悪性リンパ腫を知る
悪性リンパ腫とは
悪性リンパ腫は、造血幹細胞から分化したリンパ系細胞ががん化し、増殖する病気です。白血病は、造血幹細胞が血液細胞に分化する過程で「未熟な白血球」ががん化するのに対し、悪性リンパ腫のほとんどは、「成熟したリンパ球(Tリンパ球、Bリンパ球)」ががん化します。がん化した細胞が、リンパ節、胃、骨髄など、体の特定の部位にかたまりを作るのが特徴です。「リンパ節のみに発生するタイプ」「リンパ節以外の臓器に発生するタイプ」「その両方に発生するタイプ」の3つのタイプがあります。
国立がん研究センターのがん統計では、2015年に新たに悪性リンパ腫と診断された患者さんは3万103人(男性1万6,419人、女性1万3,684人)で、男性でやや多く、男性は70歳代、女性は80歳代が発症人数のピークでした。
※各がんのがん罹患率、生存率の最新情報は、がん情報サービス「がんの統計」をご参照ください。
悪性リンパ腫の病型
悪性リンパ腫は、さまざまな病型があります。WHO分類(2017年版)では、80種類弱の病型に分類されており、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」に大別されます。日本人の悪性リンパ腫患者さんの90~95%は非ホジキンリンパ腫で、ホジキンリンパ腫は5~10%程度と推定されています。
悪性リンパ腫の病型分類 WHO(2017)
悪性リンパ腫 | 非ホジキンリンパ腫 | 成熟B細胞腫瘍 | 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫 |
単クローン性B細胞リンパ球増加症 | |||
B細胞前リンパ球性白血病 | |||
脾辺縁帯リンパ腫 | |||
有毛細胞白血病 | |||
脾B細胞リンパ腫/白血病・分類不能型 | |||
脾びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫 | |||
有毛細胞白血病・バリアント型 | |||
リンパ形質細胞性リンパ腫 | |||
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)・IgM型 | |||
μ重鎖病 | |||
λ重鎖病 | |||
α重鎖病 | |||
形質細胞骨髄腫 | |||
骨孤在性形質細胞腫 | |||
骨外性形質細胞腫 | |||
単クローン性免疫グロブリン沈着病 | |||
粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫) | |||
節性辺縁帯リンパ腫 | |||
濾胞性リンパ腫 | |||
小児型濾胞性リンパ腫 | |||
IRF4再構成を伴う大細胞型B細胞リンパ腫 | |||
原発性皮膚濾胞中心リンパ腫 | |||
マントル細胞リンパ腫 | |||
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・非特定型 | |||
T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫 | |||
原発性中枢神経系びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 | |||
原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・下肢型 | |||
EBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・非特定型 | |||
EBV陽性粘膜皮膚潰瘍 | |||
慢性炎症関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 | |||
リンパ腫様肉芽腫症 | |||
原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫 | |||
血管内大細胞型B細胞リンパ腫 | |||
ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫 | |||
形質芽球性リンパ腫 | |||
原発性体腔液リンパ腫 | |||
HHV8陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・非特異型 | |||
バーキットリンパ腫 | |||
11q異常を伴うバーキット様リンパ腫 | |||
MYCおよびBCL2とBCL6の両方か一方の再構成伴う高悪性度B細胞リンパ腫 | |||
高悪性度B細胞リンパ腫・非特異型 | |||
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫の中間的特徴を伴うB細胞リンパ腫・分類不能型 | |||
成熟T細胞およびNK細胞腫瘍 | T細胞前リンパ球性白血病 | ||
T細胞大型顆粒リンパ球性白血病 | |||
慢性NK細胞リンパ増殖異常症 | |||
急速進行性NK細胞白血病 | |||
小児全身性EBV陽性T細胞リンパ腫 | |||
種痘様水疱症様リンパ増殖異常症 | |||
成人T細胞白血病/リンパ腫 | |||
