乳がんの予防と予後

乳がんの予防と治療後の生活習慣はどうするのがいいのかを紹介します。

乳がんの原因

乳がんは、女性ホルモンのエストロゲンが関係していることがわかっていますが、生活習慣の中でも乳がんの要因として考えられるものがあります。乳がんの要因となる生活習慣では、国際的な評価と日本人では、少し違いがあります。

国際的な評価は、世界研究基金・米国がん研究協会「食物・栄養・運動とがん予防」として発表されています。日本人に対する評価は、国立がん研究センター研究開発費による研究班(がん予防研究班)と乳癌診療ガイドラインの中に報告があり、要因は、「確実」「ほぼ確実」「可能性あり」「証拠不十分」「大きな関連なし」の5段階で評価しています。

国際的な評価と日本人に対する評価のいずれでも発症リスクで「確実」とされているのが、閉経後の肥満です。同じ肥満でも、閉経前の肥満は、国際的な評価では予防要因として「ほぼ確実」とされていますが、がん予防研究班と乳癌診療ガイドラインでは、発症リスクで「可能性あり」とされています。

飲酒の国際的な評価は、発症リスクとして「確実」、がん予防研究班では「証拠不十分」、乳癌診療ガイドラインでは発症リスクが「ほぼ確実」と評価がわかれています。

また、更年期障害の治療のために閉経前後で行われるエストロゲンとプロゲステロンを併用するホルモン補充療法も、乳がんの発症リスクがわずかですが、高くなることが「ほぼ確実」とされています。経口避妊薬の使用中では、乳がんの発症リスクが高くなる可能性はありますが、中止後10年以上でリスクの増加は見られなくなります。エストロゲンとプロゲステロンの併用ホルモン補充療法や経口避妊薬の使用に関しては、利益と不利益のバランスを考える必要があります。

乳がんと生活習慣要因

国際的な評価 がん予防研究グループ 乳癌診療ガイドライン
肥満(閉経後) 確実↑ 確実↑ 確実↑
肥満(閉経前) ほぼ確実↓ 可能性あり↑ 可能性あり↑
飲酒 確実↑ 証拠不十分 ほぼ確実↑
身体活動(閉経後) ほぼ確実↓ 可能性あり↓ ほぼ確実↓
イソフラボン 証拠不十分 可能性あり↓ 可能性あり↓
喫煙 可能性あり↑ 可能性あり↑ ほぼ確実↑
受動喫煙 証拠不十分 可能性あり↑ 可能性あり↑

「↑」はリスク要因、「↓」は予防要因
リスク要因(確実)
リスク要因(ほぼ確実)
リスク要因(可能性あり)
予防要因(ほぼ確実)
予防要因(可能性あり)
※□証拠不十分

出典:世界がん研究基金・米国がん研究協会「食物・栄養・運動とがん予防」、国立がん研究センター研究開発費による「根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」研究班(がん予防研究班)、乳癌診療ガイドライン②「疫学・診断編」2018年版をもとに作成

乳がん予防と生活

日本人を対象としたこれまでの研究をまとめた評価※によると、日本人のがん予防では6つの要因が重要だといわれています。

  • 禁煙
  • 節酒
  • 食生活
  • 身体活動
  • 適正体重の維持
  • 感染

このうち乳癌診療ガイドラインでは、感染を除く5つすべての生活習慣でなんらかの関連があるとされ、証拠不十分とされたものはありません。禁煙や節酒、バランスのいい食事、運動を心掛け、適正体重を維持しましょう。発症予防ではありませんが、日ごろからセルフチェックを行い、対象年齢になったら乳がん検診を受け、異常があれば適切な検査を受け、早期発見し早期に適切な治療を受けることが大切です。

禁煙

たばこは吸わず、受動喫煙にも注意しましょう。

節酒

お酒は飲みすぎないように節度ある飲酒を心掛けましょう。

食生活

バランスのいい食生活を心掛けましょう。

身体活動

仕事や家事、日常生活などまとまった運動も含めて身体活動が高い人ほどがん発生リスクが低くなるという報告があります。

適正体重の維持

がんを含むすべての死亡原因のリスクは、やせすぎでも太りすぎでも高くなります。特に閉経後の肥満は、乳がんのリスクになるため適正体重を維持することが大切です。

※国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究グループ「日本人のためのがん予防法」

乳がん予後と生活

乳がんの5年相対生存率は91.1%、10年相対生存率は79.3%(2006年~2008年の部位別調査による)で、より早期に治療することで治癒が期待できるがんです。その反面、10年後でも再発することもあり、経過観察中では、早期に再発や転移を見つけ治療をするために定期的な検査を受けることが大切です。経過観察や治療後の生活での制約も長期にわたるため、生活習慣に気をつけることも大切です。
乳がんの予後との関連する可能性が考えられる要因がいくつかあります。

