検査・診断

末梢性T細胞リンパ腫の検査・診断

 末梢性T細胞リンパ腫の多くは、リンパ節の腫れやしこりが原因でみつかりますが、疑いとなった場合の主な検査は、血液検査とリンパ節生検です。リンパ節生検は、腫れているリンパ節の一部または全部を採取し、顕微鏡で組織を調べる検査です。細胞の形や細胞の表面に存在する分子を調べ、血液検査の結果や症状と併せて総合的に診断が行われます。

 リンパ腫の進行度を調べるために、骨髄検査や画像検査が行われます。骨髄検査は、腰の骨や胸骨に針を刺し、骨の中にある骨髄細胞を採取して、その中にリンパ腫細胞があるかどうかを調べる検査です。画像検査は、CTMRI、内視鏡を使って、全身にリンパ腫細胞が広がっているかどうかを調べる検査です。

 リンパ腫細胞の表面に「CD30」という分子の存在が認められれば、未分化大細胞リンパ腫と診断され、遺伝子検査で遺伝子の異常を調べることになります。遺伝子検査の結果、ALK融合遺伝子があればALK陽性未分化大細胞リンパ腫、なければALK陰性未分化大細胞リンパ腫と診断されます。

 末梢性T細胞リンパ腫のステージ分類は、非ホジキンリンパ腫と同様にLugano分類で行われます。予後予測の指標には、国際予後指標「IPI」が用いられます。

 IPIでは、年齢(60歳が境界)、全身状態、LDH、ステージ、節外病変(リンパ節以外の病変)の5つが予後因子です。それぞれ、60歳以上、全身状態2以上、LDH正常上限以上、ステージ3または4、節外病変2か所以上が予後不良因子の指標とされ、その個数により予後分類が行われます。予後不良因子が0または1なら低リスク、1は低中リスク、2は中高リスク、4または5が高リスクとなります。

 非特定型末梢性T細胞リンパ腫では、イタリアの研究グループが提案した「PIT」という指標が参考にされます。

 PITの予後因子は、年齢(60歳が境界)、全身状態、LDH、骨髄浸潤の有無の4つです。それぞれ、60歳以上、全身状態2以上、LDH正常上限以上、骨髄浸潤ありが予後不良因子の指標とされ、その因子数によって4つのグループに分類されます。

※全身状態
全身状態(Performance Status:PS)は、日常活動性の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス

PS 0全く問題なく活動できる
発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない
日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない
日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない
完全にベッドか椅子で過ごす

出典:出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999

Lugano分類(2014)

病期病変部位節外病変の状態
限局期1期1つのリンパ節病変
または隣接するリンパ節病変の集合
リンパ節病変を伴わない単独のリンパ外臓器の病変
2期横隔膜の同側にある2つ以上のリンパ節病変の集合リンパ節病変の進展による、限局性かつリンパ節病変と連続性のある節外臓器の病変を伴う1期または2期
2期
bulky
bulky病変を伴う2期該当なし
進行期3期横隔膜の両側にある複数のリンパ節病変または脾臓病変を伴う横隔膜の上側の複数のリンパ節病変該当なし
4期リンパ節病変に加えてそれとは非連続性のリンパ外臓器の病変該当なし

※bulky病変の定義は組織型によって異なるため、最長径が参考にされます
出典:一般社団法人日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版.金原出版 第II章 リンパ腫、II リンパ腫、悪性リンパ腫 総論 4病期分類より作成

IPIによる予後予測

予後因子指標
年齢>60歳
全身状態2以上
LDH正常上限以上
ステージ3または4
節外病変2か所以上
リスク予後不良因子
低リスク0または1個
低中リスク2個
中高リスク3個
高リスク4または5個

PIT予後指標

予後因子指標
年齢>60歳
全身状態2以上
LDH正常上限以上
骨髄浸潤あり
リスクグループ予後不良因子5年生存率10年生存率
グループ1062.3%54.9%
グループ2152.9%38.8%
グループ3232.9%18.0%
グループ43または418.3%12.6%

出典:日本内科学会雑誌”97巻7号. 悪性リンパ腫:診断と治療の進歩 III.病態と治療 6.末梢性T細胞リンパ腫より作成

参考文献:一般社団法人日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版.金原出版

最新のがん医療情報をお届けします。

無料で 会員登録
会員の方はこちら ログイン