節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型 | |||
腸症関連T細胞リンパ腫 | |||
単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫 | |||
胃腸管緩徐進行性T細胞リンパ増殖異常症 | |||
肝脾T細胞リンパ腫 | |||
皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫 | |||
菌状息肉症 | |||
セザリー症候群 | |||
原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖異常症 | |||
リンパ腫様丘疹症 | |||
原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫 | |||
原発性皮膚γδT細胞リンパ腫 | |||
原発性皮膚CD8陽性急速進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫 | |||
原発性皮膚先端型CD8陽性T細胞リンパ腫 | |||
原発性皮膚CD4陽性小型/中型T細胞リンパ増殖性症 | |||
末梢性T細胞リンパ腫・非特定型 | |||
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫 | |||
濾胞T細胞リンパ腫 | |||
濾胞ヘルパーT細胞形質を伴う節性末梢性T細胞リンパ腫 | |||
未分化大細胞リンパ腫・ALK陽性型 | |||
未分化大細胞リンパ腫・ALK陰性型 | |||
乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫 | |||
ホジキンリンパ腫 | 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫 | ||
古典的ホジキンリンパ腫 | 結節性硬化型 | ||
混合細胞型 | |||
リンパ球豊富型 | |||
リンパ球減少型 |
悪性リンパ腫の病期分類
悪性リンパ腫の病期は、病歴や所見、血液検査、画像検査、生検などによって決定されます。ホジキンリンパ腫の病期分類として開発された「Ann Arbor分類」が非ホジキンリンパ腫に対しても使われています。しかし、消化管原発の悪性リンパ腫では、主な病変がリンパ節以外にみられるため、「Ann Arbor分類」では病期の進展と一致しないことがあります。そのため、2014年に国際悪性リンパ腫会議で作成された「Lugano分類(2014)」が使用されています。
Ann Arbor分類
ステージ1 | 単独リンパ節領域の病変 またはリンパ節病変を欠く単独リンパ外臓器または部位の限局性病変 |
---|---|
ステージ2 | 横隔膜の同側にある2つ以上のリンパ節領域の病変 または所属リンパ節病変と関連している単独リンパ外臓器または部位の限局性病変で、横隔膜の同側にあるその他のリンパ節領域の病変によらない |
ステージ3 | 横隔膜の両側にあるリンパ節領域の病変 それはさらに隣接するリンパ節病変と関連しているリンパ外進展を伴う、または脾臓病変を伴う、あるいはその両者を伴う |
ステージ4 | 1つ以上のリンパ外臓器のびまん性または播種性病変で、関連するリンパ節病変の有無を問わない または隣接する所属リンパ節病変を欠く孤立したリンパ外臓器病変であるが、離れた部位の病変を併せ持つ |
Lugano分類(2014)(リンパ節を原発とする悪性リンパ腫のための改訂病期分類)
病期 | 病変部位 | 節外病変の状態 | |
---|---|---|---|
限局期 | ステージ1 | 1つのリンパ節病変 または隣接するリンパ節病変の集合 | リンパ節病変を伴わない単独のリンパ外臓器の病変 |
ステージ2 | 横隔膜の同側にある2つ以上のリンパ節病変の集合 | リンパ節病変の進展による、限局性かつリンパ節病変と連続性のある節外臓器の病変を伴う1期または2期 | |
ステージ2 bulky | bulky※病変を伴う2期 | 該当なし | |
進行期 | ステージ3 | 横隔膜の両側にある複数のリンパ節病変または脾臓病変を伴う横隔膜の上側の複数のリンパ節病変 | 該当なし |
ステージ4 | リンパ節病変に加えてそれとは非連続性のリンパ外臓器の病変 | 該当なし |
消化管原発悪性リンパ腫のLugano病期分類(1994)
ステージ1 | 消化管に限局した腫瘍 単発または多発(非連続性) |
---|---|
ステージ2 | 消化管の原発部位から腫瘍が腹腔へ進展 リンパ節浸潤 21:限局性(胃のリンパ腫の場合は胃周囲、腸管の場合は腸管周囲) 22:遠隔性(腸管原発の場合は腸間膜、その他では傍大静脈、骨盤、鼠径) |
ステージ2E | 近接の臓器または組織へ進展する漿膜の浸潤 リンパ節浸潤と近接臓器へ浸潤する進展の両方 |
ステージ4 | リンパ外への播種性浸潤または消化管病変に横隔膜を越えたリンパ節病変を伴う |
参考文献:一般社団法人日本血液学会編. ”造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版”.金原出版、2018.
国立がん研究センターがん情報サービス がん登録・統計