納得して治療を受けるために大切なのは医師との信頼関係

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 患者さんが、納得して治療を受けることは当然の権利です。同時に、医師は患者さんに対して治療効果と副作用について十分に説明する義務があります。そのため、治療法の決定には、患者さんと医師の間にしっかりと信頼関係が築かれていることが大切です。

 例えば、アメリカは多民族国家であり、契約社会だといわれています。そのため、アメリカでは医療裁判が頻繁に起こっており、日本と比べても、とても件数が多いそうです。医師は、患者さんに治療について理解してもらったうえで、患者さんの病気を治すことを1番に考えて治療をおこないますが、それは医療事故や訴訟と隣り合わせだといえるかもしれません。医師からの説明を聞いて、内容の全てを理解できる患者さんは多くありません。お話をする中で、患者さんに「この医師になら治療を任せられる」と思ってもらえるような、信頼関係を築けるように医師は心がけています。患者さんにも、そのように考えてほしいなと思います。そうでないと、アメリカのような契約ありきの診療となってしまいますよね。信頼関係は、1人の努力で築けるものではありません。医師と患者さんが協力することで信頼が生まれ、患者さんにとって納得できる治療を受けられると思います。

 そんなことも考えつつ、私は目の前にいる患者さんに対して分かりやすい説明を心がけ、最善の治療を提供しています。また、患者さんが疑問に思うことに対しては、可能な限りしっかりと答えることも心がけています。そのうえで皆さんにお伝えしたいことは、「ノーリスクな治療法はない」ということです。言い換えれば、どの治療にも副作用の可能性があるということです。

 しかし、副作用を完全に理解することは、とても難しいことです。例えば、ある治療の副作用を理解するためには、医学部で6年学んで、その後10年ほど経験を積んで、やっと分かるかもしれません。そのように考えてみると、患者さんが副作用について理解することがいかに難しいことか、お分かりいただけると思います。だからこそ、自分が信頼できると思える医師のもとで、納得したうえで治療を受けることが大切なのかもしれません。

大船中央病院放射線治療センター長 武田篤也(たけだあつや)先生

武田篤也先生

1994年 慶應義塾大学 医学部卒業
1994~2004年 慶應義塾大学、防衛医科大学、都立広尾病院勤務
2005年 大船中央病院放射線治療センターを開設、現在センター長
慶應義塾大学客員講師、東海大学客員教授、東京医科歯科大学非常勤講師を兼務。肺がん、肝臓がんの体幹部定位放射線治療患者2000例を治療。 70以上の英文論文、2016年に専門書「The SBRT book」、2018年に「世界一やさしいがん治療」を刊行。