胃がんの生活と再発

胃がんの初期治療後の経過観察と生活、再発したときの治療を紹介します。

初期治療後の経過観察と検査

初期治療後、治療を継続して受ける場合は、治療に応じて通院が必要です。初期治療後、病状が安定してきたら、定期的な検査を受けながら経過観察となります。定期的な検査と経過観察は、外科的手術、内視鏡治療、化学療法など、どのような治療を受けたかにより異なります。

手術後の経過観察と検査

胃がんの手術後、胃管(口または鼻から胃に挿入する細い管)を抜く、水分摂取や食事を開始する、尿道留置カテーテルを抜くなどが順に行われます。退院までの目安は8日~14日です(表1参照)。

胃がんの手術後の経過観察は5年が原則です。遠隔転移、残った胃にできる局所再発、胃がんとは別にできるがんを早期に発見するために、腫瘍マーカー、CT検査、内視鏡検査が行われます。早期胃がんと進行胃がんとでは、術後のフォローアップが多少異なります(表2、3参照)。

表1:胃がん手術後のスケジュール

胃管抜去術後1日までに
水分開始術後1日目以降
食事開始術後2~4日目より固形食を開始
予防的抗生剤投与術後当日のみ
硬膜外チューブ抜去術後3日目までに
尿道留置カテーテル抜去術後3日目までに
補液術後5~7日まで
ドレーン抜去術後5日までに
退院日術後8~14日目

出典:胃癌治療ガイドライン 医師用 2018年1月改訂 第5版より作成

表2:ステージ1に対する完全切除後の経過観察

術後経過年月問診、診察、PS、体重検査(末梢血、生化学、腫瘍マーカー)CTと(もしくは)超音波検査内視鏡検査
1か月  
6か月 
1年
1年6か月  
2年 
2年6か月  
3年
4年 
5年

出典:胃癌治療ガイドライン 医師用 2018年1月改訂 第5版より作成

表3:ステージ2~3に対する完全切除後の経過観察

術後経過年月問診、診察、PS、体重検査(末梢血、生化学、腫瘍マーカー)CTと(もしくは)超音波検査内視鏡検査補助化学療法
1か月  6か月~1年
3か月  
6か月 
9か月  
1年
1年3か月   
1年6か月  
1年9か月   
2年  
2年6か月  
3年 
3年6か月   
4年  
4年6か月   
5年 

出典:胃癌治療ガイドライン 医師用 2018年1月改訂 第5版より作成

内視鏡治療後の経過観察と検査

内視鏡的切除後の検査と経過観察は、根治性の評価(内視鏡的切除根治度)、A、B、Cの3段階で異なります。CはさらにC-1とC-2の2つに分類されます。

内視鏡的根治度A

内視鏡的根治度Aの場合、年に1~2回の内視鏡検査による経過観察が望ましいとされています。

内視鏡的根治度Aの条件

条件1条件2
腫瘍切除一括切除一括切除
潰瘍なしあり
腫瘍径問わず3cm以下
組織分化型がん優位分化型がん優位
深達度T1aT1a
切除断面水平・垂直方向とも陰性水平・垂直方向とも陰性
リンパ管侵襲陰性陰性
静脈侵襲陰性陰性

出典:胃癌治療ガイドライン 医師用 2018年1月改訂 第5版より作成

内視鏡的根治度B

内視鏡的根治度Bの場合、年に1~2回の内視鏡検査による経過観察に加え、転移の有無を調べるため腹部超音波検査、CT検査などを行うことが望ましいとされています。

内視鏡的根治度Bの条件

条件1条件2
腫瘍切除一括切除右記条件のいずれか一括切除
潰瘍なし
腫瘍径2cm以下3cm以下
組織未分化型がん優位分化型がん優位
深達度T1aT1b
切除断面上記条件のいずれか、かつ右記条件すべて水平・垂直方向とも陰性
リンパ管侵襲陰性
静脈侵襲陰性

出典:胃癌治療ガイドライン 医師用 2018年1月改訂 第5版より作成

内視鏡的根治度C

内視鏡的根治度C-1の場合、転移の危険性は低いですが、十分な説明が行われ患者さんの同意が得られれば、再ESD(高周波で病変周囲の粘膜を切開し、粘膜下層を剥離して切除する内視鏡的切除法)、追加外科手術、切除時の焼灼効果(焼くことで止血すること)に期待した経過観察、焼灼法のいずれかが選択されます。

