胃がんの治療と選択
胃がんのステージ分類による、治療選択と治療法を解説します。
胃がんの治療選択
胃がんの治療選択は、進行度で決定します。進行度を決める大きな要因は、深達度(がんが胃壁のどこまで深く浸潤しているか)、胃の周囲にあるリンパ節への転移の度合い、他臓器への遠隔転移の3つがあります。
まず、遠隔転移があるかないかで、治療方針が2つに分かれます。遠隔転移がない場合、深達度とリンパ節への転移によって、さらに4つにわけられます。
遠隔転移なし | |
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T1a(M)N0 | リンパ節転移の疑いなし がんが粘膜(M)にとどまるもの |
T1b(SM)N0 | リンパ節転移の疑いなし がんが粘膜下組織(SM)にとどまるもので |
T1N(+) | リンパ節転移の疑いあり がんが粘膜(M)、粘膜下組織(SM)にとどまるもの |
T2-4 | リンパ節転移に関わらず、以下のいずれか
・がんが粘膜下組織を越えるが固有筋層(MP)にとどまるもの ・がんが固有筋層を越えるが漿膜下組織(SS)にとどまるもの ・がんが漿膜表面に接しているか、それを越えて外側に出ている、または他の臓器に及ぶもの |
遠隔転移あり | |
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No.16a2/b1 | 腹部大動脈周囲リンパ節のa2/b1 |
切除可能なH | 切除可能な肝転移 |
CY1、軽微なP1 | 腹腔洗浄細胞診陽性で軽微な腹膜播種(胃周囲や大網の表面に少数個存在する結節で、胃切除時に容易に切除可能なもの) |
その他M1 | その他の遠隔転移 |
T1a(M)N0
T1a(M)N0では、まず内視鏡切除が適応になるかどうかを判断します。内視鏡切除が適応なら内視鏡切除が行われた後、根治性の評価を行います。
内視鏡的根治度は、A、B、Cの3段階で評価され、内視鏡的根治度Cは、さらにC-1とC-2の2段階の評価があります。根治性の評価で、A、Bと評価された場合は、治療後は経過観察になります。根治性の評価でCと評価された場合は、進行度に応じて切除範囲やリンパ節郭清を行う縮小手術が行われます。
内視鏡切除の適応外の場合も同様に、縮小手術が行われます。
T1b(SM)N0
T1b(SM)N0では、縮小手術が行われます。
T1N(+)
T1N(+)では、治癒を目的として、胃の2/3以上の切除とD2リンパ節郭清を行う標準的な胃切除術である「定型手術」が行われます。
T2-4
T2-4では、リンパ節ががんの転移で大きく腫れあがっている(Bulky N)かどうかを判断します。Bulky Nではない場合は、治癒を目的として、胃の2/3以上の切除とD2リンパ節郭清を行う標準的な胃切除術である「定型手術」が行われます。Bulky Nと判断された場合は、術前化学療法+拡大手術が考慮されます。
No.16a2/b1
No.16a2/b1では、その他の非治癒因子がなければ、術前化学療法+拡大手術が考慮されます。その他非治癒因子があった場合は、化学療法、放射線療法、緩和手術、対処療法が行われます。
切除可能なH(肝転移)
切除可能な肝臓への転移の場合は、その他非治癒因子がなければ、外科的切除弱く推奨されます。慎重に適応を選ぶことが条件ですが、原発巣の根治的な切除と肝臓の切除を行うことで、長期生存が得られる可能性があるとの研究報告があります。その他非治癒因子があった場合は、化学療法、放射線療法、緩和手術、対処療法が行われます。
CY1、軽微なP1
腹腔洗浄細胞診陽性で、軽微な腹膜播種がある場合でも、その他の非治癒因子がなければ、胃切除に化学療法が推奨されます。その他非治癒因子があった場合は、化学療法、放射線療法、緩和手術、対処療法が行われます。
その他M1
その他の遠隔転移があった場合は、化学療法、放射線療法、緩和手術、対処療法が行われます。
遠隔転移がない場合

遠隔転移がある場合

