前立腺がんの基礎知識

 前立腺がんとは、どんな病気なのか。前立腺の役割から、初期症状、生存率など、治療を始める前に知っておきたい基礎知識を紹介します。

前立腺がんとは

 前立腺は、膀胱の下で尿道を取り囲むように存在する男性特有の臓器です。ちょうど栗の実のような形と大きさで2つあり、精液に含まれる前立腺液をつくっています。前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な増殖機能を失って、無秩序に増殖することがきっかけで発生します。前立腺は、尿道のまわりにある内腺とその外側の外腺にわかれており、前立腺がんは、外腺に多く発生します。前立腺がんの転移はリンパ節や骨に多く見られますが、肺や肝臓にも転移することがあります。

前立腺がんの罹患率と生存率

 国立がん研究センターのがん統計2023年によると、2019年に新たに前立腺がんと診断された人は9万4,748人、男性が生涯のうちに前立腺がんに罹患するリスクは16.7%でした。60代から徐々に増えはじめ、70代後半をピークにその後は減少傾向にありました。

 2013年~2014年にがんと診断された人全体での5年相対生存率(がん診療連携拠点病院等)は、67.5%でした。前立腺がんの5年相対生存率は98.4%で、全てのがんを含めた割合より高くなっています。

 前立腺がんの進行度による5年相対生存率(2013~2014年診断)は、以下の通りです。

  • ステージ1:100%
  • ステージ2:100%
  • ステージ3:100%
  • ステージ4:63.4%

 前立腺がんの進行度による10年相対生存率(2009年診断)は、以下の通りです。

  • ステージ1:100%
  • ステージ2:100%
  • ステージ3:100%
  • ステージ4:47.6%

※各がんのがん罹患率、生存率の最新情報は、がん情報サービス「がんの統計」をご参照ください。

前立腺がんの症状

 前立腺がんの多くは早期には自覚症状がありませんが、進行すると「尿がでにくい」「排尿回数が増える」などが起こり、さらに進行すると血尿や腰痛など、骨転移による痛みが起こることがあります。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診して検査を受けることが大切です。

前立腺がんのリスク要因と予防

 前立腺がんのリスク要因となる可能性が考えられているのは、家族歴と高年齢です。喫煙や受動喫煙、飲酒、肥満などはデータ不十分とされていますが、日本人対象の科学的根拠に基づいた「日本人のためのがん予防法」では、禁煙、節度ある飲酒、バランスのいい食事、身体活動、適正体形、感染予防ががんの予防に効果的と示されています。

参考文献:日本泌尿器学会編.前立腺癌診療ガイドライン2023年.メディカルレビュー社
国立がん研究センターがん情報サービス がん登録・統計

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