ステージ4の大腸がん治療、手術、化学、放射線療法の選択 原発巣、転移巣で手術できる場合とできない場合の見極め
2017.11 取材・文:村上和巳
大腸がんのステージ4とはどんな状態なのか。遠隔転移巣の切除ができるかどうか、原発巣の切除ができるかどうかをどのように見極め、その結果の治療選択はどのようなものなのか。手術と化学療法、放射線療法の組み合わせに関して解説します。
大腸がんのステージ4の状態と治療選択
通常、がんの進行度を表すステージは、「原発巣」と呼ばれるがんが最初に発生したがんの大きさ、リンパ腺を通じてがんが転移したリンパ節の場所や個数、他の臓器への転移の有無で決定されます。
大腸がんでは、がんの原発巣からかなり離れたリンパ節、血液の流れにのって肝臓や肺、骨などに遠隔転移した「転移巣」がある場合と、腹膜にがん細胞の種がまかれたように転移する腹膜播種がある場合にステージ4と判定されます。大腸がんの場合、血流がまず集まる肝臓に転移しやすくなります。次いで肺に転移することが多くあり、さらに進行すると骨や脳など全身の臓器に転移を起こしていきます。
そのため、ステージ4の大腸がんの治療方針では、原発巣と転移巣それぞれの状態を検討した上で、全身に対してどのように治療をするべきかを検討します。
一般的には原発巣も転移巣も全て切除できる場合は、治癒をめざすことが基本原則です。大腸にある原発巣がそれほど広がっておらず、肝臓や肺への転移も1~2個、肺転移では片方の肺のみなどという場合などは、完全切除が可能な症例です。しかし、原発巣、転移巣の全てを手術で切除するかの判断基準は、医療機関によってもやや異なる可能性があります。
また、原発巣、転移巣ともに手術で切除できると思われても、転移巣周辺では画像診断では見えにくい極めて微小な転移が既に散在している可能性が否定できません。そのため、手術前や後に化学療法を行なうことが多くあります。術前か術後の選択に関しては、日本だけでなく欧米の大腸がんに関する治療ガイドラインでも、確固として決められた順序はまだ一元化されていませんが、ステージ4の大腸がんで手術を行う場合は、手術のみで終わらず、その前後に化学療法や放射線療法など異なる治療を組み合わせることが非常に重要と記載されています。
原発巣と転移巣の状態を見極めた治療選択
原発巣、転移巣ともに切除できる患者さんの場合、手術が検討されます。しかし、手術を決定した段階で、画像診断では見えない小さな転移が既にどこかにあることが多く、ステージ4で手術できたとしてもおおむね7~8割は再発します。そのため、手術にあわせて化学療法も行われます。
現時点ではステージ4の大腸がんで手術後の再発予防を目的に化学療法を行うことが、生存期間の延長につながるという明確なエビデンスはありません。再発予防として化学療法を行った場合と行わなかった場合を比較して、生存期間に明確な差があったかどうかという十分な研究の結果が揃っていませんが、初期に行われた小規模の比較試験では肝転移の切除後の化学療法で再発率が減る可能性がありそうだという研究報告はあります。
プロフィール
設樂紘平(したらこうへい)
2002年 ⻲⽥総合病院
2005年 三沢市⽴三沢病院
2008年 愛知県がんセンター中央病院
2012年 国⽴がん研究センター東病院