  • 適正体重の維持
  • 高い身体活動
  • 食物繊維を含んだ食事
  • 大豆製品の摂取
  • 総脂肪(特に飽和脂肪酸)摂取を減らす

です。
乳がんの再発や死亡リスクなど予後への影響を減らすためには、健康的な食事や活動量を高く維持し、適正な体重を維持しましょう。

乳がんの予後への影響と生活習慣

妊娠期は予後不良 証拠不十分
授乳期は予後不良 ほぼ確実
診断時の肥満の予後への影響 確実
診断後の肥満の予後への影響 ほぼ確実
初期治療後の食事での脂肪摂取再発リスク 証拠不十分
高い身体活動の維持が死亡リスクを減少 確実
アルコール飲料摂取による再発、死亡リスク 大きな関連なし
喫煙による再発リスク 可能性あり
喫煙による死亡リスクの増加 ほぼ確実
イソフラボン摂取で予後が改善 可能性あり
乳製品摂取予後への影響 証拠不十分
心理社会的介入が生存期間を延長 証拠不十分
心理社会的介入がQOLの向上や抑うつ・不安を改善 可能性あり

出典:乳癌診療ガイドライン2018年版「疫学・診断編」より作成

妊娠期の乳がんは予後不良か

妊娠期の乳がんが、証拠が不十分で予後不良とは結論付けられません。

授乳期の乳がんは予後不良か

授乳期の乳がんは、ほぼ確実に予後不良です。

乳がん診断時に肥満の場合の予後への影響

乳がん診断時に肥満な患者さんの、再発リスクや乳がんによる死亡リスク、全死亡リスクが高いことは確実です。トリプルネガティブに限ると証拠不十分で結論付けられません。

乳がん診断後の肥満の場合の予後への影響

乳がんと診断された後の肥満は、再発や乳がんによる死亡リスクが高いことはほぼ確実です。

乳がん初期治療後の脂肪摂取は予後に影響

乳がんの初期治療後の総脂肪量の増加は、乳がんの再発リスクを増加させる証拠は不十分で結論づけられません。しかし、脂肪の多い食事が肥満につながり、再発リスクになるという仮説もあるため、肥満防止のためにバランスのいい食事が大切です。

高い身体活動の維持が死亡リスクを減少

乳がんと診断された後、身体活動が高い患者さんでは、全死亡リスクや乳がんによる死亡リスクが減少することは確実です。

アルコール飲料摂取による再発、死亡リスク

乳がんの診断前、診断後を問わず、アルコール飲料の摂取は、乳がんの再発リスクや乳がんによる死亡リスクが増加する可能性は低く、大きな関連はありません。

喫煙による再発リスクと死亡リスク

喫煙によって乳がんの再発リスクは増加する可能性があります。また、乳がんにより死亡リスクの増加は、ほぼ確実です。

イソフラボン摂取で予後が改善

食事でとるイソフラボンは、乳がんの予後を改善する可能性があります。

乳製品摂取予後への影響

乳がんによる死亡リスクや、全死亡リスクが増加する可能性は低く、証拠不十分ですが、乳製品による再発リスクが増加する可能性は否定できません。

心理社会的介入による乳がん患者さんの予後の改善

心理社会的介入が、生存期間の延長につながるとの根拠は、証拠不十分で認められませんが、QOLの向上や抑うつ・不安の改善に対して一定の有効性が認められ可能性があります。

生活の質(QOL)

乳がんの治療で、乳房の全摘手術や部分切除手術を受けた場合、美容面だけでなく、身体のバランスが崩れることでさまざまな症状が生じることもあります。
初期治療後、社会復帰にあたっては、上司や同僚、家族など周囲の人たちの理解が必要です。治療や検査のための通院や体調がすぐれないときなど、仕事を休んだり家事を手伝ってもらうために、事前に相談しておくことも重要です。
また、乳がんは、治療によってさまざまな副作用がありますが、特に女性にとって、脱毛や皮膚症状など見た目の変化などに対する工夫などは、QOLを維持するためには大切です。
心と体への負担を少なくする生活の工夫をしましょう。

乳房切除後のケア

乳房の切除は、見た目だけではなく、身体のバランスを崩すため肩こりや頭痛といった痛みが起こることがあります。乳房の全摘手術を受けたあと、乳房再建手術を受けられる人も多くなっていますが、補正下着や補正用のパッドを使うことで見た目や身体のバランスを整えることもできます。

脱毛

薬物療法の副作用の1つに脱毛があります。頭髪だけではなく、眉毛やまつ毛も脱毛するため、顔の表情も変わり、精神的なダメージは女性にとって大変大きくなります。頭髪に関しては、かつら(ウィッグ)や帽子などでカバーしましょう。薬物療法中に敏感になっている皮膚に優しい作りになったものなどもありますので、自分にあったものを選んでください。

メイク

眉毛やまつ毛の脱毛は、表情や顔の印象に大きな影響があります。「上がり眉」ではクールできりっとした印象を、「下がり眉」ではおおらかで優しい印象を与える眉毛の描き方やアイラインの入れ方、肌のくすみなど、見た目の変化をメイクでカバーすることができます。外見のケアは、気持ちも前向きになります。

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