【コラム】人工肛門(ストーマ)のある生活

本記事は、株式会社法研が2012年6月26日に発行した「名医が語る最新・最良の治療 大腸がん」より許諾を得て転載しています。
大腸がんの治療に関する最新情報は、「大腸がんを知る」をご参照ください。

 人工肛門とはストーマ(ギリシャ語で「口」を意味する)の一種で、肛門の代わりに排便の機能を補うものをいいます。
 直腸がん手術では、永久人工肛門以外に一時的人工肛門を造設する場合があり、ストーマのケアや生活の仕方など、あらかじめよく説明を受けることが大切です。

自分に合ったタイプの面板や袋を選ぶことが大事

ストーマパウチ

 人工肛門は孔の周囲に貼りつけて固定する「面板(フランジ)」と、便を受け止める「ストーマ袋(パウチ)」からできています。面板と袋が一体になったワンピース型と、別々に分かれたツーピース型があり、自分に合ったものを選べます。
 人工肛門になると自分の意思で便を排泄することができないため、袋に便をためて定期的に替えることになります。便はトイレに流し、袋は洗って紙に包み、ゴミ袋などに入れて廃棄します。袋は使い捨てで、最近のものは数日間使えます。今は防臭効果や防水効果などに優れた装具が出ているので、臭いがもれたり、便で洋服などを汚したりする心配はありません。
 便のため方や捨て方、装具の使い方、手入れの仕方、交換の仕方などのストーマケアについては、手術を受けた病院に「ストーマ外来」があれば、そこで指導を受けられます。今は「皮膚・排泄ケア認定看護師」や「ストーマ療法士」など、ストーマケアに詳しい専門家もいるので、患者さんの背景や生活などに合わせたアドバイスをもらえます。
 排出・洗浄法には自然の排便に任せる「自然排便法」と、ストーマからぬるま湯を1Lほど入れて、その刺激で強制的に出させる「洗腸(灌注(かんちゅう))排便法」があります。洗腸排便法は排便を調整できるので便利ですが、排便を終えるのに1時間ほど時間がかかるうえ、特殊な専用器具(洗腸液袋やチューブ、スタンド)が必要になります。やり方を誤ると、腸に穴があく穿孔(せんこう)をおこす危険性があるため、医師の許可と専門的な指導が必要になります。

旅行もスポーツもでき今までどおりの生活が可能

オストメイト対応トイレのマーク

 人工肛門をつけているため排便法は変わりますが、日常生活は今までどおり送ることができます。ストーマケアに慣れてしまえば、入浴もスポーツも旅行も、職場への復帰も可能です。ストーマをお湯につけても大丈夫なのかという不安もありますが、体の中のほうがお湯よりも圧力が高いので、水が入ってくるようなことはありません。入浴中に便が出るのが心配な人は、専用のキャップやパウチをつけて入浴をすることもできます。
 こうした日常の過ごし方については、ストーマを使っている人(オストメイト)の集まりである「日本オストミー協会」やオストメイトの会などで経験者の意見などを参考にするといいかもしれません。外出先のトイレも、オストメイト対応トイレの設置が進んできています。インターネットからでも情報が得られます。
 身体障害者福祉法により、永久人工肛門の人は、身体障害者手帳(1級、または3、4級)を申請することができます。身体障害者手帳が交付されると、ストーマ装具や洗腸用具などの給付を受けることができます。障害年金を受給できる場合もあるので、詳しくは医療ソーシャルワーカーがいる相談支援センターや、居住地の市区町村役所に聞いてみるといいでしょう。

オストメイトのサポート情報

 人工肛門(ストーマ)を造設した患者さん(オストメイト)やその家族の方が、ストーマと上手につきあっていくための情報を得られるさまざまな場があります。詳しくは、ストーマ外来のある医療機関や公益社団法人日本オストミー協会のホームページ、全国のがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターをご利用ください。
・知識や生活ニーズの情報なら 公益社団法人日本オストミー協会 ・若い女性のための患者会なら ブーケ(若い女性オストメイトの会) ・地域ごとのストーマ外来施設リストなら 一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会 *相談支援センターのあるがん診療連携拠点病院は、住まいのある市区町村に問い合わせればわかります。

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