再発

慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の経過観察、治療効果判定、再発に関してご紹介します。

慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の経過観察と治療効果判定

 慢性リンパ性白血病の多くは、ゆっくりと長い経過で進行します。そのため、無症状の場合は、経過観察が行われます。活動性の兆候がある早期進行期になった場合、治療開始基準を参考に、慎重に治療法が選択されます。

 初回治療や二次治療における化学療法後には、治療効果判定が行われます。この判定で、完全奏効もしくは部分奏効が認められた場合は、経過観察となります。また、完全奏効または部分奏効が認められたのが、予後不良な染色体異常がある患者さんやハイリスクの患者さんであった場合、長期予後の改善を目的に、同種造血幹細胞移植が考慮されます。

 治療効果判定で、完全奏効/部分奏効が得られず、や再発や治療抵抗性となった場合は、二次治療へ進みます。

完全奏効

完全奏効は、以下の5つの基準を満たす状態が、3か月以上継続することです。
(1)末梢血中に同じ特徴をもつB細胞がないこと
(2)直径1.5cm以上のリンパ節の病変がないこと
(3)肝臓や脾臓の腫れが認められないこと
(4)消耗性の症状がないこと
(5)血球の条件が、好中球数1,500/μL超、血小板数100,000/μL超、輸血をしない状態で赤血球が11.0g/dl超であること

部分奏効

部分奏効は、以下の4つの基準のうち少なくとも2つ以上を満たす状態が2か月以上継続することです。
(1)末梢血中に同じ特徴をもつB細胞が50%以上減少
(2)すべてのリンパ節の大きさの合計が50%以上減少
(3)肝臓や脾臓の腫れが50%以上減少
(4)血球の条件が、好中球数1,500/μL超または治療前より50%以上の改善、血小板数10万/μL超または治療前より50%以上の改善、輸血しない状況で赤血球11.0g/dL超または治療前より50%以上の改善

病勢進行

病勢進行は、以下の5つの基準のうち、少なくとも1つ異常満たす状態です。
(1)リンパ節腫脹
 直径1.5cm以上の新たなリンパ節腫脹、新たな肝脾腫、臓器浸潤
 最大径50%以上増加、直径1〜1.5cmのリンパ節では大きさが50%増加、または直径1.5cm以上、1.5cm以上のリンパ節では長径2.0cm以上になること
 多発しているリンパ節の直径の和が50%以上増大
(2)肝臓、脾臓のサイズが50%以上増大
(3)末梢血中リンパ球数が50%以上増大またはB細胞数5,000/μL以上
(4)Richter症候群のような増殖が速い腫瘍への形質転換(可能な限り、リンパ節などの生検で確認されます)
(5)慢性リンパ性白血病と関連のある血球減少が出現

病勢安定

病勢安定は、完全奏効や部分奏効に達せず、進行にもあたらない場合です。

慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の治療効果判定

完全奏効以下の基準をすべて満たす状態が、3か月以上継続すること
1.末梢血中にクローナルなBリンパ球がないこと(4,000/μL以下)
2.直径1.5cm以上のリンパ節がないこと
3.診察で肝脾腫がないこと(CTでは長径[cranio-caudal length]が13 cm未満)
4.消耗性の症状がないこと
5.血球が以下の条件
 1)好中球>1,500/μL
 2)血小板>100,000/μL
 3)輸血しない状況でHb>11.0g/dL
部分奏効以下の基準を少なくとも2つ以上満たす状態が、2か月以上継続すること
1.末梢血中にクローナルなBリンパ球が50%以上減少すること
2.すべてのリンパ節大きさの合計が50%以上減少
3.肝脾腫が50%以上減少
4.血球が以下の条件
 1)好中球>1,500/μLまたは治療前より50%以上の改善
 2)血小板>100,000/μLまたは治療前より50%以上の改善
 3)輸血しない状況でHb>11.0g/dL、または治療前より50%以上の改善
進行以下の基準を少なくとも1つ以上満たす状態
1.リンパ節腫脹
 1)直径1.5cm以上の新たなリンパ節腫脹、新たな肝脾腫、臓器浸潤
 2)最大径50%以上の増加、直径1〜1.5cmのリンパ節では50%の増加、
または直径1.5cm以上、1.5cm以上のリンパ節では長径2.0cm以上になること
 3)多発しているリンパ節の径の和の50%以上の増大
2.肝臓、脾臓のサイズの50%以上の増大
3.末梢血中リンパ球数の50%以上の増大またはBリンパ球数5,000/μL以上
4.Richter症候群のような増殖が速い腫瘍への形質転換(可能な限り、リンパ節等の生検で確認する)
5.慢性リンパ性白血病と関連のある血球減少の出現
安定完全奏効や部分奏効に達せず、進行にもあたらない場合

出典:一般社団法人日本血液学会編. ”造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版”.金原出版,2018. 第I章 白血病、I 白血病、5慢性リンパ性白血病、表3より作成

慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の再発

 治療により完全奏効または部分奏効に達したあと、再び症状が出現した場合、再発とみなされます。慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の再発は、24か月~36か月以内の「早期再発」と24か月~36か月以降の「晩期再発」で、治療方針が異なります。

 治療後24か月~36か月以降に再発した場合は、初回治療と同様の治療が考慮されます。36か月以降の再発に対し、初回治療と同様のフルダラビンとシクロホスファミド併用に分子標的薬のリツキシマブを追加したFCR療法を受けた場合の5年生存率は70%で、その他の治療を受けた場合の50%より、有意に生存率が高かったという報告があります。そのため、FCR療法後の3年以降の再発に関しては、再びFCR療法を繰り返すことで良好な結果が得られると考えられています。また、化学療法単独による治療後の再発に対しては、化学療法にリツキシマブなどの抗体薬を追加した化学免疫療法が考慮されます。

 24か月以内の早期再発または染色体17p欠失、TP53遺伝子異常のいずれか1つが認められる場合は、通常の化学免疫療法に対し、治療抵抗性となります。こうしたハイリスクの患者さんや高齢者、併存疾患のある患者さんに対しては、BTK阻害薬イブルチニブが有効とされています。

 染色体17p欠失またはTP53遺伝子異常がある患者さんで、BTK阻害薬に抵抗性、もしくはBTK阻害薬が使用できない患者さんに対して、BCL2阻害薬が海外のガイドラインでは推奨されています。しかしこの薬は、国内未承認のため日本では使用することができません。フルダラビン治療後の再発や、染色体17p欠失、TP53遺伝子異常が認められ治療抵抗性となった場合は、アレムツズマブが有効とされていますが、この治療では感染症の増加が報告されています。CD20を標的とした分子標的薬オファツムマブは、リツキシマブとは異なる抗原部分を認識するため、リツキシマブ、フルダラビン、アレムツズマブに抵抗性になった場合でも有効な可能性があります。

 予後不良な染色体異常があるハイリスク患者さんでは、再発後に再び完全奏効または部分奏効に達した場合、長期予後を目的として同種造血幹細胞移植が考慮されます。自家造血幹細胞移植併用の大量化学療法は推奨されていません。

参考文献:一般社団法人日本血液学会編. ”造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版”.金原出版,2018. 第I章 白血病、I 白血病、5慢性リンパ性白血病

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