大腸がんの基礎知識

大腸がんとはどんな病気なのか、種類、症状、疫学など基礎知識を紹介します。

大腸がんとは

大腸がんは、大腸にできる悪性腫瘍です。良性のポリープ(腺腫)が、がん化するものと、正常な大腸内部の粘膜から直接発生するものがあります。

大腸の構造

大腸は、小腸から続く約2mの消化管です。口側から「虫垂」、「盲腸」、「結腸」、「直腸S状部」、「直腸」で構成され、括約筋がある肛門管に続きます。

結腸は、盲腸から上に向かう「上行結腸」、左上腹部へ向かう「横行結腸」、S状結腸に向かって下る「下行結腸」、S状のカーブを描く「S状結腸」に区別されています。

さらに、S状結腸と直腸の間を「直腸S状部」、直腸の上部を「上部直腸」、下部を「下部直腸」に区別されます。

腸の構造

大腸の機能

小腸で栄養素が吸収されたあと、大腸では水分が吸収されます。栄養素の消化や吸収は行われません。徐々に水分を吸収された食物の残りは、結腸から直腸に送られる過程で固形の便になります。このときに、水分の吸収が不十分だと軟便や下痢になります。

大腸がんの部位別発生頻度

大腸がんのそれぞれの部位で発生頻度は異なります。

2000~2002年にかけて大腸がん手術を行った17449の症例報告から、大腸がんの部位別発生率では、直腸がんとS状結腸がんが多くなっています。

大腸の部位別発生頻度

大腸の部位発生頻度
直腸がん26.4%
S状結腸がん26.4%
上行結腸がん13.6%
直腸S状部がん12.5%
横行結腸がん9.2%
盲腸がん6.5%
下行結腸がん4.8%

大腸癌全国登録(大腸癌研究会)より作成

大腸がんの種類

大腸がんは、がん化した元の細胞の組織の違いによって3種類に分類されます。

  • 腺がん
  • 扁平上皮がん
  • 腺扁平上皮がん

3つのうち、多くは腺がんで、腺がんはさらに6種類に分類されます。

  • 乳頭腺がん
  • 管状腺がん
  • 低分化腺がん
  • 粘液がん
  • 印環細胞がん
  • 髄様がん

大腸がんの原因と予防

大腸がんと生活習慣

大腸がんの発生原因と生活習慣、身体的特徴には関連があるといわれています。

生活習慣

  • 喫煙
  • 飲酒
  • 牛・豚・羊などの赤肉の摂取
  • ベーコン・ハム・ソーセージなどの加工肉摂取

身体的な特徴

  • 体脂肪率の高い人
  • 腹部の肥満
  • 高身長

また、家族歴や遺伝子にも関連があるといわれています。

家族性大腸腺腫症(FAP)

大腸ポリープが多発する家族性大腸腺腫症(FAP)は、大腸がんが発症する遺伝性の疾患です。FAPで発生するポリープは、腺腫といわれるタイプでがん化する可能性があります。ポリープが多発するため、その分大腸がんが発生する可能性が高くなります。

遺伝性大腸がんリンチ症候群

大腸がんの2~3%には、リンチ症候群が原因となる遺伝性のがんがあります。リンチ症候群は、4つの遺伝子(MLH1、MSH2、MSH6、PMS2)のうちの1つに変化がある場合に診断されます。親から子へ遺伝する確率は50%ですが、リンチ症候群と診断されても大腸がんになる確率は、生涯で28~75%です。また、リンチ症候群による大腸がんの発症年齢は、一般の大腸がんの好発年齢65歳前後より若く、約45歳くらいだといわれます。リンチ症候群は、大腸がんのほか、子宮内膜がん、腎盂・尿管がん、小腸がんが発症しやすいとされ、日本では胃がんとの関連が高いと報告されています。

大腸がんの予防

大腸がんの発症リスクを高める、喫煙や過度の飲酒、赤肉や加工肉の摂取に気をつけ、禁煙、節度ある飲酒、バランスのいい食事を心掛けることが大切です。また、大腸がんの発症リスクを下げる要因として

  • 食物繊維を含む食品(大腸がんに対して)
  • 中~高強度の身体活動(結腸がんに対して)

が確実という報告があります。

そのほかの要因は

  • にんにく
  • カルシウムを含む食事(牛乳など)

