本態性血小板血症

本態性血小板血症の基礎知識、罹患率、症状、治療などをご紹介します。

本態性血小板血症とは

 本態性血小板血症は、骨髄増殖性腫瘍のうち、主に血小板が増えるものをいいます。骨髄増殖性腫瘍の約30%が本態性血小板血症と報告されています。同じく骨髄増殖性腫瘍の1つである慢性骨髄性白血病は、ほとんどが「フィラデルフィア染色体」の発生により発症します。本態性血小板血症は、フィラデルフィア染色体の発生は認められませんが、「JAK2遺伝子」の異常が約50%、「MPL遺伝子」の異常が3~8%、「CALR遺伝子」の異常が20~30%の患者さんで認められます。

 1年間に新たに本態性血小板血症と国内で診断されるのは、10万あたり約2.5人と推定されています。60歳が発症の第1ピークで性差はありません。発症の第2ピークの30歳で、やや女性に多い傾向があります。

本態性血小板血症の症状

 本態性血小板血症では、発熱、体重減少、倦怠感、かゆみ、骨の痛みなどの全身症状があらわれます。また、血栓ができやすく100人年あたり4~8回の血栓症が起こるという報告があります。この血栓症が主な死亡原因となっていますが、本態性血小板血症の予後は比較的良好で、健常者とほぼ同等と考えられています。そのため、血栓症の予防が主な治療となります。血栓症のリスク因子は、年齢(60歳以上)または血栓症の既往歴です。血栓症のリスク分類は、1998年(年齢、血栓症既往歴、血小板数)、2011年(年齢、血栓症既往歴)、2015年(年齢、血栓症既往歴、JAK2変異の有無)の3つの研究報告に基づき行われます。

本態性血小板血症の血栓症リスク分類

報告年予後因子リスク
2011年60歳未満、かつ血栓症の既往なし低リスク
60歳以上、または血栓症の既往がある高リスク
1998年60歳未満、かつ血栓症の既往なし、かつ血小板数150万/μL未満
血小板数150万/μL未満
低リスク
60歳以上、または血栓症の既往あり、または血小板数150万/μL以上高リスク
2015年60歳未満、かつ血栓症の既往なし、かつJAK2変異なし超低リスク
60歳未満、かつ血栓症の既往なし、かつJAK2変異あり低リスク
60歳以上、かつ血栓症の既往なし、かつJAK2変異なし中リスク
60歳以上、かつJAK2変異なし高リスク
血栓症の既往歴あり

2011年の報告は、Barbui T, et al. J Clin Oncol. 2011 ; 29 : 761
1998年の報告は、Ruggeri M, et al.Br J Haematol.1998 ; 103 : 772
2015年の報告は、Barubi T, et al.Blood Cancer J. 2015 ; 5 : e369
出典:造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版 第I章白血病 4.慢性骨髄性白血病/骨髄増殖性腫瘍 3.本態性血小板血症 表5より作成

本態性血小板血症の生命予後リスク

報告年予後因子リスク50%生存期間
2006年60歳未満、かつ白血球数が1万5,000/μL未満低リスク25.3年
60歳以上、または白血球数が1万5,000/μL以上中リスク16.9年
60歳以上、かつ白血球数が1万5,000/μL以上高リスク10.3年
2006年60歳以上:2点
白血球数が11,000/μL以上:1点
血栓症の既往歴:1点
上記の点数の合計によりリスク分類
0点:
低リスク
未確認
1~2点:
中リスク
24.5年
3~4点:
高リスク
13.8年

2006年の報告は、Wolanskyj AP, et al.Mayo Clin Proc. 2006 ; 81 : 159
2012年の報告は、Passamonti F, et al.Blood. 2012 ; 120 : 1197
出典:造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版 第I章白血病 4.慢性骨髄性白血病/骨髄増殖性腫瘍 3.本態性血小板血症 表7より作成

本態性血小板血症の治療

 血栓症リスクが低い患者さんに対しては、骨髄抑制が起こる薬剤や血小板を減らす薬剤による治療はせず、定期的な経過観察が行われます。「JAK2遺伝変異あり」「心血管のリスク要因(喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病など)」「微小血管の塞栓」「血栓症が疑われる症状」がある人には、低用量のアスピリンによる治療が考慮されることもあります。

 血栓症リスクが高い患者さんに対しては、血栓症の予防を目的に低用量アスピリンと細胞減少療法を併用した治療が行われます。血小板数の著しい増加に伴いフォン・ヴィレブランド因子(vWF)という出血を止めるための血液タンパク質が低下すると、「後天的フォン・ヴィレブランド病」を発症することがあります。vWFが低下している患者さんでは、アスピリンを使用すると出血を助長する可能性があるため、細胞減少療法を行い血小板数が減少していることを確認した後に、アスピリンによる治療が行われます。

 細胞減少療法は、本態性血小板血症の原因となる「JAK2」遺伝子に作用する「JAK阻害薬」という分子標的薬により、血液細胞の数を減らす治療法です。細胞減少療法では、JAK阻害薬として「ヒドロキシウレア」と「アナグレリド」が使われます。ヒドロキシウレアには奇形を生じさせる「催奇性」の問題があるため、妊娠中や不妊治療の希望者にはインターフェロンα療法が考慮されることもあります。

本態性血小板血症の治療選択
本態性血小板血症の治療選択
出典:一般社団法人日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版.金原出版 第I章 白血病、4慢性骨髄性白血病/骨髄増殖性腫瘍、アルゴリズムより作成

 本態性血小板血症後に、骨髄線維症に進展した低リスクと中間-1リスクの患者さんでは、貧血症状や臨床症状がなければ生存期間は10年を超えるため経過観察が行われます。症状がある場合は、ルキソリチニブによる治療が行われます。ルキソリチニブは、血液系細胞の分化や増殖にかかわる酵素JAK1/2を阻害する分子標的薬です。骨髄線維症の主な症状のひとつである「腫れて大きくなっている脾臓」を縮小させ、全身症状を改善する効果が期待できます。

 中間-2リスクと高リスクの患者さんに対しては、治癒を目的とした同種造血幹細胞移植により、約50%の患者さんで長期生存が得られるという報告があり、推奨されています。同種造血幹細胞移植が適応とならない患者さんでは、ルキソリチニブによる治療が行われます。

 貧血症状に対しては、赤血球輸血やタンパク同化ホルモンによる治療が行われます。

 本態性血小板血症から急性骨髄性白血病に進展した場合は、通常の急性骨髄性白血病治療に準じて、アザシチジン+ベネトクラクス併用療法もしくは強力化学療法による寛解導入療法を行い、移植可能なら同種造血幹細胞移植が推奨されています。

原発性骨髄線維症の治療選択
原発性骨髄線維症の治療選択
出典:一般社団法人日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版.金原出版 第I章 白血病、4慢性骨髄性白血病/骨髄増殖性腫瘍、アルゴリズムより作成

参考文献:一般社団法人日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版.金原出版
臼杵憲祐 日内会誌 2007; 96: 1390~1397

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