  • 「分化型で深達度T1a、潰瘍があり腫瘍径が3cm以下」
  • 「分化型で深達度T1b、腫瘍径3cm以下」

のいずれかの場合で、内視鏡で取り残した腫瘍の大きさを確認し、ESD標本のがんの大きさとの合計が30mmを超える場合は、原則外科手術が行われます。また、粘膜下層の浸潤部で分割切除になった場合と、切除した断端にがん細胞が認められた場合も外科手術が行われます。

内視鏡的根治度C-2の場合、原則外科手術が追加で行われます。

内視鏡的根治度Cの条件

内視鏡的根治度C-1
分化型がんの一括切除、側方断端または分割切除のみが内視鏡的根治度A、Bの基準外
内視鏡的根治度C-2
内視鏡的根治度A、B、C-1のいずれにも当てはまらない

出典:胃癌治療ガイドライン 医師用 2018年1月改訂 第5版より作成

治療後(中)の日常生活の注意点

胃がんの治療では、手術、内視鏡治療、薬物療法(化学療法)が行われますが、それぞれの治療後や治療中にいくつか注意をすることで、日常生活をより快適に過ごせるようになります。

外科手術後の日常生活

胃がんの手術で、胃の一部または全部を切除した場合、消化器系にさまざまな影響があるため、少しずつよく噛んでゆっくり食べることが大切です。また、胃を切除するとカルシウムと鉄分の吸収が低下します。そのためカルシウムを多く含む食品と鉄分を多く含む食品をとるように心がけましょう。カルシウムが吸収されるためには、ビタミンDの摂取と日光にあたることも重要です。鉄分の吸収を助けるビタミンCも積極的にとるようにしましょう。

胃を全摘した場合、直接小腸へ食べたものが流れるため、めまい、動悸、発汗、頭痛、手指の震えなどが起こる「ダンピング症候群」となることがあります。ダンピング症候群の対処法は、ゆっくりよく噛み、食べ過ぎに注意することです。1回に食べる量を控えめにして、食事の回数を増やすなど工夫しましょう。消化や吸収の早い糖質やでんぷんの少ない食事にする、食べたものが腸にすぐに移動しないように食事中の水分摂取を避ける、なども大切です。また、腸の働きが悪いと、食物の逆流による逆流性食道炎や下痢も起こりやすくなります。逆流性食道炎の症状を悪化させないためには、生活改善が必要です。食べ過ぎ、多量のアルコール摂取、コーヒーや脂肪の多い食事を避けるようにしましょう。また、睡眠時は上体を少し高くして寝る、腹部を圧迫しないように注意する、なども大切です。

胃を全摘した場合、ビタミンB12の吸収障害が起こります。手術後6年くらいで貧血が起こることが多いため、気になる症状があれば通院時に医師に伝えましょう。こうした貧血に対し、ビタミンB12の注射による補給が行われる場合があります。

食道側の胃部分(噴門側)を切除した場合、食物が逆流しやすくなるため、逆流性食道炎や胸やけなどの症状が起こりやすくなります。

十二指腸側の胃部分(幽門側)を切除した場合も、小腸へ食物が流れやすくなるためダンピング症候群が起こることがあります。幽門部を温存して胃を切除した場合は、手術直後は幽門の働きが回復していないため、食物の流れが悪くなり満腹感や胃もたれなどの症状が起こりやすくなります。

内視鏡治療後の日常生活

胃の機能を損なうほど大きく切除しない内視鏡治療では、体力の回復も早く食事も治療前とかわらずとれます。過度の飲酒、暴飲暴食などは控え、激しい運動も1~2か月は控えましょう。

化学療法(薬物療法)中の日常生活

化学療法(薬物療法)を受ける前に、どんな薬を使うのか、その薬の副作用はどのようなものなのかを事前に医師や薬剤師から聞き、十分に理解することが大切です。どんな副作用がどの程度起こるのかを知ることで、副作用が起きた時も慌てずに対処することができます。通院で行われる外来化学療法は、仕事や家事など普通に日常生活を続けながら受けることができますが、この場合も上司や同僚、家族と情報を共有しておくことで、1人で頑張りすぎず周囲のサポートを得ることにつながります。

再発・転移胃がんの治療

胃がんが再発する場合、多くは5年以内に起こります。切除手術で残した残胃で起こる「局所再発」と、初期治療時にすでに目には見えなかった微少ながんが、別の場所に転移して大きくなった「転移がん」を含めて「再発」といいます。

再発や転移した胃がんの治療は、一般的に切除不能の進行胃がんと同様に、全身状態、主要臓器機能、重篤な併存疾患などの条件を満たしていれば、化学療法が検討されます。

痛みが強いときは、生活の質(QOL)を保つための痛み止めや、痛みの原因となっているがんに対して放射線治療が行われます。

再発胃がんの化学療法

再発胃がんで化学療法の対象となるのは、全身状態(Performance Status:PS パフォーマンスステータス)が0~2で、局所進行、または遠隔リンパ節や多臓器への遠隔転移がある場合です。