手術後、病理学的ステージ分類により、ステージIなら経過観察、T1、リンパ節転移のないT3を除くステージII、IIIなら、補助化学療法、ステージIVなら、化学療法か対処療法が行われます。
手術後、病理学的ステージ分類による選択

内視鏡的治療
内視鏡的治療には、EMR(内視鏡的粘膜切除術)とESD(内視鏡的軟膜下層剥離術)の2つがあります。適応はステージIの早期胃がんの一部です。EMRもESDも口から内視鏡を入れ開腹を行わずに病変部を切除できるため、外科的手術に比べて体の負担が少なく胃の機能が保たれます。
内視鏡切除の適応は、がんの深達度、潰瘍の有無、分化型/未分化型の組織型、がんの大きさによって決められます。
臨床的分類に基づく内視鏡切除の適応
深達度 | 潰瘍 | 分化型 | 未分化型 | ||
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T1a | – | ≤2cm | >2cm | ≤2cm | >2cm |
+ | ≤3cm | >3cm | |||
T1b |
■EMR/ESD適応の絶対適応病変
■ESD適応の絶対適応病変
■臨床試験の結果がでるまで絶対適応としない適応拡大病変
■標準治療は、外科的胃切除だが、外科的胃切除が困難な場合に考慮される相対適応病変
EMR(内視鏡的粘膜切除術)
EMR(内視鏡的粘膜切除術)は、生理食塩水などを病変の下の粘膜下層に注入して浮き上がらせ、内視鏡の先端からスネアという輪状のワイヤーで浮き上がった病変を締め、高周波電流を流して焼き切る方法です。
EMR(内視鏡的粘膜切除術)

ESD(内視鏡的軟膜下層剥離術)
ESD(内視鏡的軟膜下層剥離術)は、生理食塩水などを病変の下の粘膜下層に注入して浮き上がらせた後、病変の周囲を電気メスで浅く切りマーキングします。マーキングに従い専用のナイフで病変部分と粘膜下層を高周波電流で焼きながら剥離する方法です。
ESD(内視鏡的軟膜下層剥離術)

外科手術
胃がんは、切除可能な段階で治療ができれば、治癒を目指すことができ、外科手術の対象となるのは、遠隔転移がなく胃の周囲のリンパ節への転移があるか可能性のある胃がんです。胃切除とともに、胃の近くにあるリンパ節も一緒に切除します。胃の切除部位や範囲、リンパ節の切除範囲は、がんの位置やステージを考慮して選択されます。
胃がんの治癒を目指した手術は
- 定型手術
- 非定型手術
の2種類があります。
治癒が望めない症例に対して行う手術もあります。
- 緩和手術(姑息手術)
- 減量手術
胃の切除範囲による術式
胃の切除範囲の違いで7つの術式がありますが、代表的な術式は4つです。
- 胃全摘術
- 幽門側胃切除術
- 幽門保存胃切除術
- 噴門側胃切除術
早期であれば、がんの位置によりこの4つから選択されますが、進行胃がんの場合は、幽門側胃切除術か胃全摘術が選択されます。

胃全摘術 | 噴門、幽門を含む胃の全切除 |
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幽門側胃切除術 | 幽門を含んだ胃を切除。噴門は残す |
幽門保存胃切除術 | 胃の上部1/3と幽門および幽門前庭部の一部を残して切除 |
噴門側胃切除術 | 噴門を含む胃を切除。幽門は残す |
胃分節切除術 | 噴門、幽門を残した胃の全周性切除で、幽門保存胃切除に該当しない |
胃局所切除術 | 胃の非全周性切除 |
非切除手術 | 吻合術、胃瘻・腸瘻造設術 |
リンパ節郭清
胃の周囲にあるリンパ節は、胃に接している第1群リンパ節(D1)と胃に流れ込む血管に沿ってある第2群リンパ節(D2)の2つのグループがあります。リンパ節への転移の度合いやがんの浸潤の程度により、D1郭清、D1+郭清、D2郭清、D2+郭清が選択されます。
原則として標準的な定型手術では、胃の2/3以上の切除とともに、リンパ節転移がある胃がんと固有筋層より深く浸潤した胃がんでは、D2郭清が行われます。リンパ節転移の疑いがなく、がんが粘膜にとどまるものやがんが粘膜下組織にとどまる場合、D1もしくはD1+郭清が考慮されますが、リンパ節転移の疑いがある場合は、D2郭清が行われます。