が可能性大とされています。

コーヒーの飲用が、大腸がんの発症リスクを下げる予防的な作用が報告されていますが、日本人を対象とした研究を解析したところ関連性は認められなかったという報告があります※。研究によると、男性では大腸がんおよび大腸の各部位のがんについてコーヒー飲用との明らかな関連はみられませんでしたが、女性では結腸がんに限りリスクが統計学的に有意に低下していたそうです(1日に1杯未満と1日3杯以上飲むグループを比べると20%低下)。コーヒーの飲用による結腸がんの予防のメカニズムは、発がん促進作用がある腸内の胆汁酸や炎症、インスリン抵抗性やインスリンの分泌がコーヒーによって抑えられたことが考えられます。また、腸の運動を活発にする作用や、コーヒーに含まれる抗酸化作用をもつポリフェノールやビタミンE、マグネシウム、カリウムなどのミネラルが寄与している可能性があります。

Kashino I, et al:Int J Cancer Jul 15;143(2),2018 科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

大腸がんの罹患率と生存率

大腸がんの罹患率

国立がん研究センターがん対策情報センターの最新がん統計によると、2016年にがんで死亡した人は、372,986人(男性219,785人、女性153,201人)でした。

大腸がんで亡くなった人

男性3位
女性1位
男女合計2位

罹患数

男性3位
女性2位
男女合計2位

となっています。

生涯大腸がんが原因で死亡する確率

男性33人に1人(3%)
女性44人に1人(2%)

という統計があります(2016年データに基づく)。

新たに大腸がんと診断される人は、1年間で10万人のうち103人です。40歳代から増加しはじめ、50代で加速され年齢が高くなるほど罹患率も高くなります。

大腸がんの生存率

がんの生存率は、性別、生まれた年、年齢が同じ人と比べどのくらいかで表されます。5年生存率と10年生存率の統計がとられています。5年生存率は、がんと診断されてから5年後に生存しているかの割合で、10年生存率は10年後の割合です。

大腸がんの5年生存率

男性72.2%
女性69.6%

(2006~2008年診断例)

結腸がんの10年生存率

男性69.8%
女性62.8%

(2006~2008年診断例)

直腸がんの10年生存率

男性60.8%
女性63.2%

(2006~2008年診断例)

となっています。

この生存率の割合は、早期の患者さんから進行した状態で見つかった大腸がん患者さん全体の割合です。

ステージ別の大腸がん患者さんの5年生存率

ステージI97.6%
ステージII90.0%
ステージIII84.2%
ステージIV20.2%
全症例76.0%

全国がん(成人病)センター協議会の生存率経堂調査(2007年~2009年症例)による

という統計があります。
このデータをみてもあきらかなように、より早期に治療を開始した人の方が、5年生存率が高いことがわかります。

大腸がんの症状

大腸がんは、早期の段階ではほとんど自覚症状はなく、進行するにしたがって症状がでてきます。

自覚症状は

  • 血便
  • 下血
  • 便が細くなる
  • 便が残る感じがする(残便感)

などがあります。

排便に伴う自覚症状が多く、特に便に血が混じる血便や腸内のがんからの出血による赤色の便、もしくは赤黒い便、便の表面に血液が付着する下血が多く現れます。しかし、血便や下血は痔の症状でもみられるため、必ずしも大腸がんの症状ではありませんが、大腸がんの早期発見のために、消化器科や肛門科など専門の病院を受診し、検査を受けることが大切です。

がんが進行すると、

  • 貧血
  • 便秘や下痢
  • お腹が張る

といった症状も出てきます。

貧血は慢性的な出血によるもので、腫瘍が大きくなり腸が狭くなることで便秘や下痢を繰り返したり、お腹が張るといった症状が出ます。

さらに進行すると

  • 便が出なくなる
  • 腹痛
  • 嘔吐

などの症状がでてきます。

腫瘍で腸が詰まった状態になり食物や水分の流れが悪くなる腸閉塞になると便が出なくなり、そのため腹痛や嘔吐といった症状が出ます。

大腸がんの検診

大腸がんの症状は、肛門からの出血、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返すなどがありますが、こうした症状はある程度進行してから起こる症状で、早期の大腸がんではあまり自覚できる症状はありません。大腸がんは、早期に発見し早期に適切な治療を受けることで治る可能性が高くなるため、定期的に検診を受けることが大切です。

大腸がん検診は、主に

  • 問診
  • 便潜血検査

が行われます。

問診

問診は、自覚症状や既往歴、家族の病歴などを確認し診療の際の判断材料のために行われます。

便潜血検査

便潜血検査は、便の中に大腸がんの表面から出血がないかを調べる、安全で簡単な検査です。40歳以上の男女を問わず年に1回受けることが推奨されている一般的な検査です。欧米では、3日法といわれる化学法で行われていますが、日本では主に2日法といわれる免疫法が行われています。大腸がんからの出血は、間欠的なため2日分の便を調べます。免疫法は、ヒトの血液にだけ反応する検査で、食事や薬などの制限なく行うことができます。便潜血検査で陽性となった場合は、精密検査として大腸内視鏡検査などが行われます。

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