化学療法の実施基準は、以下の条件が参考にされます。

  • 病理組織診断が確認されている
  • PS 0~2
  • 主要臓器機能が保たれている
  • 重篤な併存疾患がない
  • 患者さん本人の同意

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

再発胃がんの一次治療

切除不能進行・再発胃がんの一次治療は、フッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤を組み合わせた併用療法から選択されます。胃がんには、HER2というタンパク質ががんの増殖に関わっているタイプ(HER2陽性)があります。HER2陽性の場合、このHER2を標的とした分子標的薬トラスツズマブ(製品名:ハーセプチン)が使われます。そのため、化学療法を行う前に、HER2が陽性か陰性かを判断する検査が行われます。そのうえで、一次療法のレジメンが選択されます。レジメンとは、がん治療で、投与する薬剤の種類や量、期間、手順などを時系列で示した計画のことです。HER2陽性の場合は、フッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤の併用療法にトラスツズマブ(製品名:ハーセプチン)が追加されます。

術後補助化学療法中、または、治療終了後6か月以内の早期に再発した患者さんに対する標準治療は確立されていませんが、補助化学療法で使用された薬剤は使用されないことが推奨されています。

胃癌治療ガイドライン第5版では、レジメンが「推奨されるレジメン」と「条件付きで推奨されるレジメン」の2つに分けられていますが、ここに記載されていないレジメンは「推奨しない」ものではなく、日常診療では、ガイドラインに記載されていないレジメンが妥当な場合もあるとされています。

「推奨されるレジメン」は、臨床試験の適格基準を満たす全身状態が良好な患者さんを対象として以下の3つの条件のいずれかを満たすものです。

  • 第3相比較試験で、全生存期間における優越性または非劣性が検証されるなど、臨床的有用性が確かである
  • 特定の患者グループに対する複数の第2相試験によって再現性のある有効性が示されるなど、臨床的有用性が確かだと考えられる
  • 複数の第3相比較試験で、対照グループに用いられるなど、標準治療の1つであると考えられる

「条件付きで推奨されるレジメン」は、以下の2つのいずれかの条件を満たすものです。

  • 「推奨されるレジメン」の使用が適切でない理由が想定可能で、その理由となる状況での臨床的有用性があると考えられる
  • 明らかなエビデンスはないが、日常診療で広く用いられている、または、他の臨床試験結果からの考察などを根拠として臨床的有用性があると考えられる

推奨される治療薬の組み合わせは、以下の通りです。

一次治療

HER2陰性
フッ化ピリミジン系薬剤プラチナ系薬剤
S-1シスプラチン
カペシタビンシスプラチン
S-1オキサリプラチン
カペシタビンオキサリプラチン
FOLFOX(5-FU+レボホリナート+オキサリプラチン)
HER2陽性
フッ化ピリミジン系薬剤+プラチナ系薬剤+抗HER2抗体薬
S-1シスプラチントラスツズマブ
カペシタビンシスプラチントラスツズマブ

出典:胃癌治療ガイドライン 医師用 2018年1月改訂 第5版より作成

二次治療
・パクリタキセル毎週投与+ラムシルマブ

三次治療
・ニボルマブ
・イリノテカン

条件付きで推奨される治療薬の組み合わせは、以下の通りです。

一次治療

HER2陰性HER2陽性
5-FU+シスプラチン5-FU+シスプラチン+トラスツズマブ
5-FU+レボホリナートカペシタビン+オキサリプラチン+トラスツズマブ
5-FU+レボホリナート+パクリタキセルS-1+オキサリプラチン+トラスツズマブ
S-1
S-1+ドセタキセル

二次治療以降

HER2陰性HER2陽性
ドセタキセル一次治療でトラスツズマブの使用歴がない場合は、HER2陽性の治療薬と組み合わせを考慮
イリノテカン
ナブパクリタキセル毎週投与
ナブパクリタキセル毎週投与
+ラムシルマブ
術後補助化学療法中および早期に再発した場合、補助化学療法で使用した同じ薬剤を使用しないこと
パクリタキセル毎週投与
ラムシルマブ

出典:胃癌治療ガイドライン 医師用 2018年1月改訂 第5版より作成

参考文献:日本胃癌学会. ”胃癌治療ガイドライン 医師用 2018年1月改訂 第5版”.金原出版,2018.

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