腹腔鏡下胃切除術
腹腔鏡下胃切除術は、腹部を数か所小さく切開し腹腔鏡や手術機器を入れて行う手術です。切開部が小さいため体への負担は少ない一方、医師の経験や熟練度が必要とされています。腹腔鏡下胃切除術の経験が少ないと術後合併症がおおいという報告もあります。胃癌治療ガイドライン第5版では、ステージIの胃がんに対して、幽門側胃切除術は推奨できるとされています。
手術に伴う合併症と対策
胃がんの手術後の主な合併症は、腹腔内膿瘍、膵液漏、創感染、腸閉塞、出血などがあります。
腹腔内膿瘍は、胃を切り取ったあと消化管をつなぎあわせたところの縫合不全などによりうまくつながらなかった場合に、食物や消化液が漏れ、炎症が起こります。炎症により痛みや熱が出ることもありますが、さらに症状が進み、膿がお腹全体に広がると腹膜炎を起こす場合もあります。縫合不全が疑われる場合は、CT検査や造影剤を使った胃X線検査が行われ、状況によって腹腔内を洗浄するために開腹手術が行われることもあります。
膵液漏は、膵臓の周囲にあるリンパ節郭清の影響で、膵液が漏れ出すことで周囲の組織を溶かしたり、感染を起こすことで膿瘍が起こります。
創感染は、手術による創(きず)に細菌などが感染することで起こります。痛みや腫れなどの症状が起こります。
腸閉塞は、手術の影響による炎症や癒着が原因で起こり、お腹の張りや痛み、吐き気といった症状が起こります。症状が軽ければ、食事や水分をとらず様子をみることもありますが、症状が重ければイレウス管という管を挿入する手術を行うこともあります。
薬物療法(化学療法)
胃がんの薬物療法(化学療法)には、手術が適応にならない進行胃がんや再発胃がんに対して行われる延命や症状をコントルールする目的で行われる緩和的化学療法と、手術の前後にあわせておこなわれる補助化学療法があります。
術後補助化学療法
術後補助化学療法は、手術で取りきれなかった可能性のある目に見えない微少がんに対して再発予防を目的に行われる化学療法です。
胃癌治療ガイドライン第5版では、ステージIIに対する術後補助化学療法は、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(製品名:TS-1)を使用するS-1単独療法が推奨され、ステージIIIの場合は、患者毎のリスクとベネフィットを考慮して、S-1単独療法かカペシタビン(製品名:ゼローダ)とオキサリプラチン(製品名:エルプラット)を併用するCapeOX療法などのオキサリプラチン併用療法を選択することが推奨されています。
術前補助化学療法
術前補助化学療法は、切除手術をする前に化学療法を行う治療です。術後補助化学療法と同様、目に見えない微少ながんに対する再発予防のためのほか、切除が難しいがんを小さくして切除しやすくする目的もあります。胃癌治療ガイドライン第5版では、術前補助化学療法の以下の2つを対象として弱く推奨しています。
- Bulky N:総肝動脈、腹腔動脈、脾動脈などに沿って3cm以上のリンパ節腫大があるか、隣接する2個以上の長径1.5cm以上のリンパ節腫大を認めるもの。
- 少数のリンパ節腫大が腹部大動脈周囲リンパ節のa2/b1に限局しているもの。
いずれも、ほかに非治癒因子がない場合で、術前補助化学療法後に拡大手術が考慮されるとしています。現在、臨床試験が進行中です。
進行・再発胃がんに対する化学療法
切除手術ができない胃がんや再発胃がん、切除手術をおこなっても切除しきれなかった場合、薬物療法(化学療法)が適応になります。化学療法の対象となるのは、健康状態(パフォーマンスステータス)が0~2で、局所進行、遠隔リンパ節や多臓器への遠隔転移がある場合です。
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
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PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
