基礎知識
骨髄異形症候群の罹患率、症状、原因など基礎知識をご紹介します。
骨髄異形症候群とは
骨髄異形症候群は、血液細胞の元となる造血幹細胞のうち、骨髄系細胞(赤血球、血小板、白血球のもとになる細胞)に異常が起こる病気です。赤血球、血小板、白血球の3つそれぞれが成熟する過程で同時に異常が発生する場合や、3つのうちまず1つが成熟する過程で異常が起こり、残りの2つの血液細胞の成熟過程にも異常が進行していく場合などがあります。似たような病気の集まりであるため、「症候群」と呼ばれています。
造血幹細胞に異常をきたした「異形成」がみられることや、正常な機能をもった血液細胞になる途中で壊れてしまう「無効造血」が生じること、また、急性骨髄性白血病の発症リスクがあるのが特徴です。
骨髄異形症候群の罹患率
国立がん研究センターのがん登録によると2015年に新たに白血病と診断された人は、男性が7,144人で女性が5,227人、合計1万2,371人で、人口10万人あたり約400人でした。このうち、新たに骨髄異形症候群と診断される患者さんは、男性で10万人あたり、3.8人、女性で2.4人でした。罹患率は年齢とともに上昇し、70歳以上で急激に上昇していました。
骨髄異形症候群の症状
異常をきたした造血幹細胞は、未熟なままで分化が止まったり、見かけ上は成熟したようにみえても機能しない血液細胞になったりします。そのため、血液中の正常な血液細胞が減少し、さまざまな症状が起こります。
赤血球が減少すると、倦怠感、動悸、息切れ、顔色が悪くなるなどの症状が現れます。血小板が減少すると、皮膚や粘膜に小さく赤い斑点が現れる、鼻血が出るなどの出血症状が起こります。白血球の1つである好中球が減少すると、感染症にかかりやすくなったり、熱が出たりすることがあります。
また、約30%の患者さんでは経過中に芽球(がきゅう:幼若な形態の血液細胞)が増加し、急性骨髄性白血病と区別ができないような検査結果になることがあります。これは骨髄異形症候群の白血病化といわれますが、病状の経過は、急性骨髄性白血病と同じではありません。
骨髄異形症候群の原因
ほとんどの骨髄異形症候群は原因不明ですが、約半数の患者さんでは染色体異常が認められ、未分化な造血幹細胞に起こった遺伝子異常が、発症に関わっていると考えられています。この染色体異常は、先天的なものではなく、また遺伝や感染するものでもありません。また、過去に受けた、細胞傷害性抗がん剤による治療や放射線治療が原因で数年後に起こる、「治療関連骨髄異形症候群」もあります。
参考文献:一般社団法人日本血液学会編. ”造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版”.金原出版,2018.