胃がんの検査・診断
胃がんの疑いが…といわれたら、どんな検査を受け診断がされるのかを解説します。
胃がん検診から診断、治療方針決定までの流れ

胃がんの疑いがあるときの検査
胃がん検診や気になる症状があり医療機関を受診して検査を受けたときに、胃がんの疑いがある場合、血液検査や内視鏡検査などの精密検査を行ないます。
血液検査
血液検査では、胃がんの腫瘍マーカーであるCEAやCA19-9を調べます。早期の胃がんでは正常値の可能性も高く、必ず腫瘍マーカーの値が上昇するとは限りません。逆に良性腫瘍の場合でも、数値が上昇することがあるため、血液検査だけで、胃がんの確定診断は行いません。
内視鏡検査
胃内視鏡検査は、胃がん検診でも行われることが多くなりましたが、胃X線検査(バリウム検査)でがんが疑われたとき、直接胃の内部を観察し、病変の場所や範囲(広がり)、深達度(深さ)を調べます。病変が確認できたら、胃がんの確定診断するための病理診断を行うために、組織の一部を採取する生検を行います。
胃がんと確定するための検査
胃がんと確定診断するために、生検で採取した組織を調べる病理検査を行ないます。病理検査では、がん細胞の有無や種類などを調べます。病理検査では、胃生検組織診断分類(Group分類:グループ分類)により、GroupX~Group5までの6段階評価を行い、Group5と評価された場合、胃がんと確定診断されます。この胃生検組織診断分類は、ステージ(病期)分類のようにがんの進行度を表すのではなく、がんかどうかを評価するための分類です。
胃生検組織診断分類(Group分類:グループ分類)
GroupX | 生検組織診断ができない | 再生検 |
---|---|---|
Group1 | 正常組織、非腫瘍性の病変 | 必要に応じて経過観察 |
Group2 | 腫瘍(腺腫、がん)か非腫瘍性か判断が困難な病変 | 再検査や経過観察 |
Group3 | 腺腫 | 経過観察や必要時は内視鏡治療(EMR、ESDなど)を行う |
Group4 | 腫瘍と判定される病変の中でがんが疑われる病変 | 再検査や内視鏡治療(EMR、ESDなど)を行い確定診断を試みる |
Group5 | がん | 胃がんと確定診断され治療法を検討する |
日本胃癌学会編「胃癌治療ガイドライン2014年版」より作成
胃がんの進行度を確認する検査
胃がんと確定診断されたら、病変の範囲(広がり)、深達度(深さ)、周囲のリンパ節への転移、多臓器への転移、腹水の有無、腹膜播種などを調べるために、精密な内視鏡検査、腹部超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査などを行います。
CT検査
CT検査は、他臓器へ遠隔転移やリンパ節への転移、胃の周囲への浸潤などを調べます。検査では、造影剤をのみ検査機器に寝て行われます。X線で体の中を輪切りに撮影します。
超音波(エコー)検査
胃がんの超音波検査では、主にリンパ節や肝臓への転移、腹水の有無などを確認します。通常体の外側から行いますが、胃の内部から行う超音波内視鏡検査(EUS)では、より精密な情報が得られます。先端に超音波(エコー)を送受信する装置を取り付けた内視鏡で行われ、粘膜上皮の病変だけではなく、胃壁や胃周辺の臓器への浸潤、リンパ節への転移などを調べることができます。
MRI検査
磁気を使った画像診断検査で、がんの広がりを調べます。肝臓への転移を調べる検査として行われることがあります。
注腸検査
大腸内にバリウムと空気を注入してX線撮影し、大腸への浸潤や腹膜播種がないかを調べるときに行われることがあります。
胃がんの確定診断とステージ分類
胃がんの進行度は、がんの深達度(T因子:胃壁の内側から外側に深く進展している度合い)、リンパ節への転移(N因子)、遠隔臓器への転移(M因子)の有無の3つの因子を総合的に判断して決まります。
治療前に行った検査の結果をもとにした「臨床分類」は、予想したステージ分類です。手術後に摘出した病変の組織を調べる病理所見による診断は「病理分類」と言われます。そのため、臨床分類では、ステージIだった人も、手術でリンパ節への転移がみつかたりすることでステージIIになることもありますし、その逆もあります。
胃がん深達度(T因子)
Tis | 浸潤のない粘膜内病変 |
T1a | 粘膜内/粘膜筋板浸潤 |
T1b1 | 粘膜下層(粘膜筋板下端から > 0.5mm以内) |
T1b2 | 粘膜下層(0.5mmを超える) |
T2 | 固有筋層浸潤 |
T3 | 漿膜下層浸潤 |
T4a | 漿膜浸潤(腫瘍が漿膜に接している) |
T4b | 周囲臓器への浸潤 |
リンパ節転移(N因子)
N1 | 1~2個 |
N2 | 3~6個 |
N3a | 7~15個 |
N3b | 16個以上 |
胃がんの進行度分類
臨床分類(cTNM、cStage:画像診断、審査腹腔鏡または開腹所見による総合診断)
N0 | N(+) | |
---|---|---|
T1(M、SM)/T2(MP) | I | IIA |
T3(SS)/T4a(SE) | IIB | III |
TSb(SI) | IVA | |
Anyt、M1 | IVB |
病理分類(pTNM、pStage:胃切除後の病理所見による診断
N0 | N1 | N2 | N3a | N3b | M1 | |
---|---|---|---|---|---|---|
T1a(M)、T1b(SM) | IA | IB | IIA | IIB | IIIB | IV |
T2(MP) | IB | IIA | IIB | IIIA | IIIB | |
T3(SS) | IIA | IIB | IIIA | IIIB | IIIC | |
T4a(SE) | IIB | IIIA | IIIA | IIIB | IIIC | |
T4b(SI) | IIIA | IIIB | IIIB | IIIC | IIIC |
出典:胃癌治療ガイドライン医師用2018年より