胃がん中には、HER2というタンパク質ががんの増殖に関わっているタイプ(HER2陽性)があります。HER2陽性の場合、このHER2を標的とした分子標的薬トラスズマブ(製品名:ハーセプチン)が使われます。そのため、化学療法を行う前に、HER2が陽性か陰性かを判断する検査が行われます。そのうえで、1次療法のレジメンが選択されます。レジメンとは、がん治療で、投与する薬剤の種類や量、期間、手順などを時系列で示した計画書のことです。
胃癌治療ガイドライン第5版では、レジメンを「推奨されるレジメン」と「条件付きで推奨されるレジメン」の2つに分けられていますが、記載されていないレジメンを「推奨しない」ものではなく、日常診療では、ガイドラインに記載されていないレジメンが妥当性がある場合もあるとしています。
推奨されるレジメンは、臨床試験の適格基準を満たす全身状態が良好な患者さんを対象として3つの条件を満たすものです。
条件付きで推奨されるレジメンは、患者さんの個別の病態、年齢、臓器機能、合併症などの全身状態のほか、社会的要因、患者さんの希望などにより「推奨されるレジメン」が困難か、それ以外のレジメンの方が妥当と判断される場合、2つの条件のうちいずれかを満たす場合としています。
推奨されるレジメンの3条件
- 国内外を問わず、第III相比較試験によって全生存期間における優越性または非劣勢が検証されるなど、臨床的有用性が確かである
- 国内外を問わず、特定の患者集団に対する複数の第II相試験によって再現性のある有効性が示されるなど、臨床的有用性が確かであると考えられる
- 国内外を問わず、複数の第III相比較試験によって対照群に用いられるなど、標準治療の1つであると考えられる
条件付きで推奨されるレジメンの2条件
- 「推奨される」レジメン」の使用が適切でない理由が想定可能であり、その理由となる状況での臨床的有用性があると考えられる
- 明らかなエビデンスはないが、本邦において日常診療で広く用いられている、他の臨床試験結果からの考察などを根拠として、臨床的有用性があると考えられる
推奨されるレジメン

条件付きで推奨されるレジメン
1次治療
HER2陰性 | HER2陽性 |
5-FU+シスプラチン | 5-FU+シスプラチン+トラスズマブ |
5-FU+レボホリナートカルシウム | カペシタビン+オキサリプラチン+トラスズマブ |
5-FU+レボホリナートカルシウム+パクリタキセル | S-1+オキサリプラチン+トラスズマブ |
S-1 | |
S-1+ドセタキセル |
2次治療
HER2陰性 | HER2陽性 |
ドセタキセル | 1次治療でトラスズマブの使用歴がない場合
ドセタキセル+トラスズマブ イリノテカン+トラスズマブ ナブパクリタキセル毎週投与法+トラスズマブ ナブパクリタキセル+ラムシルマブ+トラスズマブ パクリタキセル毎週投与法+トラスズマブ ラムシルマブ+トラスズマブ |
イリノテカン | |
ナブパクリタキセル毎週投与法 | |
ナブパクリタキセル+ラムシルマブ | |
パクリタキセル毎週投与法 | |
ラムシルマブ | 術後補助化学療法中および早期再発例については術後化学療法CQ24を参照 |
3次治療以降(HER2に限らず)
可能であれば
フッ化ピリミジン系薬剤 プラチナ系薬剤 タキサン系薬剤 イリノテカン ラムシルマブ ニボルマブ の6剤を使い切る治療戦略を考慮する |
ただし、いずれの薬剤も前治療で増悪した後に同じ薬剤の使用を支持するエビデンスはなく推奨されない |
化学療法の副作用
化学療法で使用する抗がん剤には、使う薬のタイプによって異なる副作用があり、自覚できる症状と、検査でわかる症状があります。自覚できる主な症状は、悪心、嘔吐、食欲低下、全身倦怠感、便利、下痢、口内炎、手足のしびれ、脱毛などがあります。検査でわかるのは、白血球・好中球減少、血小板減少、肝機能・腎機能・心機能障害、貧血などがあります。
