相談:乳がん検査における、細胞診と組織診の違いは

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乳がんの疑いがあり、針生検を行いました。組織診の結果、最初のクリニックでは悪性、2番目の病院では100%ではないが良性、3番目の病院ではグレーとブラックの境目なので、悪性と見たほうがよいだろうとのことでした。同じ組織を診てもらっているのに診断がこんなに異なるのはなぜでしょうか。 100%良性とはいい切れないということは、少なくとも細胞の異常が認められたという理解でいいですか。「悪性の可能性が高いので周辺組織も併せていっきに取り除く。しかし、手術後の病理検査で悪性ではなかったということもあり得る」というのが担当医の説明でした。悪性でない場合とはどのような場合なのでしょうか。小さいですがしこりはあります。これはいったい何なのでしょうか。今はがんではないけれど今後悪性になる可能性があるもの、放っておいても大丈夫というもの、他の病気であるものなど、どういうことが考えられますか。また、新たに生検を行うことで、悪性組織が拡散するなどのリスクはありますか? 現在の担当医に紹介状を書いてもらい、別の病院を新たに受診したときに、紹介元の病院と同様の手術を勧められた場合、紹介元の病院で手術を受けることはできますか。 細胞診では「3」といわれ、良性か悪性かわからないため、針生検をしました。組織診でも細胞診と同じく5段階で評価されるのでしょうか。また、子宮内膜症の治療で、「ディナゲスト」を服用中です。ディナゲストが組織診の結果に影響を与えている可能性はありますか。

(本人、女性)

回答:細胞診より組織診の方が、確実な診断ができる可能性が高い

乳がんの疑いがある場合、がん細胞かどうかを調べる検査には、細胞診と組織診の2つがあります。細胞診は、細い針でがんの疑いがある病変の一部を採取して調べる方法です。...
結果は、「正常あるいは良性」「識別が難しい」「悪性の疑い」「悪性」で判定されます。「正常あるいは良性」以外と判定された場合には、組織診を行います。組織診は、細胞診と異なり、細胞の一部だけではなく、組織を採取して、顕微鏡で調べる検査です。そのため、細胞診より組織診の方が、確実な診断ができるといわれています。細胞診の判定では、組織ではなく細胞をみているため判定者により判断が異なることもあるかと思いますが、なぜ異なったのかは不明です。

細胞診では、採取できる細胞の量がとても少ないため、がんの性質やホルモン受容体、HER2の発現などを調べることができません。そのため、確定診断とともに治療方針を決めるために、組織診を行いますので、細胞診とは異なる評価が行われることもあります。

ディナゲストが組織診の結果に影響を与えているかに関しては、添付文書などにも記載がなく不明です。しかし、診察の際に、服薬中の薬を担当医に伝えていれば、影響があるかどうかは判断していただけていると思います。

腫瘍には、悪性と良性のものがあります。いわゆる「がん」は悪性のもので、増殖するスピードが速く放っておくとすぐに大きくなり、周囲の組織を巻き込んだり、周辺の臓器に浸潤していきます。また、リンパ管や血管を通して遠隔転移します。良性腫瘍は、大きくなるスピードは悪性ほどではなく、転移する可能性も低い腫瘍です。がん細胞も元々は、正常な細胞です。なんらかの原因で異常をきたし、細胞分裂(分化)のコントロールがきかなくなっています。分化の程度は、さまざまで「未分化」「低分化」「高分化」といった分化度で表現されます。高分化は、元の細胞に近く、低分化、未分化の順で、元の細胞の形とは異なります。一般的に高分化の方が悪性度は低く、低分化、未分化は悪性度が高いといわれています。

生検は侵襲を伴いますので、そうした意味では行った回数だけリスクは高いはずです。ですが、十分な組織が採取できなかったなどの理由がなければ、生検を繰り返し行っても採取される細胞や組織に大きな違いはないはずです。細胞診では、採取する細胞が少なく、組織診では細胞診より多くなります。そのため、組織診の方が正確な判定ができます。

紹介元の病院で手術を受けることはできるはずです。ご不安なら、担当医に「もし、同じ診断だった場合は、〇〇先生の手術を希望しますのでお願いします」など、事前にお気持ちを伝えておくこともいいかもしれません。

参考文献
日本臨床細胞学会―細胞診の話
http://jscc.or.jp/others/others1/

がんプラス―乳がんの「検査」と「診断」画像診断・生検・病理検査って?
https://cancer.qlife.jp/breast/breast_feature/article55.html

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