さんを支援する口腔・咽頭がん患者会を運営しています。頭頸部がんは、手術後にさまざまな後遺症が残るため、先輩の患者さんがどのように後遺症を乗り越えて生活をしているかなどを知る機会が大切だと感じています。そのため、患者さんの体験談を共有することに重点を置いて活動してきました。
口腔・咽頭がん患者会を運営していくなかで、頭頸部がん患者さんだけでなく、さまざまながん種の患者さんに出会いました。頭頸部がんは、後遺症は残るものの比較的生存率は高いほうです。しかし、膵臓がんなどは生存率が低く、私たちとは異なる辛さや不安を抱えている患者さんが多くいます。多くのがん患者さんのお話を聞くなかで、私は「がん種が違っても、がんと向き合うために必要な節目は同じ」ということに気付きました。このことをきっかけに、がん種を問わず、全てのがん患者さんを対象に、節目にあわせた支援を行うために立ち上げたのが「1・3・5の会」です。
1・3・5の会の名前の由来は、がん患さんの節目の年を意味しています。1は、告知後の1年のこと。ここが最も辛い時期で、まずこれを乗り越えようという意味です。3は、告知から3年経ち、精神的に安定してくる時期を指します。告知後で苦しんでいる患者さんにも、まずは、3年まで頑張ろうという意味も込めています。そして5は、5年生存率の5。5年経てば一安心ですが、油断は大敵という意味です。がん患者さんには、1・3・5の節目を意識してほしいと考えています。
がん患者が一番辛いと感じる「告知後から治療前まで」の時期のケアを
現在、1・3・5の会の会員は70名程度で、乳がんや肺がん、食道がんなどのさまざまながん種の患者さんが参加しています。同じがん種の患者さん同士でグループをつくり、治療や生活のことなど、さまざまなことを語り合う交流会と、医師や看護師などの専門家の講演などを行う勉強会の運営を中心に行っています。
2015年に、全国17のがん患者会を対象に「がん患者が一番辛いと思った時期」についてアンケート調査を行いました。その結果、最も辛かった時期は、「告知後から治療前まで」という結果に。また、この一番辛い時期に「死にたいと思った」人が22%いたことが明らかになりました。現在、がん患者さんの心のケアは、この最も苦しい治療前の時期にしっかりとできていないと感じています。私たちは、がん患者さんが最も辛いと感じている時期の支援を大切にしたいと考えており、早い段階で心のケアを行えるよう治療前のがん患者さんでも入会できる仕組みにしています。
スピリチュアルな苦痛をケアする役割を担うために
がん患者さんには、4つの苦悩があると言われています。1つ目は痛みや日常動作の困難などの「身体的な苦痛」、2つ目は不安や抑うつなどの「精神的な苦痛」、3つ目は就労の問題や経済的な問題などによる「社会的苦痛」、そして4つ目が、生きる意味を見失う、再発への不安を抱えるなどの「スピリチュアルな苦痛」です。このスピリチュアルな苦痛に対しては、手厚いケアができていないのが現状だと感じています。
私は、このスピリチュアルな苦痛をケアするのが、患者会の役割だと考えています。患者会は、先輩のがん患者さんの体験に触れられる大切な場所です。先輩のがん患者さんが前向きに生きる姿は、後輩のがん患者さんにとって生きる力になると思います。これからも、全てのがん患者さんへ、節目にあわせた支援を続けていきます。
がん種 | 全般 |
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地域 | 大阪 |
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活動内容 | 1・3・5の会は、全てのがん患者さんへの支援を目的とした患者会です。定期的な交流会、勉強会を開催しています。 |