副作用の症状が重い場合は、減量や休薬、治療の中止を検討することもあります。そうならないためにも、早期に副作用対策を行うことが大切なため、少しでも気になる症状があれば、医師や看護師、薬剤師などに相談しましょう。
吐き気・嘔吐
抗がん剤によっては、脳の神経を刺激するものがあり、そのため吐き気や嘔吐といった症状が起こります。こうした症状を和らげる制吐剤があります。自分でできる対策としては、薬の投与前数時間は、食事の量を減らしたり食べないようにするなど生活の工夫も大切です。
下痢・便秘
消化管の粘膜が刺激されることで下痢が起こることがあります。薬やストレスの影響を自律神経が受けたり、制吐剤より腸の働きがわるくなり便秘になることもあります。下痢の場合は、脱水にならないように十分に水分補給を行いましょう。
口内炎
口内炎は、抗がん剤が直接口腔内の粘膜に障害を与えるものと抗がん剤の骨髄抑制による口腔内の感染によるものがあります。しみる、痛み、舌やほほの内側の粘膜や歯茎に赤い腫れやただれ、潰瘍、出血といった症状が起こります。痛みや症状がひどい場合は、消毒作用や痛み止め効果があるうがい薬を使ったり、炎症を抑える薬を使うこともあります。食事は、なるべく刺激のないものにしましょう。
感染症
抗がん剤の中には、骨髄に対して障害を起こすものがあります。骨髄では、血液成分の赤血球、白血球、血小板などが作られるため、骨髄機能が抑制されるとこうした成分が減少します。白血球が減少すると、細菌などの病原菌から体を守る力が弱くなるため感染症にかかりやすくなります。口、肺、皮膚、尿路、腸、肛門、性器などで感染症が起こる可能性があり、血液中に菌がいる状態の菌血症や血液中に入った細菌に対する生体反応による敗血症など、全身症状を起こすこともあります。治療中はもちろん治療後も血液検査を定期的に行うことで、骨髄抑制の状態を把握することが大切です。検査結果が良くない場合は、治療間隔をあけたり、白血球を増やす薬を使うこともあります。
貧血
抗がん剤の中には、骨髄に対して障害を起こすものがあります。骨髄では、血液成分の赤血球、白血球、血小板などが作られるため、骨髄機能が抑制されるとこうした成分が減少します。赤血球が減少すると貧血症状が起こり、だるさ、疲れやすさ、めまい、息切れなどの症状が起こります。こうした症状があるときは無理をせず、動作はゆっくり行ったり、休養を十分にとることが大切です。
出血
抗がん剤の中には、骨髄に対して障害を起こすものがあります。骨髄では、血液成分の赤血球、白血球、血小板などが作られるため、骨髄機能が抑制されるとこうした成分が減少します。血小板が減少すると出血を止める作用が弱くなるため、出血しやすくなったり、出血が止まらなくなったりします。よくある出血症状は、衣服の圧迫や同じ姿勢による圧迫による内出血、歯を磨くときの歯茎などからの口腔内の出血、鼻血、血便、血尿などがあります。日常生活では怪我をしないように注意する、柔らかい歯ブラシを使う、排便時は息まないなど気を付けましょう。
しびれ
抗がん剤の中には、神経障害を起こすものがあります。末梢神経がダメージを受けると手足の先などにしびれなどの症状が起こります。手足の先にしびれなどの感覚障害が起こると、転びやすくなったり、怪我ややけどなどに気づきにくくなることもあるため注意しましょう。抗がん剤治療終了後は、徐々に回復していきますが、末梢神経障害はながく残ることもあります。薬で改善することもあるので、症状がなかなか治らない場合は医師に相談しましょう。
脱毛
抗がん剤の中には、脱毛をするタイプのものがあります。個人差はありますが、頭髪だけではなく、眉毛やまつ毛、体毛など全身に影響があります。特に頭部の脱毛は、見た目に大きな影響があるため精神的なダメージやQOLに影響があります。だいたい抗がん剤投与後、2~3週間後に脱毛が始まり、抗がん剤投与終了後3~6か月後くらいに再び生えてきます。脱毛期間は、ウィッグ(かつら)や帽子、メイクでカバーする方法もあります。頭皮は刺激に敏感になりやすくなっているため、刺激の少ないシャンプーを使ったり、なるべく柔らかく刺激の少ない帽子やウィッグを使いましょう。