相談:複数の病院で同じ検体を調べたのに結果が異なるのはなぜ
乳がんの疑いがあり、検査をしました。最初の検査結果に納得がいかなかったため、複数の病院で同じ検体を調べてもらいましたが、結果が異なりました。 確実な診断ができるといわれている組織診による診断が、病理医によって変わるのはなぜですか。私の場合は、同じ組織を複数の病院で診てもらい、「どちらかというと良性」、「どちらかというと悪性」という異なる結果を伝えられ困っています。診断の基準が数値によるものであれば、変わらないと思うのですが、細胞の形や染色の状態などで判断するならば、病理医によって変わってくるのではないかと思っています。 細胞診では「3」といわれ、良性か悪性かわからないので針生検をしました。組織診でも細胞診と同じく5段階で評価されるのでしょうか。「3」の中でも2に近い3と4に近い3があるのですか。 私のしこりは1年半前に見つけたときから1cm弱で大きさが変わっていません。これが悪性の場合、急に増殖のスピードが速くなるなど、腫瘤の性質が変化することはありますか。「悪性」と診断されたときには、「増殖因子:Ki67(MIB1) index:1.3%」「組織学的異型度:グレード1」と告げられました。Ki67 indexが1.3%というのは、増殖のスピードはかなり遅いとのことですが、急にindexのパーセンテージがもっと高い数値に変わり、増殖のスピードが速くなるということはありますか。また、Ki67 index1.3%というのは、しこりの大きさが倍になるのには何年ぐらいかかるものですか。「組織学的異型度:グレード1」とは、具体的にどのようなことでしょうか。 また、新たな生検よって、悪性組織が拡散することはありますか。(本人、女性)
回答:乳がんの病理診断の一致率を調査した報告では一致率は約75%、診断困難なほど一致率は下がる
細胞診より組織診のほうが、確実な診断ができるという点ですが、細胞診よりは確実ということで、100%ということではありません。組織検査は、病理医による観察で行われます。...
乳がんの病理診断の一致率を調査した論文では、以下の報告があります。
・浸潤性乳がんでは96%で一致、4%が解釈不十分
・非浸潤性乳がんでは、84%が一致、3%が過剰解釈、13%が解釈不十分
・異形成では、48%が一致、17%が過剰解釈、35%が解釈不十分
・良性症例では、87%が一致、13%が過剰解釈
全体の一致率は約75%です。特に、診断困難な微妙な病変になるほど、一致率は下がるようです。
浸潤性乳がんに対するものですが、組織学的グレード分類は以下の通りです。
組織学的グレード分類
グレードの判定は、腺管形成スコア、核異型スコア、核分裂像スコアの各点数の合計で判断されます。
グレード1は、3~5点
グレード2は、6~7点
グレード3は、8~9点
腺管形成スコア
腫瘍の75%超にあきらかな腺管形成がみられる:1点
腫瘍の10~75%に腺管形成がみられる:2点
腺管形成は腫瘍の10%未満:3点
核異型スコア
核の大きさ、形態、クロマチン※が均一:1点
1と3の中間:2点
核の大小不同、形態不整が目立つ。クロマチン※の増量、不均等分布に目立ち、大型の核小体を有することがある:3点
核分裂像スコア
1~3点 高倍(対物レンズ40×)10視野あたりの核分裂像で分類。スコアは視野径により異なる
浸潤性乳管がんの核グレード分類
核異型スコアと核分裂像スコアの合計
核グレード1は、2~3点
核グレード2は、4点
核グレード3は、5~6点
核異型スコア
核の大きさ、形態が一様でクロマチン※は目立たない:1点
1と3の中間:2点
核の大小不同、形態不整が目立つ。クロマチン※の増量、不均等分布に目立ち、大型の核小体を有することがある:3点
核分裂スコア
低~中倍で分裂像の目立つ部分を選んだ後、高倍(対物レンズ40×)で観察。スコアは視野径により異なる
※クロマチンは、正常細胞と悪性腫瘍の細胞を区別する最も重要な所見となる「核」を濃く染める物質です。悪性腫瘍の細胞核は、大型で輪郭が不整になりやすく、色は濃く染まっています。また細胞質が狭小化、核小体は大きくなり、数も増加するのが特徴です。
Ki67は、がんの増殖能力をあらわすマーカーで、数多くの研究でKi67と予後との関係が示されており、Ki67が予後因子であることはほぼ確実です。しかし、Ki67の評価方法はいまだ標準化されていません。Ki67の数値で、進行スピードが速い遅いという大体のことはわかるはずですが、明確なスピードなどはわかりません。
針の穿刺経路へのがん細胞の播種の頻度は4~36%という報告があります。しかし、実際の局所再発の頻度は10%未満とされ、その一因として、穿刺経路に残されたがん細胞の多くが、免疫により死滅するという考えが挙げられています。穿刺から手術までの期間が長くなると、穿刺経路のがん細胞を認める頻度が低くなるというデータもあるようです。
参考文献
乳癌診療ガイドライン 総説3 浸潤性乳管癌の病理学的グレード分類
http://jbcs.gr.jp/guidline/2018/index/byouri/s3/
医師に相談したい場合、現役医師が回答する「AskDoctors(アスクドクターズ )」の利用もおすすめです。
