再発
慢性リンパ性白血病の経過観察、治療効果判定、再発に関してご紹介します。
慢性リンパ性白血病の経過観察と治療効果判定
慢性リンパ性白血病の多くは、ゆっくりと長い経過で進行します。そのため、無症状の場合は、経過観察が行われます。活動性の兆候がある早期進行期になった場合、治療開始基準を参考に、慎重に治療法が選択されます。
治療効果判定は、International Workshop Chronic Lymphocytic Leukemia(iwCLL)が提唱している基準に従い、腫瘍量と全身状態(グループA)および造血機能(グループB)を評価して行われます。期間が限定された治療の効果判定は、治療終了後2か月以上経った後に行われます。継続治療の効果判定は、最大治療効果が得られてから2か月以上経ってから行われます。 完全奏効、部分奏効、安定、進行の基準は、下記iwCLL基準を満たすものです。
・完全奏効:全項目を満たす。
・部分奏効:治療前に異常だったグループA項目のうち2項目、およびグループB項目のうち1項目を満たす。(例:グループA項目のリンパ節と肝脾の大きさが、治療前に比べて50%以下の縮小、およびグループB項目の血小板数が、10万μ/L以上または治療前と比べて50%以上増加した場合、部分奏効と判定) または、治療前にグループAおよびグループBともに1項目が異常だった場合は、1項目を満たす。(例:治療前にグループAのリンパ節とグループBの血小板数に異常があった場合は、どちらか1項目の条件を満たす場合に判定)
・安定:グループAまたはグループBの1項目以上を満たす。
・進行:全項目を満たす。全身症状のみ認める場合は、安定としない。
iwCLL基準
グループ | 項目 | 完全奏効 | 部分奏効 | 安定 | 進行 |
A | リンパ節 | 1.5 cm以上のリンパ節がない | 治療前と比べて50%以下に縮小※1 | 治療前または奏効時と 比べて50%以上増大 | 大きさの変化が-49%~49% |
脾臓・肝臓の大きさ※2 | 脾臓の大きさが13cm未満 肝臓の大きさが正常 | 治療前と比べて50%以下に縮小 | 治療前または奏効時と比べて50%以上増大 | 大きさの変化が-49%~49% | |
全身症状 | なし | 有無を問わず | 有無を問わず | 有無を問わず | |
末梢血 リンパ球数 | 正常 | 治療前と比べて50%以下に減少 | 治療前と比べて50%以下に増大 | 数値の変化が-49%~49% | |
B | 血小板数 | 10万/μL以上 | 10万μ/L以上または治療前と比べて50%以上増加 | CLLの影響で治療前と比べて50%以下に減少 | 数値の変化が-49%~49% |
ヘモグロビン | 11.0g/dL (輸血なし、EPO製剤の投与なし) | 11.0g/dL以上または治療前と比べて50%以上増加 | CLLの影響で治療前と比べて50%以下に減少 | 数値の変化が-49%~49% | |
骨髄 | 正形成、CLL細胞の浸潤なし Bリンパ濾胞なし | CLL細胞の浸潤またはBリンパ球濾胞あり、または未検査 | 骨髄生検でCLL細胞が50%以上増加 | 骨髄浸潤に変化なし |
慢性リンパ性白血病の再発
慢性リンパ性白血病の再発では、「染色体や遺伝子異常の有無」「年齢」「全身状態」「高齢者機能評価」「前治療の効果」「治療関連毒性」「前治療終了時から再発までの期間」を考慮した治療が行われます。
また、経過観察中に組織学的形質転換を起こすリヒター症候群では、急激に病勢進行が起こることがあります。ほとんどがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に転換しますが、一部はホジキンリンパ腫に転換することもあります。リヒター症候群となった場合は、生検で組織検査を行い、組織型に応じた治療が行われます。
同種造血幹細胞移植は、慢性リンパ性白血病に対する唯一の根治的治療で、予後不良と考えられるリヒター症候群や高リスク染色体17p欠失やP53遺伝子変異がある患者さんに対して行われることがあります。しかし、BTK阻害薬やBCL-2阻害薬などの新たな分子標的薬が標準治療となったことで、慢性リンパ性白血病に対する同種造血幹細胞移植による治療は減少傾向にあります。
参考文献:一般社団法人日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版.金原出版